第17話 消されない衣装
信長が腕を組む。
「面倒だが、悪くない」
ジャンヌも小さく頷いた。
「御堂真白は、感情論では動きません。ですが、運用方針や継続性には耳を傾ける可能性があります」
「官僚ですね」
「はい」
ジャンヌは微笑んだ。
「とても」
黒川さんが、ずっと黙っていたので、俺は気になって聞いた。
「黒川さんは、何を見てるんですか」
「御堂さんのスーツです」
「コミケからずっと見てますね」
「仕立てが良かったので」
「敵の情報ですか」
「はい」
黒川さんはタブレットにラフを表示した。
黒いスーツ姿の御堂真白。
細身のジャケット。
白いブラウス。
無駄のないシルエット。
「この人は、服装からして“削る側”です」
「服装から?」
「はい。余計な装飾がない。色も形も、個性を出すためではなく、個性を消すために整えられています」
信長が興味深そうに見る。
「衣装でわかるのか」
「ある程度は」
黒川さんは淡々と言った。
「信長さんは前に出る衣装。光秀さんは整える衣装。ジャンヌさんは受け止める衣装。御堂さんは、消す衣装です」
会議室の空気が、少し冷えた。
消す衣装。
黒川さんの言葉は、ときどき妙に鋭い。
「では、私たちは何を着ればよい」
光秀が聞く。
「消されない衣装です」
「具体的には」
「本人の意思が反映されている衣装」
黒川さんは光秀を見る。
「光秀さんは、レーヴァテインの“反逆の白刃”ではなく、ヒスガルの《本能寺再提出》衣装で出てください」
「はい」
「信長さんも、三周年衣装で」
「当然だ」
「ジャンヌさんは、火刑台ショコラティエ以外で」
「当然です」
ジャンヌの声が少しだけ強かった。
俺は思わず頭を下げる。
「すみません」
「反省が早くてよろしい」
十四時まで、あと四時間半。
俺たちは、監査対応という名の戦に向けて動き始めた。




