↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/13

⑦ 「スバルくんと俺は恋人じゃありません。」

全13話。連休中にどんどん更新して、連休明けに完結予定です。


夕暮れの帰り道、スバルの耳の中では、まだトゥルリラインバータの走行音が鳴っていた。


【恋人にはなりません。】――と言わなくては……


「トゥ―ルルルルルル―――シーッ、ガタンゴトン、ガタンゴトン……」


急にメイセイが声を出し、スバルの周りを小走りする。

思わずスバルもつられて言う。


「次はD之浦、次はD之浦、お出口は右側です。天河線、山内線はお乗り換えです。」


メイセイが電車ごっこのようにスバルの両肩に後ろから手を掛ける。


「キ――キ――タンタンタン……」


二人で走り始める。スバルがアナウンスをする。


「この先、カーブのため大きく揺れます。ご注意ください。」


二人で前後に並んで角を曲がる。

通り過ぎる人が笑いながら振り返る。


「ハ……ハハ……これ、めっちゃ楽しい!」


メイセイを振り向くスバルは、満面の笑みだ。

メイセイは息苦しい思いの中で、声が震えそうなのを堪えて続ける。


「キ――ガタンゴトン……キ――ガタンゴトン……」


二日前に来た薬局が近づいたとき、ようやく二人は速度を落とし、ゆっくり立ち止まった。


「プシ――ッ」


二人同時にドアの開く音を口に出したから、思わず顔を見合わせて笑い出す。


「お忘れ……ものが……」


「ないように……ご注意……くださ……」


スバルは、メイセイが、笑いながら涙を拭っていることに気付いた。


「笑いすぎて……涙出る……」


スバルは、笑うのをやめた。

メイセイは「ああ、面白い」と言いながら顔を背けて、まだ、半袖で目をこすっている。


「メイセイ、僕……」


「スバルくん、楽しかった。」


「え?」


「俺、死ぬまでに一度くらい、スバルくんと恋人してみたかったし。

スゲェ楽しかった。」


メイセイは真っ赤な目でスバルを真っすぐ見た。


「ありがとう。明日から――部長って呼ぶし。」


「え?じゃあ……」


「スバルくんと俺は恋人じゃありません。」


――なんという顔で、この言葉を言うんだろう。


端正な顔が大きく歪み、それなのに必死に笑顔でいようとしている。

喉の奥に隠した震えが、ビリビリと空気を伝わってくる。


【恋人にはなりません。】


そう言おうと思っていたのに、

言わなければと思っていたのに、

言わないままここまで来て、

一緒に看板を作って、勉強して、鉄道の話をして、

大笑いして走って……


スバルは何も言えずに立ち尽くす。

メイセイは覚悟を決めたように言った。


「俺、学校に忘れモンしたから戻る――じゃあ」


そのまま後ろを向いて、来た道を戻り始める。


「ありがとう――部長」


スラリとした白いスクールシャツが薄闇に遠ざかって行く。

スバルは駅に向かって歩き始めた。



別作品も書いています。

『【完結】BL終局の悪魔―俺を利用するはずの白髪高官が、なぜか俺の目を美しいと言ってくる―』

https://ncode.syosetu.com/n4565ml/

(こちらはR18版をムーンライトノベルズで投稿中(完結まで執筆済み))

『元公爵令嬢の小さな宿屋―年下の町医者が、客でもないのに今日も会いに来ます』

https://ncode.syosetu.com/n8605mt/

(完結→続編『続・元公爵令嬢の小さな宿屋―陶器市で年下の町医者と手をつなぎました』も開始(https://ncode.syosetu.com/n0955mu/))


お気に入りのキャラクター・場面がありましたら一言でも頂けるととても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。