⑫ 俺、男です。ドキドキしないんじゃないんですか。
バン!!!
急にスバルくんが思い切り俺の両頬を両手で挟んだ。
「イッタァ!!!」
思わずのけぞって、一、二歩下がる。
パッと顔を上げると、
――怒りの表情を浮かべたスバルくんが俺を見下ろしていた。
「なんなの?説明してよ。」
(眼鏡外した顔、かっこいいかも。)
急に妙なことが頭に浮かぶ。
「何で泣いてるわけ?――すごい悲しそうな顔で。どういうこと?」
(怒った顔、かっこいいかも。)
末期の目には何もかも美しく見えるらしい。
「何か言いなよ。3、2、1……」
カウントするスバルくん。
俺は覚悟を決めて、スバルくんに言った。
「部長、俺、男です。
――ドキドキしないんじゃないんですか?ホントは。」
スバルくんは俺の目を真っすぐに見て即答した。
「ドキドキするよ。」
スバルくんはベッドからピョンと飛び降りて、俺をじっと見上げる。
俺の頬は火の玉のように燃え、ぐらりと、また後ろに下がる。
「メイセイ、僕としたいの、したくないの、どっちなの?」
俺が口を開けようとすると、バンと片手を俺の口につける。
「するべきか、するべきじゃないかは聞いてないからね。」
俺はうつむいた。
何も考えられなかった。
――ただ、大好きだという想いだけが身体中を走っていた。
「メイセ……」
「死ぬほどしたい。」
それを聞いたスバルくんは、俺の手をギュッと握ってくれた。
その手は少し汗ばんでいる。
「部屋の電気をちょっと暗くしない?」
(そうだった。)
俺はふと思い出した。
スバルくんはいつも、こうなのだ。
温和で目立とうとするタイプじゃないのに、
いざとなったら腹を据えて前に進み、細かいことは気にしない。
(部活だけじゃない。全部そうなんだ。)
『やっぱり好きだ』が溢れ出す。
俺たちは、手をつないだまま、部屋の電気のスイッチを探す。
「あ、ここひねると照度が調整できる。」
二人でしゃがんだまま、部屋がスウッと暗くなる。
俺たちは息詰まる気配の中、
見つめ合い、
顔を近づけ、
――キスをした。




