親愛の籠る瞳は深淵を覗き、また深淵も。
穴が空いた僕のお腹に、白い、綺麗な手が乗せられ、スリスリと僕の空いたお腹の周りを撫でながら”治癒”を施してくれる。
細胞からポコポコと治っていく僕のお腹、そこに痛みはなく、なんならピリピリとするような気持ちよさがあるくらいだ。
無表情の良面のキミの眉が少し落ちている、やりすぎた、とでも思ってくれてるのかな?
その事に僕の心の底から言葉に出来ない高揚感を感じ、頬が紅く染まるのが分かる。
内臓が完全に揃い、肉が埋まり皮の再生が終わった。
数秒の静寂がこの場を支配する。
キミは何が心配なのか、再生が終わった僕のお腹を優しく撫で、僕はそれに対し身を任せる事しかしなかった。
何故なら、感じるキミの手があまりにも心地が良かったから、優しさしか感じない、甘ったるいその手が、僕には毒となる。
数秒撫で続けていてくれたキミの手が止まり、キミはパッと距離を取った。
僕は思わず名残惜しげの声を上げてしまった。
────今はとても、後悔している。
「んぁ…♡」
僕は、あの時の死んだような空気を、一生忘れないだろう。
無表情でスススと三歩距離を更に取るキミ、ドン引きしたような師匠の表情。
そして、言い訳にならない言い訳をツラツラと述べ、疑惑を確信に近付けるような発言をしてしまった僕。
──あの時からか、弟弟子たるキミの視線が不審者を見る視線からどうしようもない変態を見るような視線に変わったのは。
───あの時からだ、師匠が僕に修行を付け直してやる、なんて言われ、僕が修行漬けにされたのは。 許さぬ。
結局、あの一度の手合わせって事にした模擬戦でしかまともな顔合わせが出来なかった。
だからあの時の敗北の原因となった魔法は未だにわかっていない。
そしてキミからの僕の呼び名は──
「──ドM。」
「ッ♡!? んてっドエム!? どっからそんな言葉引っ張り出してきたのかな!?」
「お師匠。」
「あぁんのクソ師匠!!」
姉弟子かドMになった。 許さねぇあのクソ師匠。
まぁ、あのなんとも思ってない声色の罵倒を気持ちいいからヨシとしてしまったのも、悪かったのかもしれない……。
「────ハッ!? 夢ッ!? 」
実験体301から出られて弟弟子に唇奪って貰えた幸せな夢を過去の追試体験付きで見た!!!! クッッソッどうせならおせっせまで行きたかったッ!!!!!
「その巫山戯た事抜かす唇再度塞いでいいかな? 姉弟子?」
「ま、待ったッ!」
「?」
綺麗な面で小首を傾げる弟弟子、クッッソ面がイイなァ!?
「ぼ、僕はキミから嫌われてると思っていたのだが!?」
「……? なぜ?」
「だ、だってホラ、僕、死体を弄ぶし!」
「? 幾ら死刑囚の死体弄ろうがどうでもいいよ、機能性重視の実験だし。」
「ドMだよ!?」
「それは幼少の時の苦手な人の特徴なだけで、今は普通に一種の感性だと理解してるし、特段含むものはないよ。 そも俺はその人が好きになるのはその人と過ごせる、楽しい、幸せを感じるかどうかだから。」
すすすすすすすすす、すすすすすすっ
「っ好きって言ったァ!? 」
「わぁーい、姉弟子恋愛ポンコツ系なんだー、似合わねぇー」
「し、仕方ないだろォ!? い、いやァ? まだだ!」
「なんでどんなに倒されても立ち上がる系の主人公?」
「実はヤリたいだけだろォ!? 僕、性格以外は完璧だからな! 望む所だ! てかバッチコイ! ヤリ捨てでも良い!!」
「なんて悲観的な主人公……、さては大分錯乱してるな??」
「し、してないぞ????」
「お目目グルグルしとる……、ふっはっ、おもろ。
───ま、今は何言っても飲み込めないだろうから、単純に簡潔に言うよ。
この四ヶ月、一緒に居て、ポンコツな所、可愛げ満載な所、その仕草、意外と面倒見のいい所見て、逃がしたくなくなっちゃった。 俺がやたらめったらに手を出す節操無しなのに独占欲だけは強いみたいだ、ゴメンね」
とても綺麗な笑みでキミは僕に告げる。
___好きだよ、ドM。
────もう少し、何とかならなかったかなぁ!?




