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偽物扱いで王城を出禁にされた公爵令嬢、辺境侯爵家で自由を満喫します ~いまさら本物だと言われても戻るつもりはございません。~  作者: ゆずこしょう
珍獣令嬢と辺境侯爵令息。

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14/21

王妃様は気づかない。

「来週のお茶会だけど、リーチェも来るわよね?」


「もちろんですわ、お義母様!」


アルキューネ国王城――


ヴィクトリーチェはエリザベート王妃と向かい合っていた。


目の前にはたくさんのドレスと宝石。


「ふふっ。そう言ってくれると思っていたわ。あなたも王族になるのだから、好きなドレスと宝石を選びなさい。」


ヴィクトリーチェはたくさんの宝石を前に目を輝かせる。


(ベアトリーチェはこれを独り占めしていたのね……)


「ありがとうございます。お義母様!大好きです。」


ヴィクトリーチェはエリザベート王妃に抱きつくと、エリザベートに見えないようにほくそ笑んだ。


(ふふっ……これからは全て私のものよ……)


「あらあら、今まで一度もそんなこと言ったことないじゃない。なんだか人が変わったみたいね。」


エリザベートは抱きついたヴィクトリーチェの背中を軽く撫でた。


「……そんなことないです。今までは……その……どうしていいか分からなかったのです。エリザベート様は王妃様でもありますし……」


ヴィクトリーチェは困ったように視線を伏せ、小さく肩を竦めた。


その姿は、まるで今まで遠慮していただけの令嬢にしか見えない。


エリザベートはそんなヴィクトリーチェの様子に驚いたように瞬きをすると、すぐに愛おしそうに微笑んだ。


「まぁ、可愛い子。もっと早く話しておけばよかったわね。」


エリザベートはヴィクトリーチェの頬に手を添えると、ヴィクトリーチェの目を見る。


「なんだか、前より少し目元も穏やかになった気がするわ。」


「それはお義母様と距離が縮まったからだと思いますわ……王城にずっといるのは……その……」


ヴィクトリーチェは言葉を詰まらせると、どこか怯えるように視線を揺らした。


「少し、息が詰まりますし……」


二人の間に重苦しい静寂が落ちる。


刹那――


「ベアトリーチェ……」


エリザベートは痛ましそうに眉を寄せた。


(クスッ……本当に気づいていないのね。ディオンもディオンだけど……この王妃も王妃だわ……)


(まぁ、一番のバカはベアトリーチェだけど……)


ベアトリーチェがディオンの婚約者になってから、ずっとこの日を待っていた。


夜会やお茶会に参加するのを我慢し、ベアトリーチェがいない時を狙って、本人のように振る舞いながら参加する。


ディオンがベアトリーチェに興味がないことを知った時はチャンスだと思ったほどだ。


(ふふっ。こんな上手くいくなんて思ってなかったけど……)


ヴィクトリーチェはエリザベートの肩に顔を預けると、エリザベートのドレスの裾をわざとらしくギュッと握る。


「そ、そうよね、分かるわ……ごめんなさい。これからは一緒に色々しましょ?まずは手始めに……」


エリザベートはヴィクトリーチェの肩をもう優しく撫でると、顔をあげるよう促した。


そして、後ろに並んでいるたくさんのドレスを指さす。


「あなたに似合うドレスと宝石を選びましょ?そのあとはあちらの庭園でゆっくりお茶なんてどうかしら?」


「ありがとうございます。とても嬉しいです。ドレス……もし良ければお義母様が選んでくれませんか?」


ヴィクトリーチェは顎を少し下げて上目遣いでエリザベートを見ると、王妃は微笑んだ。


「ええ、もちろん。ずっと義娘が欲しかったの。あなたにぴったりのドレスを選ぶわね。」


エリザベートは楽しそうにドレスへ視線を向ける。


その姿を見ながら、ヴィクトリーチェは心の中で静かに笑った。


***


「レヴィール、気づいているか?お前の弟、好き勝手やってるぞ?」


「オスカー……いつもノックしろって言ってるだろ?」


アルキューネ城の東棟の一室――


レヴィールが山積みの書類へ視線を落としていると、側近の一人オスカーがノックもせずに入ってきた。


「すまんすまん……」


「いい加減、その言葉遣いどうにかなりませんか?聞いていて耳障りです。」


「なんだと……!?」


「まぁまぁ、今はそんなことで喧嘩してる場合じゃないでしょ?それより……いい情報を持ってきた。」


「サイラス……とルカも一緒か……。」


オスカーの後ろからサイラスとルカも姿を現すと、それぞれ自分の定位置に腰を下ろした。


「それで?いい情報とはなんだ?」


「俺の話は無視か?」


レヴィールは書類から顔をあげることなく、ルカに話すよう促した。


「オスカーの話は、話というよりもただの現状報告ではないですか。そんなのこの場にいる全員が知っていますよ。」


「お前なぁ……また、そうやって人をバカにしやがって!」


オスカーが眉を吊り上げると、隣に座っていたルカが苦笑しながら肩を竦めた。


「はいはい、二人とも落ち着いて。サイラスは昔から言い方きついんだから、もう少し優しくできないの?」


「これも優しさですよ。第一王子の側近が阿呆だと分からないようにするために必要なことなんです。」


「なんだと!?」


「あぁ~、はいはい。それ以上煽らないの。」


ルカは今にも立ち上がりそうなオスカーを押さえながら、助けを求めるようにレヴィールへ視線を送った。


(……また始まったか……)


「サイラス……お前は言い過ぎだ。オスカーも……静かにできないならここから出ていけ。」


「「……」」


レヴィールは二人が静かになったのを確認すると、ルカへ視線を向けた。


「それで?いい情報とはなんだ……」


ルカは、カップの中にミルクを入れるとスプーンをクルクル回す。


そして、一口飲んでからゆっくり話し出した。


「ディオンの婚約者が……偽物だったらしい……」


「「「……は?」」」


ルカ以外の声が重なる。


一瞬、誰も言葉を発せなかった。


「……偽物……?」


レヴィールは何とか言葉を発すると、ルカは報告書を取り出し机の上に置いた。


「そう……この間あったお茶会で、ベアトリーチェ嬢が二人現れたらしい。まぁ……前から噂にあった女が原因だろうけどね。」


前から噂にあった女――


(ベルが参加しないときに現れるというあの女か……)


フェレシアが話していた事を思い出す。


『最近、ベアトリーチェの良くない噂が流れてるのよ。』


『よくない噂……?』


『そう……呼んでないはずのお茶会に顔を出しては、威張り散らかして暴れ回るって……まぁ、ベルがそんなことするとは思ってないんだけど……』


フェレシアだけは、一度もベアトリーチェを疑わなかった。


(……だから、俺たちも疑わなかったんだよな……)


レヴィールは拳を軽く握り締めた。


ベアトリーチェの様子は、いつもと何も変わらなかった。


なんなら優雅にお茶を飲んで楽しんでいたくらいだ。


まるで――


自分には関係ないかのように……


だからこそ、誰も気づけなかった。


(……あの時、フェレシアはなんと言っていた……?)


『実は、ベルによく似た従姉妹がいるのよ。別に隠してるわけではないのだけど……何故かベルがいると顔を出さないのよね……』


「ルカ、そいつの名前はわかるのか……?」


「それが……リーチェって名前なのはわかるがそれ以上は出てこないんだよ。」


(誰かが意図的に隠しているということか……)


レヴィールは目を閉じ、深く息を吐き出した。


そして、静かな声で指示を出す。


「サイラス。セイレート公爵家へ連絡を。何かわかるかもしれない。ルカは王城にいるベアトリーチェの様子を探れ。オスカーは……」


部屋の空気が一気に張り詰める。


先ほどまで騒いでいたオスカーでさえ、今は真面目な顔でレヴィールを見ていた。


「……俺は?」


「……いつも通り過ごしてくれ。」


オスカーは不満そうに眉を寄せたが、それ以上は何も言わなかった。

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