①文化祭まで二週間、ほっぺにキスされました
【第1章】
水鉄砲喫茶 編始まります。
全13話。連休中にどんどん更新して、連休明けに完結予定です。
「5月10日の文化祭まで二週間を切りました。」
鉄道研究部部長の天牛スバルが声を上げる。
「進捗を連休明けに確認するんで、
各自で担当の作業を進めておいてください。では、今日は終了です!」
30人ほどの部員がざわざわと帰宅し始めた。
スバルが副部長に声を掛ける。
「宵野は?また休み?」
「あー、そうじゃない?アイツ、名ばかり部員だから。」
「看板製作係なのになぁ……」
スバルはぼやいたが、副部長は「まぁ、なんとかなるって!」と手を振って教室を出て行った。
一人になると、スバルは文化祭の準備で散らかった部室をぼんやりと見る。
が、すぐに部屋の片隅に行って、段ボールや木材を引っ張り出し、一人で看板を作り始めた。
***
教室が暗くなるのにも気づかず、スバルは夢中で作り続ける。
「ここに……紙の花を飾れば……」
「部長」
「ウワァ!!!」
段ボールカッターを持ったまま尻もちをつく。
慌てて目を上げると、そこには先ほど話題に出た宵野が立っていた。
手から血を流している。
「スマン!大丈夫!?」
宵野は手をチラリと見る。
「大丈夫だと……」
「超ゴメン、やばい、保健室!」
「保健室、閉まってるでしょ。下校時間過ぎてるし。」
「うそォ!?じゃあ、駅前の薬局行こう。
とりま、ハンカチで……」
スバルは、一日使ってじっとりと濡れたハンカチをポケットから取り出して宵野の手のひらを押さえると、宵野の腕を引っ張った。
「いや、別に……俺、センコーに言われて、部長に帰れって言いに来ただけで……」
「それはありがとう、じゃあ、薬局行こう!」
宵野の顔が薄暗い部屋の中でも目立つほど燃え立っていることに、
そのときのスバルは気付かなかった。
***
「すごい大怪我だな。」
二人の白いワイシャツが、『薬』の看板に浮かび上がる。
「いや、部長が騒いだからでしょ。包帯巻かないとずれるとか……」
「キズパワーバンドだってよ。貼れば治癒力回復ってすごいよな。」
「……」
夕暮れの駅前通りを、二人はゆるゆると駅に向かう。
この高校は中高一貫の進学校で、高校三年生になると、五月の文化祭を最後に部活を引退し、
受験勉強に専念する者がほとんどだ。
――スバルもそのつもりだ。
とはいえ、「最後だから気合を入れて」ということもない。
無事に終わらせて、自分のやるべきことを果たして、宵野たち高二にバトンタッチ……
自分は勉強を進めて、大学受験へ……
流れのままにやるだけだ……
「部長」
「おー?」
「付き合ってる人とかいるんすか?」
「明らかにいないだろ!」
「わかんねェから聞いたんスけど。じゃあ、好きな人はいるんスか?」
「突っ込んでくるなぁ……宵野って知りたがり?
――てか、お前って喋りかけてくるんだな。」
スバルは宵野を振り返る。
「かなり、意外。」
そう言うと、白い歯を見せて笑い出す。
「宵野とは、三年くらい部活一緒なのにな。」
髪をなびかせて笑うスバルを、宵野は凍り付いたように見つめる。
「意外じゃん。」
宵野の視線に気づかず、スバルは前を向いて歩いている。
「意外じゃない。」
掠れた声が、宵野の口からこぼれ落ちる。
「意外だよ。お前、喋んないというか、そもそも部活来ないし……」
「じゃあ、部活行くんで、付き合ってください。」
「まじか。」
スバルは目を丸くした。
「下校時間過ぎてるから、明日でいい?」
「その意味じゃない。」
「でも、看板係以外は埋まってる。」
「ハァァ……」
「深いため息だな、宵野。」
スバルは宵野の肩を叩き、笑いを堪えながら顔を寄せた。
「諦めろ……お前はもう、看板係だ。」
次の瞬間、スバルの頬に温かく、湿った感触がした。
――宵野がスバルの頬にキスをしたのだ。
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ꕤ*.゜ このお話とはまた違う、少年王の恋も連載中です
感情の乏しい13歳の少年大王シリウスが、
天敵である猫族少女リヒトと出会うところから始まる恋愛ファンタジー。
三年後に再会した二人は、少しずつ距離を縮めていきます。
現在は、昔スンとしていたシリウスが恋をして、照れて、浮かれて、甘々お祭りデート中です(笑)
その一方で、物語の奥では二百年前から続く因縁も動いています ꕤ*.゜
『神鼠の大王は猫を愛せない』
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