② 3数える間に拒否しなかったら、部長は俺の恋人です。
全13話。連休中にどんどん更新して、連休明けに完結予定です。
「こういう意味の『付き合って』なんスけど、どうですか?」
ちょうど通りの人は、離れたところにまばらにいるだけ。
見開いたスバルの目には、爛々と輝く宵野の瞳が映るだけ。
「はあ?お前……」
駅の階段から少しずつ人が流れ出てくる。
「3数える間に拒否しなかったら、部長は俺の恋人です。3……」
「え!?」
「2……」
「え!?!?」
「1……」
「ちょ、ま……」
宵野は真正面に立った。
「0……部長。」
「……は?」
「じゃあ、よろしくお願いします。
お疲れ様でした。」
宵野は大股で駅の階段に向かう。
その隣を通り過ぎる女子高生たちが、振り返って騒いでいる。
「冗談?ガチ?どっち?」
スバルは、弱い水鉄砲のようなにわか雨が降って来るまで、
その場に立ち尽くしていた。
*******
翌日は連休初日。
朝から午後までの予備校の授業を終えると、
スバルは学校に向かった。
(昨日は結局看板を作れなかったから、行かなきゃダメだ。)
そう自分に言い聞かせている。
鉄研にはグループMINEがあるから、連絡を取ろうと思えばFriend申請ができる。
でも、高二の、サボり部員の、自分に告白したはずの宵野明星からは、
全く音沙汰がなかった。
ひっきりなしにスマホを取り出して通知を確認した自分が馬鹿らしい。
もう放っておこう。
学園祭まで後二週間やりきって、ゲイだかホモだかノンケだか知らないが、
その宵野に……宵野を含む高二にバトンタッチ、それだけだ。
休日の校舎の薄暗い廊下をヒタヒタ歩いて部室に近づくと、微かに人の気配がする。
(いやまさか……)
ドアノブに手を伸ばした瞬間、昨日のキスの感触が頬に蘇り、ピタリと手が止まった。
「部長」
サッとドアが開いて視界が広がる。
「宵野!?なんでいるの!?」
「下校時間が過ぎてるから明日、って昨日部長が言ってたでしょ。
――つーか、遅いし。」
「約束じゃないだろ!あれは……」
「部長」
ドアを塞いだまま宵野がスバルを見る。
「二人のときは、なんて呼べばいいですか。」
「呼び……え?え!?」
「昨日から考えてて……呼び捨てもいいけど、『さん』か『くん』を付けたいス。
くもじさん、くもじくん、スバルさん、スバルくん、どれがいい?」
「突然の四択?」
「3秒以内で決めて。
3……
2……」
「急過ぎん?」
「1……」
「……スバルくん。」
「スバルくん……!」
急に、宵野はスバルを部室に引き入れると、強く抱き締めた。
宵野の白シャツが汗ばんでいる。
「ハァァ……ヤベェ……
――スバルくん。」
耳元で囁く宵野の吐息に、思いがけずゾクゾクしてくる。
(他校の女子と付き合ってたし、宵野は手慣れてるんだな……
いや、それは女子……僕は男子……)
スバルの戸惑う心を知ってか知らずか、宵野はスバルの耳に唇を擦りつける。
「スバルくんは『メイセイ』って呼んで。」
「それは一択?」
「3秒以内に呼んで。
3……」
「宵野じゃだめ?」
「2……」
「アッ!」
宵野に耳を甘噛みされたのだ。
「1……」
熱い宵野の唇がまたスバルの耳に触れようとするとき、
スバルはとうとう声を上げた。
「メイセイ!」
パッと宵野――メイセイが、スバルの顔を見つめる。
「はい、スバルくん。」
そのメイセイの頬は熟れた桃のようで、目は夢を見ているように泳いでいる。
「なあ、宵野!」
「メイセイ。」
「……メイセイ、お前……」
「スバルくん、看板はできたし。見て!」
メイセイが指差した方を見た瞬間、スバルの顔が輝いた。
「看板……学園祭の?……え?クオリティすごくない!?
よし、仕上げやろうぜ。」
そこから二人は、日がとっぷりと暮れるまで作業を続けていた。
作業の合間合間に、スバルは、メイセイの切れ長の涼し気な目や、
意外と品のいい整った横顔を、チラリチラリと盗み見ていたのだった。
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ꕤ*.゜ このお話とはまた違う、少年王の恋も連載中です
感情の乏しい13歳の少年大王シリウスが、
天敵である猫族少女リヒトと出会うところから始まる恋愛ファンタジー。
三年後に再会した二人は、少しずつ距離を縮めていきます。
現在は、昔スンとしていたシリウスが恋をして、照れて、浮かれて、甘々お祭りデート中です(笑)
その一方で、物語の奥では二百年前から続く因縁も動いています ꕤ*.゜
『神鼠の大王は猫を愛せない』
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