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第25話 妾は、それが気に入らぬ

 俺はスマホを出した。


「宮田」


「はい」


「何を書く」


「今の言葉だけです」


 メモを開く。


 入力する。


 ――それで、弱いものだけが最後に困る。


 ――妾は、それが気に入らぬ。


 妲己へ見せる。


 赤い目が文字を追う。


「余計なものは足さぬのか」


「足しません」


「優しいとも」


「書きません」


「ならよい」


 それだけ。


 妲己は消せとは言わなかった。


 その時、レジ横の蒸し器へ新しい肉まんが追加された。


 湯気。


 妲己の視線がすぐそちらへ動く。


「妲己さん」


「何じゃ」


「もう一個?」


「要らぬ」


「ずっと見てますよ」


「見ておらぬ」


「見てます」


「宮田」


「はい」


「供物を寄越せ」


「やっぱり欲しいんじゃないですか!」


「うるさい」


 結局、もう一個買った。


 今度は匂いを確認しない。


 紙袋を受け取り、そのまま一口。


「狐じゃないか確認しなくていいんです?」


「一度食った」


「学習が早い」


「当然じゃ」


 信長が笑う。


「すっかり餌付けされたな、狐」


 妲己の動きが止まった。


「魔王」


「何だ」


「今の言葉」


「餌付け?」


「忘れるな」


「なぜ」


「いつか噛む」


「私を?」


 妲己が俺を見る。


「宮田を」


「だから何で俺なんですか!」


 光秀が静かに言った。


「店内ではお静かに」


「細かい女」


「必要です」


「わかった」


 素直だった。


 光秀が少しだけ驚く。


 ジャンヌが肉まんを見る。


「美味しそうですね」


「聖女も食うか」


「よろしいのですか?」


 妲己は自分の肉まんを見る。


 ジャンヌを見る。


「これは妾のじゃ」


「そうですよね」


「宮田に買ってもらえ」


「俺!?」


 信長も言う。


「私も食う」


「信長さんまで!」


 結局、追加で三つ買った。


 俺の財布だけが弱い立場になっていた。


◇


 店を出る。


 空はもう暗かった。


 妲己は、二個目の肉まんを食べながら歩いている。


「宮田」


「はい」


「明日も」


「はい?」


「この供物屋へ寄るぞ」


「コンビニです」


「どちらでもよい」


「肉まん目当てですよね」


「違う」


「じゃあ何です?」


 妲己は、ほんの少し考えた。


「現代の調査じゃ」


「肉まんによる?」


「噛むぞ」


「はい」


 たぶん、肉まんだった。

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