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第十四章 ザ・ローズ(15)

「サキが同窓会に来たのって、初めてだよね」

 ヨシノがヒレ酒をクイと飲み干したあと、言った。

「やっと〈お倉〉の中から出てくる気になったのかな?」そうしてニッと笑った。

「おいおい、ヨシノ。学芸員を〈倉番〉なんて呼ぶのは前時代的だぞ」

 カイがヨシノの杯を満たしてやりながら言う。ヨシノは真っ赤なくちびるの奥からペロリと舌を出した。

「ごめん、ごめん。冗談よ。――サキ。勤務はどう? 今、結構大変なんでしょ」

「まあね。でもなんとかやっているよ」

 カイの知り合いだという都内のフグ料理屋に、私たちはいた。毎年十二月初めに開かれている大学の同窓会である。とはいっても授業やサークルで知り合った仲のいい者同士で集まる自主的なもので、人数は二十人程度。大学の正式な同窓会は、これは学科単位に毎年交代で開かれている。

「おーい、カイ、こっちに来てくれよ!」

 向こうの席から呼ばれ、カイは、ちょっと失礼、と言って立ち上がった。ヨシノは私に笑った。

「相変わらず忙しそうね、カイは。もうこれ、〈カイ同窓会〉って名前にしたほうがいいんじゃない?」

 それで私も笑った。確かにここに出席しているのはみんなカイの友達で、カイを通して知り合った者が集まっているという感じなので、自然、カイが中心人物になってしまうのだった。


 カイには本当に感謝している。いつもいつも欠席の返事をしているにもかかわらず、カイは私に開催の通知を送り続けてくれた。そうして卒業後七年目にして、私はついに出席のほうに丸をつけて返事を出したのだった。すぐにカイから電話がきた。

『これ、丸をつけ間違ったんじゃないよな?』

 私は笑って答えた。

『大丈夫。間違いじゃないわ』

 カイもホッとしたように笑った。

『そうか。じゃあ待っているよ』

 どうして急に私が出席する気になったのか不思議に思ったかも知れないが、訊かれなかった。カイは余計なことはけして言わないのだ。


“First time you’ve come to the reunion, right, Saki?”

After downing her hirezake in a single sip, Yoshino said.

“Did you finally decide to come out of the storehouse?”

She grinned.

“Hey, hey, Yoshino. Calling curators ‘storehouse keepers’ is kind of outdated.”

Kai said, refilling Yoshino’s sake cup. Yoshino stuck out her tongue lightly between her bright red lips.

“Sorry, sorry. Just kidding.—Saki, how’s work? Things are pretty tough now, right?”

“Yeah. But I’m managing somehow.”

We were at a fugu restaurant in the capital run by someone Kai knew. It was the university reunion held at the beginning of December every year. Though, it was a voluntary gathering of about twenty people who had met through classes or clubs and were close. The official university reunion is held separately, with departments taking turns each year.

“Hey, Kai, come over here!”

Called from another table, Kai said, “Excuse me,” and stood up. Yoshino smiled at me.

“Kai looks as busy as ever. Maybe we should call this the ‘Kai Reunion.’”

I laughed too. It was true—everyone here was Kai’s friend, people who had met through him, so naturally he ended up being the central figure.


I really am grateful to Kai. Even though I replied “absent” every single time, he kept sending me notices about the reunion. And then, in the seventh year after graduation, I finally circled “attending” and sent it back. Kai called me right away.

“You didn’t circle the wrong box, did you?”

I laughed and replied.

“It’s fine. It’s not a mistake.”

Kai laughed too, as if relieved.

“I see. Then I’ll be waiting.”

He may have wondered why I had suddenly decided to come, but he didn’t ask. Kai never says unnecessary things.


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