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偽物扱いで王城を出禁にされた公爵令嬢、辺境侯爵家で自由を満喫します ~いまさら本物だと言われても戻るつもりはございません。~  作者: ゆずこしょう
公爵令嬢、家族会議を開催します。

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壮大な兄弟喧嘩はそろそろ終わりにいたしましょう。

「わたくし、ケルベリオン帝国と条約を結びたいと思っておりますの……」


「……」


突然の宣言に、その場にいた全員の目が点となった。


まるで時間が止まったかのように動きが止まる。


(ふふっ、思った通りの反応ね。)


それからしばらくして――


「はぁぁぁぁ!?!?!?」


誰かの叫び声と共に、全員が動き出した。


「ど、どういうことだ……」


「ベル、わかっているのか!?相手はケルベリオンだぞ……!?」


ケルベリオン帝国とは長年いがみ合ってきた。


そう、この国ができてすぐの頃だから、ベアトリーチェたちが生まれる数百年以上も前から……


何が理由で始まった喧嘩なのか……


おそらく知っているものはほとんどいないだろう。


「えぇ、知っていますわ。ですが、そろそろ兄弟喧嘩には区切りをつけませんと……この国もケルベリオン帝国も変わらなければなりません。」


はるか昔、アルキューネ国と隣国ケルベリオン帝国はアルベリオン帝国という一つの国だった。


その国が別れることになったのはその歳に生まれた双子の存在だ。


兄弟揃って同じ女性を好きになったらしい。


(たったそれだけで、国が分断……しかも末裔まで兄弟喧嘩……バカげているわよね。)


「そこで、わたくしは考えました。ケルベリオン帝国が、今何を望み、何を欲しているか……」


初代アルキューネ国王は、女性を兄に譲る代わりに父王へある事を申し出た。


豊かな土地、水源、そして鉱山だ。


そのおかげでケルベリオン帝国には広大で枯れた土地と、アルベリオン帝国の城が残された。


言ってしまえば欲しい女を手に入れる代わりに、財力は全て弟に取られたということだ。


どっちが良かったのか……


それは日を見るよりも明らかだ。


ベアトリーチェの言葉を聞いて、ルイスがなにか思い浮かんだのかハッとした顔をした。


「この土地が欲しい……という事か。」


「それもあります。ですが、一番欲しいのは……」


「「「欲しいのは……?」」」


アリステアたちはゴクリと唾を飲み込んだ。


その後ろで、ベアトリクスとフェレシア、そしてフェレシアの母であるアリシアは優雅にお茶を飲んでいる。


(家系かしらね……)


ベアトリーチェはチラリとそちらを見てからアリステアに視線を戻した。


「食料と、資源です。」


「わたくしは王城にいる間、ありとあらゆる歴史書を読み漁りました。まぁ、公務以外は暇でしたので、暇つぶし程度だったんですけれど……」


ベアトリーチェは視線を逸らすと、ゆっくり歩く。


それはまるで学校の先生が授業を教える時のように……


「それからファルクナー城に来てから、ケルベリオン帝国の方を見てみたのです。何が見えたと思いますか?」


「まるで別世界に来たのではないかと思うように……土地は痩せ痩け、緑ひとつないだだっ広い平地でした……」


ピクニックの時、バリスタの隙間から見たケルベリオン帝国。


そこは何も無い平地だった。


少し遠くに点々と村が見えたが、活気があるように見えなかったのだ。


それどころか、荒れた匂いが風に乗って飛んできていた。


空は綺麗に澄んでいて繋がっているはずなのに、国が違うだけでこんなにも違うものなのか……


そう思ったのも記憶に新しい。


「そこで、わたくしは考えたのです。」


ベアトリーチェはそこで一旦切るとニコリと微笑んだ。


***


「何を考えたのだ……?」


アリステアはベアトリーチェの次の言葉を待っていた。


正直、ベアトリーチェが突飛なことを言うのは今に始まったことではない。


だが――


今回はスケールが大きすぎる……


そんな気がしていた。


ルイスやレオポルドも同じことを思っているのか、顔色がどんどん悪くなっている。


「直接ケルベリオン帝国に赴いて皇帝とお話をしようと思っているのです。」


(やはりな……)


アリステアは、こめかみをぐりぐり揉む。


最近治まっていた頭痛が今日はやたらと痛んだ。


「ふむ……その……ベルが言いたいことはわかった。だが、そこでなぜ皇帝なのだ?別に村を回って資源を少しあげたり、商会を立ち上げて、ケルベリオン帝国に売り込むこともできるだろう。」


ビジネスの話と言っていたのだ。


こちらから商品を売り込めばベアトリーチェの懐も潤うはず。


それがなぜ……皇帝が出てくるのか。


ギルバートやアリスターたちに至っては、話についていけないと悟ったのか、こちらを見ようとしなかった。


(誰かこいつを止めてくれ……)


そんな時――


「ベル。お前がやりたいことはよくわかった。だがな……お前をケルベリオン帝国に行かせるのは心配だ……おじいちゃんが泣いてもいいのか?」


ルイスはベアトリーチェに近づき、ベアトリーチェの肩を掴むとそのままギュッと抱き締めた。


(これで……少しは落ち着くか……?)


アリステアとレオポルドのため息が重なる。


しかし――


その落ち着きはベアトリーチェの次の一言で簡単に崩れ去った。


「おじい様。泣き落としはやめてください。いい大人がだらしないですわ……」


ベアトリーチェはルイスの胸から体を離すとそのまま話を続ける。


「商会も作りますが、それではケルベリオンが豊かになる保証はありません。わたくしはただ、長く続く兄弟喧嘩のせいで民たちが苦しんでいることを直訴したいのです。」


「わたくしが調査したところ、今の皇帝は話の通じる方と有名です。そして、その手腕も……そこでわたくしは考えたのです。」


ベアトリーチェはルイスの腕の中から抜け出すと、アリステアをチラリと見ると口角を上げた。


「あの地を潤す方法を伝えれば……長く続いた戦に終止符を打つことができるのではないかと……」


「枯れた土地を潤す……そんなことができるのか。」


今まで聞くだけに徹していたギルバートが近づいてくる。


「えぇ……やり方次第ですけれど……ただ、そのためにはこの戦を終わらせ、わたくしたちが力を貸さねばなりません。」


「力を貸すか……」


「そうです。枯れ果てた土地を元に戻すのは簡単ではありません。ですが、そこに時間をかければ、戦に時間をかけることができなくなります。」


ベアトリーチェの言葉に、ギルバートが呟いた。


「……土地を戻すために人員が必要になるから……か?」


ベアトリーチェは胸を張って顔を大きく上下に動かす。


「そういうことです。そして……ゆくゆく……ですがわたくしたちは、ケルベリオン帝国とアルキューネ国のどちらにも属さない、という形を取りたいと思っています。アルキューネの王族はクソですからね。まぁ、レヴィール第一殿下が即位なさると言うなら話は別ですが……それをあの国王や王妃が良しとしないでしょう。」


「なるほど……な。」


「それならいいかもしれないが……どうやって動くんだ……。」


ギルバートの答えに、アリオンが話を続ける。


すると、ベアトリーチェがクスッと笑った。


「手始めにお茶会を開催するのはいかがでしょう。そうですね……一週間後に行うのは……ちょうどいいお茶会が開催されますし……」


ベアトリーチェの言葉に全員が目を見開いた。


「お母様、セイレート城の離れを貸してくださいませ。」


ベアトリクスはベアトリーチェが何をしようとしているのかわかったのか……


飲んでいたカップをテーブルの上に置くとにこりと微笑んだ。


「いいわよ?ただ、料理人はいないけれど大丈夫?」


「ええ、それは大丈夫です。ここから連れていきますので……」


こうして当主であるはずのアリステアは蚊帳の外のまま話はトントン拍子に進んで行ったのだった。

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