⑨ 旅行の約束と「俺、ネコだから」
第一章「水鉄砲喫茶編」の最終話です。
学園祭の当日。
鉄研は我が校名物の「水鉄砲喫茶」を開いている。
コーヒー100円なら1回、
ケーキセット300円なら3回、
黒板前に3人立っている部員を水鉄砲で撃てるという喫茶だ。
水鉄砲を撃ち終わった客は席について、鉄道パネルや資料を見ながら注文した品を食べる。
他の客が水鉄砲を撃つ様子を見るのも面白いようで、2日間ずっと大賑わいだ。
もちろん、メイセイはほとんどずっと「的要員」として駆り出されていて、
白いシャツが乾く暇もない。
間仕切りで仕切られた控えスペースに退散したメイセイの髪を、
スバルがドライヤーで乾かしてやる。
「さすがにもう無理……」
「これで夏合宿資金も余裕になるじゃん!」
「でも……スバ……部長、もういないじゃん。」
「まあそうだけど……でもさ。」
スバルはドライヤーをメイセイの身体にも当ててやりながら、耳元でボソボソと呟く。
「夏さ、T木でSLと新幹線並走イベントあるじゃん。
あれ……と、泊まりでどうかなって……」
メイセイが勢いよく立ち上がる。
「部長、泊まりの意味、分かってる?」
「わ、分かってるから……誘ってるんだろ……」
「そんなん絶対……」
しかし、言い終わる前に部員が覗く。
「宵野!そろそろ出て!」
部員の顔が消えた瞬間に、スバルが言う。
「急げ!3,2,1……」
二人の唇がほんの一秒、熱っぽく重なる。
唇が離れると、
「俺、ネコだから。」
とメイセイが急いで囁いて、控えスペースから出て行った。
「ネコ……」
白いワイシャツが水鉄砲で濡らされて張り付いていく。
未来はいまいちよく分からない世界だ。
でも、お互いがそばにいれば……
その未来はきっと色づきながら、
線路を先へ先へと続いていくのだと
スバルは心の走行音に、自分たち二人を重ねていた。
次回から第二章「一泊旅行編」です。




