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第5話 シナリオには、まだ足りません
「ただ」
「まだあるのか」
「あります」
俺はモニターを見る。
白い九尾。
一国を相手にできるほどの力。
人の姿も取る。
そこまでは、俺たちが盛った設定だった。
そして、それが本人だった。
でも。
「シナリオには、まだ足りません」
「何がじゃ」
「あなたが」
一度、言葉を選ぶ。
「なぜ、王朝へそこまで関わったのか」
空気が変わった。
机の上で丸くなっていた狐の目から、笑みが消える。
黒川さんの手が止まった。
光秀も書かなかった。
ジャンヌは静かに妲己を見る。
信長も何も言わない。
「俺たちが作ったのは」
俺は言う。
「一国を相手にできる九尾、までです」
なぜ人間へ関わったのか。
なぜ王朝へ入ったのか。
そこで何をしたのか。
そこから先は、まだ作っていない。
「今は本人がいる」
「うむ」
「だから」
俺は妲己を見る。
「勝手に理由を作る前に、聞きたいです」
九本あるはずの尾の気配が、会議室へ広がった。
「聞くのか」
「聞かせてもらえるなら」
赤い目が俺を見返す。
「妲己さん」
「何じゃ」
「なぜ」
一拍。
「王朝へ、そこまで関わったんですか」
妲己の笑みが完全に消えた。




