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偽物扱いで王城を出禁にされた公爵令嬢、辺境侯爵家で自由を満喫します ~いまさら本物だと言われても戻るつもりはございません。~  作者: ゆずこしょう
公爵令嬢、辺境侯爵家で趣味に没頭することにしました。

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商機を見つけたその裏で、第二王子は勝利を確信していたようです。

「このような感じで切っていただきたいのです。」


ベアトリーチェは細い木の枝を手に持つと、地面に絵を描く。


両端の節を残し、円柱を立てて半分に切る。


カーン、カーン


竹を切る音が城中に響き渡った。


「……こうか?」


「まぁ!!さすがギルバート様ですわ。とても斧が様になっていますわ。」


「そ、そうか……」


ベアトリーチェはギルバートに近付くと、すぐに手元にある竹へと目を移した。


「中を見るまでは信じきれなかったのですけれど……正真正銘竹ですわね。ふふっ……」


ギルバートが切った物を持ち上げると、ベアトリーチェは二人に見せる。


「こうすることで、器のようになるのですわ。」


「なるほど……」


「きちんと処理をすれば防腐効果が増してお弁当を持ち歩くこともできるのです。」


「「お弁当!?!?」」


ギルバートとハンスの声が重なった。


「とは……なんだ……?」


「……え?」


ベアトリーチェは耳を疑った。


(もしかして……お弁当という言葉もない……?)


アルキューネ城にいる時は、第二王子の婚約者に徹していたからか、ここまで違和感を感じることはなかった。


だが――


ファルクナー城に来てからは違う。


スコーン、竹、そしてお弁当……


当たり前に通じると思っていた言葉が、何故か通じないのだ。


(なんとなくは思っていたけど……私が思っている以上に文化が違うのよね。)


ベアトリーチェは皆に通じるように話を続ける。


「えっと……兵糧と言えばわかりますかしら」


そこまで言うとギルバートも理解したのか深くうなずいた。


「それならわかる。」


「そう……」


(やっぱり……)


前世で当たり前だったことが、この世界では当たり前ではないことが多い。


バターや牛乳だってそうだ。


牛は食べるものであって、乳を使おうという概念はなかった。


今まで使われてきたのはココナッツなどの植物由来のものばかりだった。


(これは……)


ベアトリーチェはパンッと手を叩くと、ギルバートたちを見回してから手を高らかに挙げた。


「思った以上に売れるかもしれませんわ!!」


その声はファルクナー城一体に響き渡った。


「俺は何も分かっていないんだが……」


ギルバートの声はベアトリーチェの声によってかき消されたのだった。


***


ドンドンドン!!


「ディオンはいるか!?」


アルキューネ城――


ディオンとヴィクトリーチェが寝台で眠っていると、扉を壊しそうな勢いで誰かが叩いた。


「ん……なんだ……?」


「……うるさいわね……こんな朝早くに……なんだって言うのよ……」


重い瞼を擦りながらゆっくりと体を起こし、近くにあったシーツを手に取って体を隠す。


「開けるぞ!!」


「なんだ、こんな朝早くに。父にも見放された兄上ではないか。」


「そんなことはどうでもいい。早く服を着ろ。」


レヴィールは寝台の方に歩み寄ると、近くにあったカーテンを勢いよく開いた。


真っ暗だった室内に、陽射しが入り込む。


「キャッ!!眩しいじゃない。なにするのよ!!」


ヴィクトリーチェは足元でぐちゃぐちゃになっている布団を持って頭から被った。


(……この期に及んで……)


「チッ……」


レヴィールは小さく舌打ちをすると、控えていた侍女へ視線を送る。


すると、侍女たちは布団ごとヴィクトリーチェを担ぎ上げ、そのまま部屋の外へ運び出した。


「お前もだ。早く準備をしろ。」


「お前?わたくしにはベアトリーチェという名前があるのです。次期王太子になられるディオン様の婚約者にそんな態度とっていいと思っているのかしら?」


布団に包まれて聞こえにくいところもあるが、それでも大きな声を出し続けるヴィクトリーチェにレヴィールは鼻で笑う。


「クッ。それは暫定だろ?まだ何も決まってはいない。ディオンがこの国の王太子になるかどうかについてもな。」


「連れて行け。」


レヴィールは短くそれだけ伝えると、ディオンへと視線を戻した。


「ディオン。お前のことを父上が呼んでいる。それと、朝早い時間ではないぞ。もう昼どころか、夕方になり始めている時間だ。」


ベアトリーチェが居なくなってから一ヶ月――


ベアトリーチェを探すために手を尽くしたが、進展のない日が続いていた。


セイレート公爵家に遣いを送ったり、セイレート公爵が登城した際に声をかけたが一切取り合って貰えず……


ギルバートへ送った手紙の返事も一向にないまま。


(ベアトリーチェに仕事を押し付けていたというのがよくわかるな……)


これまでもディオンの仕事を肩代わりしてきたが……


(よくここまでの仕事量を一人でこなしてきたもんだよ……。)


それを誰も評価しようとしない。


それどころか、未だに目の前にいる女をベアトリーチェと信じている始末。


(父上は気づいているようだが……)


「レヴィール。お前に指図されるいわれは無いはずだ。私が何をしようと勝手だろう。」


レヴィールはどす黒い衝動を隠すように一度深呼吸をすると、目の前に座る男を見下ろした。


「父上が呼んでいる。お前と、ベアトリーチェ嬢のことをな。」


「それがどういう意味か……少しは考えた方がいい。」


その言葉を聞いた瞬間――


ディオンは立ち上がると、レヴィールに視線を合わせてニヤリと笑った。


(これは勘違いしたか……)


「ククッ……そうか……そうか……ついにこの時が来たか!!」


ディオンはわざとらしくレヴィールの肩を叩くと、耳元で誰にも聞こえないほど小さな声で言い放った。


「ククッ……残念だったなレヴィール。お前は私に勝てなかったようだ……ククッ……私が王太子になる姿を楽しみにしておくんだな……まぁ、お前の居場所はここに無くなるだろうがな……ククク」


「……」


「何も言い返せないか……」


「……着替え終わったらこい。」


レヴィールはそれだけ伝えるとその場を後にした。


レヴィールが居なくなった部屋からは、ディオンの笑い声が響き渡っていた。

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