↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
108/169

第23話 九尾は、コンビニ肉まんを供物と呼ぶ

 御堂さんが帰ったあとも、会議は終わらなかった。


 七営業日以内に、妲己をどう残すのか、本人と一緒に決める。


 言葉にすると簡単だが、佐伯さんの顔だけがどんどん遠くなっていった。


「責任者」


「はい」


「腹が減った」


 佐伯さんが顔を上げる。


「今?」


「今じゃ」


「クッキー食べてたよね」


「菓子は飯ではない」


「正論だ」


 信長が言った。


「狐、何か食いに行くか」


「魔王に誘われる筋合いはない」


「では残れ」


「腹は減っておる」


「面倒な狐だな」


「滅ぼすぞ」


「お二人とも」


 光秀が言う。


「社内での威嚇は控えてください」


「細かい女」


「必要です」


 もう完全に定着していた。


 結局、俺たちは一度外へ出ることになった。


 夕食。


 それから、妲己が現代で過ごすために必要なものを買う。


 その途中、コンビニの前で妲己が止まった。


「何じゃ、あれは」


「コンビニです」


「こんびに」


「食べ物とか飲み物とか、日用品とか。だいたい何でも売ってます」


「供物屋か」


「だいぶ違います」


 妲己は店内を見る。


 弁当。


 おにぎり。


 パン。


 飲み物。


 菓子。


 その中で、視線が一か所へ止まった。


 レジ横。


 湯気。


「宮田」


「はい」


「あれは何じゃ」


「肉まんです」


「肉」


「はい」


「何の肉じゃ」


「豚です」


「狐ではないな」


「狐ではないです」


「本当に?」


「普通のコンビニで狐肉まん売ってたら、俺も怖いです」


 妲己は、しばらく肉まんを見ていた。


「欲しいんです?」


「欲しいとは言っておらぬ」


「じゃあ行きますか」


「待て」


「欲しいんじゃないですか」


「確認しておるだけじゃ」


「何を」


「供物の質を」


「コンビニを供物屋にするのやめません?」


 信長が笑う。


「買ってやればよいではないか、宮田」


「俺が?」


「最初に狐を呼び出したのは貴様だろう」


「召喚者に餌やり義務までつくんですか」


「宮田」


「はい」


「餌と言ったか」


「言ってません」


「今言った」


「すみません」


 危ない。


 噛まれる。


 俺は肉まんを一つ買った。


 紙袋のまま、妲己へ渡す。


「どうぞ」


 妲己は受け取ると、まず匂いを嗅いだ。


「慎重ですね」


「毒が入っておるかもしれぬ」


「コンビニに対する信頼がゼロだ」


「人間に対する信頼がゼロなのじゃ」


「もっと根深かった」


 紙袋から白い肉まんを取り出す。


 もう一度、匂いを嗅ぐ。


「狐ではないな」


「さっき確認しましたよね」


「念のためじゃ」


「豚です」


「ならよい」


 小さくかじる。


「……」


 すぐには次を食べず、ゆっくり味を確かめている。


 俺たちは、なんとなく見ていた。


「見るな」


「すみません」


 もう一口。


「……うまいな」


 小さな声だった。


 信長が笑う。


「気に入ったか」


「普通じゃ」


「今うまいと言ったぞ」


「うまいものを、うまいと言って何が悪い」


「素直ではないか」


「魔王」


「何だ」


「次に笑えば噛む」


「私を?」


 妲己が俺を見る。


「宮田を」


「なんで俺!?」


「近いからじゃ」


「理不尽!」


 妲己はそのまま肉まんを半分ほど食べ、ふと店内を見る。


「宮田」


「はい」


「このようなものが」


 手元の肉まん。


「どこでも買えるのか」


「だいたい」


「金を出せば?」


「はい」


「特別な者でなくとも?」


「普通に買えます」


 妲己は肉まんを見る。


「王でなくとも」


「はい」


「貴族でなくとも」


「はい」


「兵でもなく」


「はい」


「ただの子どもでも?」


「お金があれば」


 少し間があった。


「これは」


 肉まんを持ち上げる。


「子どもでも食えるか」


「食べられますよ」


「辛くはないか」


「普通の肉まんなら」


「熱い」


「そこは気をつけないとですけど」


「そうか」


 妲己はまた一口食べた。


 また子どものことを聞いた。


 俺は、それだけ覚えておいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。