⑩ メイセイとの旅行でSLの中
【第2章】
一泊旅行 編 開始です。
夏休み――
僕、高校三年生の天牛スバルと、後輩の宵野メイセイの二人は今、SLの座席に並んで座っている。
SLが出発してしばらくすると、新幹線が隣を並走する――
このイベントのために、二人きりで宿泊旅行に来たのだ。
「スバルくん。」
「どうした?」
「楽しみ過ぎて吐きそう。」
「え、メイセイも?僕も……」
僕は少しホッとしてメイセイを見る。
「最初から、一瞬漏らさず見届けたいとか考えない?」
「わかる。これを逃すと死ぬまで見られないかもしれないし。」
僕たちはまだ出発してもないのに窓の外に目を凝らす。
「スバルくん、写真か肉眼かどっち?」
「往路肉眼、復路写真。」
「じゃ、俺は往路写真、復路肉眼。」
「うまく撮れなかったら、ごめん。」
「それはそれで、楽しそう。」
そうメイセイが笑った瞬間、
ポ――――ッ!!!
僕たちは同時に椅子から飛び上がった。
SLがいよいよ動き出す。
僕たちは太ももをつつき合って、背筋を伸ばした。
***
「そろそろ、ホテルに向かう?」
僕が、駅に飾られたSLの展示写真を見ていたメイセイに声をかけた瞬間、
メイセイは唾を飲み込んで固まった。
が、すぐに明るい声で言う。
「うん、暗くなる前にT木駅に着いた方がいいよね。
あ、スバルくん、メシなににする?
この辺りってさ、実はラーメン美味いらしい……」
「コンビニで買って、部屋で食べようよ。」
普通を装う僕の心臓は、
小太鼓のようにトントントントン鳴っている。
(メイセイも緊張してるのかな。)
「……そうしよっか。」
そう答えたメイセイは、スマホを取り出し、
落ち着かない指先で駅の時刻表を探していた。




