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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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町の水路

「まず、飲み水からです」


ナナが設計図を広げながら言った。


「飲み水?」


「はい」


「道路じゃないのか?」


俺はてっきり、町の中心から道路を作っていくものだと思っていた。

するとナナは首を横に振る。


「道路は後からでも作れます。しかし、水は毎日必要です」


「……確かに」


言われてみれば、その通りだ。

道が少し遅れても生活はできる。

だが、水がなければ生活そのものが成り立たない。


『ナナ様の判断は合理的です』


「アイまで納得か」


『はい』


ナナは地面に簡単な図を描いた。


「まず水源。ここから水を引きます。そして水路。その先に、濾水槽を設けます」


「濾水槽?」


「水に混ざっている土や砂などを沈殿させたり、濾したりする場所です」


「なるほど」


ナナはさらに先へ線を伸ばす。


「その後、貯水場所。ここに一度水を貯めます。そこから住宅地へ。必要な場所へ水を分配します」


「そして使った水は?」


俺が聞く。

ナナは反対側へ線を伸ばした。


「排水です。住宅から出た水を集めて、下水へそして下水処理場へ流します」


俺は設計図を見る。


水源。水路。濾水槽。貯水場所。住宅。排水。

下水処理。


「……ちゃんと一本に繋がってるな」


『水の供給と排水を分けて考えている点も重要です』


「なるほど」


今までは、


「水が欲しい」


だから水路を作る。


「汚水が出た」


だから下水を作る。そんな感じだった。

でも今は違う。

町全体で水の流れを考えている。


「これが町の水道ってことか」


「そうですね」


ナナが頷く。


「町の規模が大きくなれば、水を運ぶだけでも大変になります」


「だから最初から仕組みにする」


「はい」


「なるほどな」



「では、まず水源を確認しましょう」


ナナと村人たちが水源へ向かう。

俺とミィナも後をついていく。


「ここから引くのか?」


「はい」


「でも、この水路……」


俺は見覚えのある水路を見た。


「これ、昔作ったやつじゃないか?」


近くにいた村人も気付く。


「ああ!確かにそうだ」


「昔、誠殿が作った水路だ」


「今でも使ってるぞ」


ナナが水路を確認する。


「……」


「どうだ?」


俺が聞く。


「十分使えます」


「本当か?」


「はい」


ナナは水路の先を見る。


「少し補修は必要ですが、作り直す必要はありません」


「なら、そのまま使える?」


「一部を残して、新しい水路と接続しましょう」


「おお……」


村人たちが顔を見合わせる。


「昔作った水路が、町でも使えるのか」


「捨てなくていいんだな」


「もちろんです」


ナナは笑う。


「町を作るからといって、すべてを壊す必要はありません。使えるものは、そのまま使えばいい。新しい設備と繋げればいいんです」


俺は少し嬉しくなった。


「そうだよな」


今まで作ってきたものは、村が小さかったから作ったものだと思っていた。


でも違う。


「昔の水路も、昔の道も、昔の建物も」


使えるものは、これからも使える。


「今まで作ってきたものを残しながら、町に変えていく」


『非常に合理的です』


「だよな」



「ここから新しい水路を伸ばします」


ナナが指差す。


「この辺りに濾水槽。そして、この位置に貯水場所。そこから住宅地へ分岐させます」


村人たちが杭を打つ。

縄を張る。

以前作ったU字溝も運び込まれる。


「これを使うのか?」


「はい」


「大量に作っておいて良かったな」


『はい』


「ここはU字溝。ここは蓋をして住宅地に入ったら、必要な場所へ分ける」


ナナが次々と指示を出していく。


「下水は反対側へ。水が混ざらないように。ここは少し高く、こちらへ流れるようにします」


「なるほど」


建築の専門家も加わる。


「この部分はセメントで固定しましょう」


「分かりました」


村人たちも動き始める。

レンガを運ぶ。U字溝を並べる。

セメントを用意する。

以前なら、それぞれ別々に作っていた。


今は違う。


全部が一つの町のために繋がっている。


「……」


俺はその様子を眺める。


「町って、こうやって出来ていくんだな」


『はい』


「新しい物を作るだけじゃない」


『既存の物を活かすことも重要です』


「今まで作ったものが無駄にならなくて良かったよ」



夕方。


最初の水路の一部が、新しい町の水路へと繋がった。


「これで、昔の水路と新しい水路が繋がりました」


ナナが言う。


「おお……」


村人たちから声が上がる。

水が、新しく作られた水路へ流れていく。

その先には、これから作られる町がある。


「昔は、この水路を作るだけでも大変だったな」


俺が呟く。


「ああ」


ミィナも頷く。


「でも、あの時作ったものが今も使えるんだな」


「そうだな」


俺は流れていく水を見る。


「村を壊して町を作るんじゃない。村をそのまま育てていく」


『はい』


それが今の、この村に一番合った町づくりなのかもしれない。


最初に作った水路も。最初に作った道も。

最初に建てた家も。これまで積み重ねてきたものは、全部この町の土台になる。


そして――その土台の上に、新しい町が少しずつ形を現し始めていた。

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