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偽物扱いで王城を出禁にされた公爵令嬢、辺境侯爵家で自由を満喫します ~いまさら本物だと言われても戻るつもりはございません。~  作者: ゆずこしょう
公爵令嬢、お茶会の準備に余念がありません。

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セイレート城の表と裏。

セイレート城の離れ――


「マーク、よろしく頼むわね。」


「わかりました。レシピはいただけましたし、俺たちが腕によりをかけて作りましょう!」


料理長を始めとした料理人たちは、ベアトリーチェの趣味がわかっているのか……力こぶを作って見せつけるとそのまま厨房へと向かって歩いていく。


(はぁ……やっぱり素敵な筋肉たちね……)


(あの人たちが絡み合う姿を想像するだけで幸せだわ……)


ベアトリーチェが筋肉に見惚れていると、後ろからわざとらしい咳払いが聞こえた。


「わかっているわ。リネット……」


どうやらリネットが現実に引き戻してくれたようだ。


ベアトリーチェは胸に手を置いて、深く息を吸うと後ろを振り返る。


後ろには侍女や従者。そして庭師に至るまで、たくさんの人たちが集まっていた。


「皆さん、ついてきてくださってありがとうございます。これから三日間……あまり時間はないのですけれど、お茶会の準備をお願いいたします。」


ベアトリーチェが頭を下げると、


「頭をあげてください!」


「そうですよ。私共も楽しみにしておりましたし気にしないでくださいませ。」


皆が一斉に話しかけてくる。


今回、セイレートの本城で働いている人たちには声をかけることができないため、急遽ファルクナー侯爵家に仕える人達を連れてきたのだ。


(本当に……人がいい人ばかりで助かったわ……)


しかし期間は三日……


しかも相手はケルベリオン帝国の皇族だ。皆一様に不安そうな顔をしている。


パンッパンッ!!


突然聞こえた音に顔をあげる。


「ベアトリーチェ様……」


「たった三日間しかないと言ってしまえばそれまでですが、まだ三日間もあると思えば余裕がありますわ。わたくしたちはできる限りのおもてなしをしましょう。それに……わたくしが開催するお茶会ですもの。」


ベアトリーチェはそこで一旦区切るとくすりと笑った。


「満足しないわけがございませんわ!」


今まで王妃の代わりにお茶会を主催してきた。


それに、自分のためにもだ。


(たまには王妃様の命令も役に立つものね……)


ベアトリーチェはそれぞれに一枚の紙を渡していく。


その紙には何をやるのか詳細が記載されていた。


「庭師の皆さんには、使われていなかったこの場を整えて欲しいのです。近くのお花屋さんにも声をかけてもらっていますので、今から間に合う色のお花を用意してくださいませ。ちょうど薔薇の咲く季節だもの。いいお花があるかもしれないわ。」


庭師たちはその言葉を聞くと、即座に動き始めた。


出来れば地に足の着いたバラを見てほしいところだが、こればかりは仕方がない……


離れは普段人が来ないからと、そのままになっていたのだ。


「従者の皆さんには離れの掃除と……テーブルのセッティングを。ここに滞在するので……泊まれるようにして欲しいわ。」


「承知いたしました。 」


「侍女の皆さんは使う食器の選定と、テーブルクロスの色選び。バラが映える色を探したいから手伝ってくれるかしら。」


「承知いたしました。」


ベアトリーチェはそれぞれに指示を出し終えると、少し離れた所にある本城へと目を向けた。


(気づかれるかと思ったけど、意外に気づかれないものね……)


本城の方から漂ってくる黒い雲に思わずため息を吐いた。


(……今雨降られるのは困るわね……)


***


「ベアトリーチェ様。あと三日でお茶会ですし、そろそろ準備なさいませんと……」


「うるさいわね!なんで私がそんなことをしなければならないのよ。そういうのはあなたたちの仕事でしょう?」


セイレート城――


ミラは鏡の前でドレス選びに勤しむベアトリーチェ……いや、ヴィクトリーチェを見てため息を吐いていた。


ベアトリクスに言われ、ヴィクトリーチェをベアトリーチェとして扱うようになって十日。


ヴィクトリーチェはお茶会の準備一つしようとせず、遊び回っている。


それどころか……


「そうだぞ。未来の王妃であるベアトリーチェがなぜお茶会の準備をせねばならぬ。そのくらいお前たちがやっておくのが普通だろうが。そもそもこの家の者はなんだ。そんなこと一つできないのか!?ふん……四大公爵家が聞いて呆れるな。」


「ふふっ……ディーもそう思う?この家で働く人ほーんと能無しばかりでいやになっちゃいますわ。王城とは大違いですわね。」


数日前から、ディオンが居座っているのだ。


(能無しばかりって……)


お茶会は貴族の嗜み。


あくまでも主催した人が準備をしていく。


もちろん侍女や従者も手伝いはするが、仕切るのは主人の役目だ。


しかし、この二人はそのことを一切知らないらしい。


(むしろお前たちが能無しだよ……)


ミラは小さくため息を吐くと、その場をあとにした。


それからしばらくして――


廊下を歩いていると侍女や従者が近づいてくる。


「ミラ、三日後にお茶会って聞いたけど……準備はしなくていいの?」


「今回はどこで開催するんだ?庭か?それとも室内か……テラス?ベアトリーチェお嬢様のことだから……砦でやろうとか言わないよな……!?」


どうやら何も準備が進まないことにヤキモキしているらしい。


「ミラ……今回の菓子や茶葉……何も準備していないがいいのか!?いつもならレシピを持って現れるから楽しみに待っていたんだがな……」


料理長までもがミラの所へやってくる始末。


(本当に……どうしたらいいのかしら……)


ベアトリクスに言われている以上、ミラは自分から動く気はない。


だが、何も進まない毎日にため息を吐いた。


(こんなつまらない日々は嫌ね。)


ベアトリーチェやベアトリクスは毎日何かしら問題を起こす。


剣を持ち出したかと思えば、騎士団で稽古に参加し、馬に乗ったかと思えば、弓を持って狩りに行く。


お茶会を開けばお祭り騒ぎ……


そんな毎日がただただ懐かしく感じる。


(早く戻ってきてくれませんかね……)


ミラはファルクナー城の方へ視線を送った。


この時、離れでいつものお祭り騒ぎが起きているなど……知る由もなかった。


「今回はせっかくだし……ここを使いましょ。」


「ここ……ですか……?」


「そうよ?今からここを飾れば全然間に合うわ!!」


そう言って連れてこられた場所は……


離れの屋上だった。

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