④ (僕はいい気になってるんだ。)
全13話。連休中にどんどん更新して、連休明けに完結予定です。
「お兄ちゃんのパピっ子食べていい?」
中2の妹コトが、風呂上がりにぼんやりと考え込んでいるスバルを覗き込む。
「おー。」
「やった!」
早速コトは冷凍庫からパピっ子を取り出している。
高1の妹ムギが呆れたような口調で言う。
「お兄ちゃんさあ、嫌なら嫌って言った方がいいんじゃない?」
「え!?メイセイのこと!?」
「めいせ?パピッ子のこと!」
「ああ、パピッ子……」
「ほらお姉ちゃん、お兄ちゃんは別に嫌じゃないんだって!
ほら、嫌なときは言うじゃん。」
「えぇ、そうかな。中途半端じゃん。
――彼女とかも流されて作りそうだよね。」
ムギの言葉もどこ吹く風で、コトは機嫌よくパピッ子の袋を開ける。
「いいじゃん。流されるのもOKのうちでしょ?ね、お兄ちゃん!」
「え?おー……」
「やっぱり中途半端……お兄ちゃんは良くても、私が彼女なら嫌だ。」
ムギの言葉にコトが顔を上げる。
「なんでぇ?」
「流れで彼女になってたら嫌だもん。
仕方ないから彼女にしてやるかって……
そんな程度なら、振って欲しい。」
「お姉ちゃん、プライド高い!」
ムギとコトはキャッキャと話しながら自室に去って行った。
去って行く二人の声とメイセイの言葉がスバルの身体を取り巻いている。
――3数える間に拒否しなかったら、部長は俺の恋人です。
――二人のときは、なんて呼べばいいですか。
――幸せ過ぎる……
――明日、トゥルリラインバータの走行音聞きながらさ、勉強しない?
(僕はメイセイの言葉を、明確に否定したか?)
驚いたから?
3秒カウントダウンされたから?
――どれも違う。
断る機会も、手段もいくらでもあった。
それどころか、学校に行かないだけでも良かった。
――じゃあなぜ?
(僕はいい気になってるんだ。)
スバルは自分の残酷な気持ちに目を向けざるを得なかった。
一目も二目も置かれる容姿
気怠そうな雰囲気
生意気な目元
良好な成績
そこにいるだけで場の空気を持って行くメイセイが、
自分のことが好きなのだ。
――こんな目立たない鉄研部員の、この自分を。
その本気の好意の上にあぐらをかいて、
いい気分に浸っている。それが……
(僕だ。)
スバルはチラリとスマホを見た。
まだMINEの友達ではない。
友達申請して、MINEを送るか?
明日会ったときに言うか?
【恋人にはなりません。】
思わずスバルは机に突っ伏した。
「僕、何をしてるんだろう……」
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