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第十三章 ティファニー・エターナルサークル・ラトル(6)

 それは、突然にやってきた。

 予定日にはまだだいぶ間がある七月七日の明け方近く、隣で寝ていたミワが俺をゆさぶって起こした。

「イチイ、病院に連れていって」

「どうした?」

「破水したみたい」

「本当か?」

 俺は寝ぼけた頭で、まずバイクのことを考え、次にバイクにミワは乗せられないことに気づき、さらにそもそももう俺はバイクなんて持っていないことを思い出したあと、ようやくタクシーを呼ぶという答えにたどり着いた。

「大学病院まで」

 ミワが大きなお腹を抱えているのを見ると、運転手は緊張した顔で「分かりました」とすぐに車を発進させた。

 病院に連れていくと、ミワは即入院になった。

「じゃあ、ダンナさんは入院に必要なものを用意して持ってきてくださいねー」

 俺は心配になった。

「入院なんて大丈夫なんでしょうか」

 すると看護師は一瞬キョトンとした顔になった。

「これから出産ですからねぇ。だから入院なんです」

「えっ、もう産まれるんですか?」

「まだ三十六週目だけど、出る感じですからねぇ。でも大丈夫、なんとかなりますって。心配しないでー」

 看護師のものすごくあいまいな言い方と妙にのんびりした表情に不安を感じたが、俺は黙ってうなずいた。


It came suddenly.

Near dawn on July seventh, still quite a while before the due date, Miwa, sleeping beside me, shook me awake.

“Ichii, take me to the hospital.”

“What’s wrong?”

“I think my water broke.”

“Are you sure?”

With a sleep-fogged head, I first thought about the bike, then realized I couldn’t take Miwa on a bike, then remembered I didn’t even have one anymore, and only then arrived at the answer of calling a taxi.

“To the university hospital.”

When the driver saw Miwa holding her large belly, he said, “Got it,” with a tense expression and immediately started the car.

When I took her to the hospital, Miwa was admitted right away.

“Then, sir, please prepare what’s needed for her admission and bring it in, okay?”

I felt uneasy.

“Is it really all right for her to be admitted?”

The nurse looked puzzled for a moment.

“She’s going to give birth now, you see. That’s why she’s being admitted.”

“What? She’s giving birth already?”

“It’s only thirty-six weeks, but it feels like it’s coming. It’ll be fine. It’ll work out. Don’t worry.”

Her extremely vague way of speaking and that strangely relaxed expression made me uneasy, but I nodded silently.

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