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偽物扱いで王城を出禁にされた公爵令嬢、辺境侯爵家で自由を満喫します ~いまさら本物だと言われても戻るつもりはございません。~  作者: ゆずこしょう
公爵令嬢のお茶会と偽物令嬢のお茶会。

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わたくしのお城へようこそ!

バサッバサッ――


「きゃぁぁ!!ドラゴンよ!!」


「まさか、セイレートに出るなんて……早く騎士団を呼んできてちょうだい!!」


お茶会当日――


セイレート城の上空を青と赤色のドラゴンが旋回していた。


「まぁ……あれがドラゴンなの!?可愛いわね!そう思わない?リネット!」


周りの使用人たちが騒ぐ中、ベアトリーチェとファルクナー家から来ている使用人たちだけが上空を見つめている。


「そう思うのはお嬢様だけかと思いますが……」


「ちょっと、見てよ!あの足。ちょこんとした足……可愛らしいじゃない。」


「はぁ……それで?あれは一体なんですか?」


リネットはため息を吐くと上空を指した。


「ふふっ……秘密よ。それより、私も着替えてくるわね。さすがにお茶会でこの格好は……」


ベアトリーチェは自分の侍女服を見下ろした。


「いや、この格好でもいいかしら。」


「ダメに決まってるじゃないですか。何言ってるんですか。」


リネットはベアトリーチェの肩をグイグイ押すと部屋の中に入るように促した。


「ケルベリオン帝国の皇帝陛下が来られるんですよ?」


「そんな格好で出迎えたら、それこそ国際問題に発展して戦になりかねません!」


「えぇ~そうかしら……」


ベアトリーチェはリネットに寄りかかると、そのまま空を見あげる。


「はぁぁ~私もドラゴンに乗って見たいわぁ~」


「それはギルバート様に頼んでくださいませ。喜んで後ろに乗せてくれますよ。」


「ダメよ。ギルバート様の後ろはハンスって決まってるもの。私はひとりで空を駆け回りたいのよ。」


「なぜそこでハンス様が出てくるのですか。それよりもほら……早くしないと……」


リネットがベアトリーチェを部屋の中に入れようとしたその瞬間――


バサッ、バサッ


赤いドラゴンはベアトリーチェ目掛けて急降下した。


そして、近くまで来ると、大きな目で彼女を見つめる。


「お嬢様、危ないです。」


「大丈夫よ!ほら。」


ベアトリーチェはドラゴンの鼻先に手を伸ばした。


ゴロゴロゴロ


(な、何この生き物……か、かわいい~)


しかし、幸せな時間は一瞬で終わりを迎えた。


ドンッ――


大きな音が地上に響き渡ったのだ。


「今度はなに!?」


「敵襲!?!?」


侍女たちが騒ぎ出す中、ベアトリーチェとリネットは音のする方へと視線を向けた。


「ここは……なんだか賑やかだな。」


「はぁ……」


そこには――


この国でも唯一その色を持つことを許された王族と全く同じ瞳の色をした男が立っていた。


「ここに、ベアトリーチェという娘がいると聞いてきたんだが……」


男はチラチラと周囲を見渡した。


「どうやらここには……」


「わたくしです。」


「……は?」


どうやら男はベアトリーチェが目の前にいる女と思っていなかったらしい。


ベアトリーチェはスカートを摘むと、ゆっくり片足を下げた。


「お初にお目にかかります、いえ……お手紙振りと申した方がよろしいでしょうか。お会いできて光栄です。ケルベリオン帝国、グラハルト・ケルベリオン皇帝陛下。」


ベアトリーチェは一旦そこで区切ると、ふわりと微笑んだ。


「アルキューネ国、四大公爵が一角。セイレート公爵の娘、ベアトリーチェ・セイレートと申します。」


準備した花々が二人の出会いを祝福するかのように、さらさらと揺れた。


***


「ベアトリーチェお嬢様。お茶会の準備が整いました。」


「そう。きっとお義母さまたちも喜んでくださるわ。」


ベアトリーチェが、ケルベリオン皇帝陛下と挨拶をしている頃、セイレート城の本城では急ピッチでお茶会の準備が進められていた。


いつもとは違う動きに厨房をはじめ、侍女たちは不安を募らせている。


「本当に大丈夫かしら……」


「ベアトリーチェお嬢様が大丈夫と仰るんだもの……きっと大丈夫よ。」


(何が大丈夫なのかしら……)


ミラはお茶会のセッティングを見てため息を吐いた。


何をコンセプトにしているのか分からない植物たち。


恐らく、ヴィクトリーチェが好きな花を集めただけなのだろう。


(季節外れの花をよくもこれだけ集めたわね……)


そこにはひまわりやダリア、そして秋の宝石とも言われるネリネの花が所狭しと並んでいる。


そして茶器の色はどこで手に入れたのか……金色に輝いていた。


(目が……チカチカするわ……)


ミラは一度目を閉じてから離れへと目を向けた。


(私もあちらの方が良かったわ……)


昨夜――


ミラとヘラ、そしてリラはベアトリーチェに呼び出されていた。


『あなたたちにはヴィクトリーチェの様子を見ていて欲しいのよ。一人で構わないわ。私も途中からヴィクトリーチェの開催するお茶会に参加しようと思っているし、入りやすいようにしたいの。あなたたちならそれが簡単でしょ?』


ミラたちは眉間に皺を寄せた。


それだけヴィクトリーチェの近くにはいたくないということなのだ。


毎日匂いのきつい香水。


ディオンは偉そうにふんぞり返り、我が物顔で居座る。


侍女や従者には高圧的な態度を取り、気に入らなければ殴る。


それでも我慢していたのは相手が王族だからと言うのと、アリステアたちから何があってもやり返すなと言われていたから他ならない。


『ですが……』


ミラは言葉を濁し、ヘラやリラは視線を逸らした。


しかし、ベアトリーチェはニヤリと笑った。


『ほら……あなたたちが休みたい時とか……入れ替わっているの知っていても何も言わなかったじゃない?』


(気づかれてた……!?)


『まさか……気づかないとでも思った?あなた達とどれだけ長い付き合いだと思っているのよ。王城にいた頃だって、あなた達のことを忘れたことなんてないわ。』


ミラ、ヘラ、リラは三つ子だ。


性格は違うものの、顔はそっくり。


周りの侍女たちですら入れ替わったことに気づかないほどである。


それをベアトリーチェだけでなくセイレート一家は瞬時に見抜くことができるのだ。


『『『……お嬢様……』』』


三人が感動に浸っていると……ベアトリーチェはにっこりと微笑んでその場を後にした。


『じゃあ、お願いね!』


『あっ……』


――そして現在。


ベアトリーチェ直伝のじゃんけんで負けたリラは、ヴィクトリーチェの後ろに控え、アレクサンダル国王とエリザベート王妃を出迎えていた。


「お義母さま!!」


「リーチェ。見ない間にまた綺麗になったのではなくて?」


「そんな……お義母さまの方がとてもお綺麗ですわ。」


「ふふっ……あなたのお茶会が恋しくて……早く来てしまったわ。」


「そう言っていただけて光栄ですわ。わたくしのお城を案内いたします。」


「まぁまぁ……」


(あなたのお城ではないですけどね……)


ヴィクトリーチェはエリザベートの手を持つとそのまま軽い足取りで城内へと連れていった。


そんな後ろ姿をミラは渋った顔で見つめていた。


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