表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/46

28 討伐隊


 そして、出発の朝。

 俺はゾウの群れに囲まれていた。

 ゾウどもは一見人間の姿をしている。

 しかし、どいつもこいつも人間と呼ぶにはあまりにも強大なパワーを秘めている。

 それがひしひしと伝わってくる。

 中にはゾウを遥かに超えた超大なる力の持ち主もいて、俺にはドラゴンに見えているわけだが、まあ、アレだ。

 要するに、討伐隊の面々が一堂に会しているわけね。


 場所は翡翠宮・中庭。

 秘密保持の観点からも大々的な出陣式とかエイエイオーとかできないが、こうしてそうそうたるメンバーが集まるとビッグプロジェクトが稼働中なのを実感できる。

 ついでに、俺がそのそうそうたるメンバーの中で一番小物だってこともな。


「ハーイ! あんたが……じゃない。こほん。ユーが噂のトレジャーマウンテン?」


 トルネライト団長の短くもありがたい挨拶が終わると、見慣れない顔の女冒険者が声をかけてきた。

 平たい顔だ。

 どこかギンジェロウと同じ匂いがする。

 獣臭いとかではなく、異国の文化に染まって背伸びしている感じの痛い匂いだ。


「あたし……じゃなくて、ミーはガンヴァーナだYO! ファスガーのティーパーでジャーレンYOってるヤー!」

「なるほど、ガーファスのパーティーでレンジャーやってるYOなヴァーナガンさんか」


「そこはフツーにガンヴァーナだYO……」


 ガンヴァーナといえば、トップパーティーには珍しい二つ名を持たない冒険者だ。

 サムライの国の出で、元々は「クノイチ」なるスパイをやっていたと聞き及んでいる。

 そのほかの情報は一切なし。

 謎多き人物だが、トップ冒険者の一人には違いない。


「第6パーティーのリーダーをやらせてもらっているトラッシュハルト・オルデュールだ。よろしく」


「ユー、ゴイスーだね! キャプテン・トルネに直接スカウトされたってリッスンYO! それもいきなりダーリーティーパーだってね。ミーもユーには期待してるYO! 乳首ツーン!」


 両乳首をツーンとされた。

 スパイと呼ぶにはあっけらかんとした人物だ。


「へえ、お前が話ッ題の超新星かあ」


 巨大な盾を亀の甲羅みたいに背負った戦士が、珍しい小動物でも見るみたいに俺を覗き込んだ。


「オレはデッガードナーってんだあ。よろッしくな!」


 ほう。

 筆頭パーティーのタンク役、『鉄亀』デッガードナーか。

 ギルド本部でたまに見かけることはあったが、顔を合わせるのは初めてだ。

 盾持ち全員の憧れと称えられる人物だけあって、堂々たるたたずまい。

 思わずヘコヘコしてしまうところだった。


「よろしく。俺は――」


「トマドぉ食べヴ?」


「おおお……!?」


 大柄なデッガードナーの背後から、さらにデカイ奴が現れた。

 マジでゾウ級。

 山みたいにデカイ。

 巨大な手になぜかトマトを握っていて、グチャン、グチャンと咀嚼音を立てる大口も赤々している。


「トマドぉ。なあ、おめえトマド食べヴか?」


「い、いや……」


「馬ッ鹿。受け取っとけえ。お前がトマトにされっぞ」


「じゃ、じゃあ……」


 デッガードナーが冷や汗垂らしながら言うので受け取って置く。

 リンゴみたいに大きな、それはもう立派なトマトだった。


「『巨腕』のギガンポスさんか。よろしく……」


 王都にいる何万という冒険者の中でも超がつくほどの有名人だ。

 名乗られるまでもなく知っている。

 目立つしな。

 ガーファス率いる次席セカンドパーティーで前衛を務める、巨人族の拳闘士ファイター

 肩に鳥が留まっているから、たぶん優しい奴なのだろう。


「あらためて、個性派揃いだな。このギルド……」


「ガッハッハ! そうッだろうなあ! 塔のてっぺん目指してる連ッ中にまともな奴ぁいねえのさあ!」


 デッガードナーは豪放にして磊落に笑った。


「でもよぉ、みんな腕ッ利き揃いだぜえ? そんで、お前もその一員だ。まあ、頑張ろうやあ」


 そうか。

 そうだな。

 了解。

 スター冒険者と比べて縮こまったって意味はない。

 俺は俺なりの全霊を尽くす。

 大事なのは、それだけだ。


 俺は肩の力を抜いて白の塔を見上げた。

 隣で同じように上を向いている奴がいる。

 シエだ。

 こっちはずいぶんと肩に力が入っている。


「トルネ姉さんはあの人が来ると、いつも辛そうにしているんです」


 ベギアード中爵のことか。


「わたし、トルネ姉さんには笑っていてほしいんです」


 かつて、白の塔に一人で挑んだシエ。

 実績が欲しいとか言っていたが、それもひとえに姉のためだったのだろう。

 トップランカーの姉と肩を並べるために。

 その望みは叶った。

 シエは討伐隊の一員として階層主に挑む。

 そして、絶対失敗する。

 大きなヘマをやらかす。

 髪の毛をぶわっと逆立てて真っ赤な顔で塔を見上げる姿を見れば、一目瞭然だ。


「シエ」


 俺は猛る小さな肩にそっと手を置いた。


「誰かに笑ってほしいなら、まずは自分からじゃないか?」


 気負いすぎはよくないぞ、と瞳で伝える。


「トラッシュハルトさん……」


 肩からすっと力が抜けていった。

 目だけは強い力を秘めたまま、シエは大きな笑みを浮かべた。


「はいっ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ