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第7話 星を見る人は、いますか

俺は小さく息を吐いた。


 少女はまだ夜空を見ていた。


「寒くないですか」


「少し」


「どこか座りましょうか」


「はい」


 近くのベンチへ移動する。


 少女は座るなり、また空を見上げた。


 しばらく沈黙が続く。


 やがて彼女が、小さく言う。


「……今日は、よく見えます」


「星ですか?」


「はい」


「星が好きなんですね」


「好き、なのでしょうか」


 自分でも分からないような言い方だった。


「見えるので」


 それだけ答える。


 しばらくして、黒川さんが駆け寄ってきた。


 息は少し上がっているけれど、表情は落ち着いていた。


「宮田さん、お待たせしました」


「すみません」


 黒川さんは少女の前へ立つ。


「初めまして。私は黒川と申します」


 少女はゆっくり立ち上がる。


「……ガリレオです」


「お会いできて光栄です」


 黒川さんは一礼した。


「今日は遅い時間ですので、まずは休める場所へご案内します」


「休める場所」


「はい。信長さんや光秀さん、妲己さんが暮らしている場所があります」


「皆さん」


「はい。ほかにもジャンヌさんという方がいらっしゃいます」


 ガリレオは少しだけ首を傾げた。


「……星を見る人は、いますか」


 黒川さんは少し考えてから微笑んだ。


「たぶん、一番見てくださるのはジャンヌさんでしょう」


「そうですか」


 ガリレオも、小さく笑った。


 その笑顔を見て、少しだけ安心する。


 少なくとも、信長のように第一声で会社を乗っ取ろうとはしなかった。


 妲己のように人間を愚かとも言わなかった。


 光秀のように議事録を書き始めもしない。


 静かな少女だった。


 だからこそ、その静けさがどこか気になった。


 彼女はタクシーへ乗り込む直前、もう一度だけ夜空を見上げた。


 そして、小さくつぶやく。


「……昨日も、こうでしたか」


 その問いに答えられる者は、その場には誰もいなかった。

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