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偽物扱いで王城を出禁にされた公爵令嬢、辺境侯爵家で自由を満喫します ~いまさら本物だと言われても戻るつもりはございません。~  作者: ゆずこしょう
公爵令嬢はゆっくりお茶を飲ませて貰えないようです。

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帰ってきたら連行されるなんて聞いていません。

「どうやら大変だったようだな。」


ベアトリーチェが屋敷に帰ると、そこには既に家族たちが勢ぞろいしていた。


「アリスターお兄様……」


アリスターはベアトリーチェの肩に軽く手を乗せると、今度は別の手が頭の上に置かれた。


「母上から大変なことがあったって聞いたから急いで帰ってきたんだけど……」


その声はどこか楽しそうだ。


「アリオンお兄様まで、わざわざ帰ってきてくださったんですか?」


(この二人……相手にするの面倒なのよね。)


アリスターとアリオンはベアトリーチェの兄だ。


双子ということもあってか、性格は似ていないものの行動はそっくりだったりする。


今だってそうだ。


肩と頭に置かれた手には、逃がす気などないと言わんばかりの力が込められている。


(これは……話すまで離してくれないわね。)


ベアトリーチェはため息を吐くと、


「話すのはお父様たちもいるところで、ですよ?」


「「もちろん。」」


(さすが双子だわ……)


ベアトリーチェは返事をすることなく屋敷の中を歩き出した。


「お父様と、お母様は……」


「二人とも書斎にいるよ。ベルを待ってる。」


(お母様……いつ帰ってきたのかしら……)


ベアトリクスは、先ほどまで同じお茶会に参加していた。


お茶会中は別行動を取っていたが、騒動を知っているということは見ていたはずだ。


(アリオンお兄様も呼び戻しているし……)


アリスターは家にいたが、アリオンは領地運営を任されているため領地にいることがほとんど。


領地から王都に来るのも、馬で二日はかかる距離にある。


今日の今日で連絡したところで来られるわけがない。


(まぁ……お母様のことを考えても無駄ね……)


これ以上考えても無駄だと思ったベアトリーチェは考えることをやめた。


「……そうですか。」


ベアトリーチェは短く返事をすると、そのまま書斎へ向かった。


***


「ベル……おかえり。話は聞いてるぞ。」


書斎の扉を開けた瞬間、視界が影で覆われた。


「お父様……」


「く、苦しいです。離れてください。」


気づけば抱きしめられていた。


左右には兄二人、前には父、アリステア。


暑苦しいにも程がある。


「す、すまない……嫌いにならないでくれ……」


「ゔっ……苦しいです。嫌いにならないので離れてください!!」


「ほ、本当か………」


「本当です。離れてくれない方が嫌いになりますよ。」


“嫌い”という言葉が効いたのか、アリステアはベアトリーチェから離れた。


「お兄様達も、逃げませんから離れてくださいませ。」


ベアトリーチェは二人の手を軽く叩くと、渋々といった感じで離れていく。


そんな様子を少し遠くから、ベアトリクスが微笑みながら見ていた。


それからしばらくして――


「ベアトリーチェ。」


書斎にあるソファに腰を下ろすと、アリステアは真剣な面持ちでベアトリーチェを見つめた。


「おおよそのことはベアトリクスから聞いている。」


アリステアは足を組むと、腕を組んだ。


鼻の下にある髭がくるんと揺れる。


「だが、お前から聞いたわけではないからな。」


次の瞬間――


その場にいた全員の顔がベアトリーチェに向いた。


(私から話せということね……)


ベアトリーチェはため息を吐くと、ディオンから貰ってきた誓約書を取り出す。


「今日お茶会に参加していると珍しい人が参加してきました。ヴィクトリーチェです。」


「ヴィクトリーチェか……」


「はい。面倒でしたので、適当に流していたのですが……終わり間際……ディオン第二王子殿下が現れたのです。」


それから何があったかを一つ一つ話していく。


その間、誰も話を止めようとはしなかった。


「……なるほどな……」


全てを話し終えると、アリステアの一言で重たかった空気が少し柔らかくなった。


「はい。こちらはその時に書いてもらった誓約書です。」


その誓約書にはヴィクトリーチェの名前ではなく、ベアトリーチェの名前が記されている。


「どうでしょう。これは婚約破棄に使えますか?」


「ふむ……」


全員の視線が誓約書に落ちる。


誓約書を見つめる家族たちの表情は、少し落ち込んでいるような……なんとも言えない表情だった。


(申し訳ないことをしたわ……)


膝の上に置いている手に無意識に力が入る。


その時――


「よくやったじゃない!!ベル!!これで王妃にならなくてすむわね!!ねぇ、アリス?」


明るく、可愛らしい声が響き渡った。


「お、お母様!?」


次の瞬間、張り詰めていた空気が弾けるように笑い声が広がった。


「ははは、そうだな!!元々向こうから頼まれた婚約だ。可愛い可愛いベルを王族にする気はさらさらなかったんだ。」


「クックク……父上の言う通りだ。ベルがそんな顔をする必要はないんだぞ。」


アリオンの言葉に、ベアトリーチェは自分の顔を触る。


(そんな、変な顔してたかしら……)


「アリオンの言葉を真に受けるな。お前はどんな顔をしていても可愛いんだから。」


「慰めになっていないぞ、アリスター。」


失礼なことを言う兄二人に、ベアトリーチェも目を細めた。


そんな笑いを止めるかのように、ベアトリクスが話を続ける。


「とにかく、あなたが持って帰ってきてくれた誓約書のおかげで、私たちは動きやすくなったってこと。元々今の王妃の派閥は面倒なことが多くて嫌だったのよ。はぁ~すっきりした。」


ベアトリーチェは開いた口が塞がらない。


帰って来たら何かしら言われることは覚悟していたからだ。


「そうと決まれば……早いうちにベアトリーチェを別のところに連れて行った方がいいですね。」


アリスターの言葉にアリステアはこくりとうなずく。


「そうだな……」


どういうことか、話はどんどん進んでいく。


そんな家族たちの話に、ベアトリーチェはついていけないでいた。


「だったら一ついいところがありますよ?ちょっと小難しくて、女嫌いで有名ですが……」


(えっ……)


「あぁ、あいつか。確かにあいつだったらピッタリだな。」


アリオンの言葉に、アリスターが返す。


どうやら兄たちの中では、小難しく女嫌いな人で繋がったらしい。


「えぇ、ベアトリーチェなら間違いなく上手くやるでしょう。」


「そうだな……一旦連絡を入れてみるか。アリオン、仲介を頼めるか?」


(勝手に話が進んでいくのだけど……)


ベアトリーチェが男三人の話についていけずにいると、ベアトリクスがクスッと笑った。


「お母様……」


「あとはあの三人に任せておけばいいわ。私たちはお茶会の続きでもしましょ?」


「……そうですね……」


男たちの話をそのままに、二人は席を移した。


「やっぱり、このアールグレイもいいですが、アッサムティーも美味しいですね。」


「そうね、これならケーキも合いそうだわ。ベルの作ったケーキと合わせてみたいものね。」


「良いですね!近いうちにフェレシアたちを呼んでお茶会をしましょう。」


書斎では男たちがベアトリーチェの将来について頭を悩ませていることなど知らず――


ベアトリーチェたちは、次のお茶会で出すケーキについて真剣に話し合うのだった。

こんばんわ!ゆずこしょうです。


この度はベアトリーチェの物語をお読みいただきありがとうございます( .ˬ.)"


明日より、8:10、12:10、20:10更新予定です✨


よろしくお願いします( .ˬ.)"

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