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第2話 第一候補、ガリレオ・ガリレイ

 光秀が候補資料を読み上げる。


「初回の近代科学編としては、観測・星・裁判という要素がわかりやすい人物がよいかと」


 モニターに、何人かの名前が並んだ。


 アイザック・ニュートン。


 ヨハネス・ケプラー。


 ニコラウス・コペルニクス。


 ルネ・デカルト。


 そして、ガリレオ・ガリレイ。


「有名どころですね」


 俺が言うと、佐伯さんが頷いた。


「最初だからね。説明しなくても名前が通じる人がいい」


「ニュートンなら、リンゴを落とせます」


 黒川さんがタブレットに簡単なラフを描きながら言った。


「落とすんですか」


「ビジュアル上の記号としてです。実際に投げる必要はありません」


 信長が画面を見る。


「大砲の弾では駄目なのか」


「近代科学編の初手を弾道計算にしないでください」


「科学だろう」


「科学ですが、信長さん向けの科学です」


「何が問題だ」


 問題しかない。


 ジャンヌが候補一覧を眺めながら首を傾げた。


「コペルニクスという方は、いかがでしょうか」


「地動説の人ですね」


「世界の中心を問い直した人物、と考えれば、物語にはしやすそうです」


「ただ、一般ユーザーへの知名度は少し落ちるかな」


 佐伯さんが答える。


「名前は聞いたことがあっても、キャラクターとしての印象が作りにくい」


「ならば、ガリレオでよいのではないか」


 信長が言った。


「望遠鏡で天を見て、己の見たものを曲げなかった女だろう」


「女性で確定させないでください」


「違うのか」


 俺は答えられなかった。


 この会議室にいる歴史上の人物は、今のところ全員女性である。


 信長。


 光秀。


 ジャンヌ。


 妲己。


 そもそも妲己は人間ですらない。


「ヒスガルでは女性になります」


 佐伯さんが現実的な結論を出した。


「では、合っているではないか」


 信長は満足そうに腕を組み直した。


 合っているの基準が、もうよくわからない。


 黒川さんがガリレオの資料を拡大する。


「ビジュアルに落とし込みやすいのは、やはりガリレオさんだと思います」


 黒川さんは、資料を一つずつ指で送った。


「望遠鏡、星図、月、木星、古い観測記録。背景にも小物にも使えます。シルエットにも特徴を出しやすいですね」


「裁判要素もある」


 佐伯さんが続ける。


「既存の権威と、自分の観測結果との対立。イベントシナリオとしても起伏を作りやすい」


「また本人が怒りそうな題材ですね」


「本人が来る前提で話さないで」


「これまで全員来ています」


「統計的にはそうだけど、認めたくないんだよ」


 妲己が俺の椅子の下から鼻を鳴らした。


「ならば何も作らねばよかろう」


「それをすると会社がなくなります」


「人の世は面倒じゃな」


 まったくだった。


 光秀が議事録へ入力する。


「では、第一候補をガリレオ・ガリレイとします。イベントの主題は、観測と既存認識の対立。サブテーマとして、星、記録、真実への姿勢を扱う形でしょうか」


「うん。まずはそれで企画を立てよう」


 佐伯さんがページを切り替える。


 モニターに新しい見出しが表示された。


 《キャラクター方向性》


 その下には、大きく空白が広がっていた。


 俺は嫌な予感がした。


「宮田くん」


「はい」


「ガリレオを、かわいくして」


「雑ですね」

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