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辺境魔法学校 作者:金暮 銀
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第八章 神宮寺それは矛盾に満ちた存在(一)

 土曜日だが、剣持は職員室にいた。剣持が日常会話でもするかのように、試練の内容を気楽に話してきた。

「力試しの内容を教える。誰でもいい、人を一人、殺すことだ。辺境魔法学校は卒業までに人を一人、殺させる方針にしている。ターゲットにしたい人間がいるなら、知らせてくれ。一般人ならまだしも、政治家や外交官となると、許可できない。ターゲットの指定がないなら、学校か、札幌の呪い屋同業組合が斡旋するが、どうする」

 辺境魔法学校は、やっぱり狂っている。魔道師が法に縛られないからといって、卒業までに人を一人、殺させるなんて、異常だ。
(俺に、斡旋された無関係な人間を殺せるだろうか? 無理だろう)

 神宮寺は一人だけ気になる人物を思い出し、卒業までに決着を付けようと思って頼んだ。
「ターゲットの探索をお願いできますか。探して欲しいのは、蒼井さんの姉です」

 剣持は神宮寺の言葉に全く動じなかった。ただ、教師として事務的に答えた。
「蒼井の姉が一人なら、願書に書いてあった住所と生年月日から、戸籍を調査して、姉の住民票を取れば、一発で住所がわかる。辺境魔法学校の調査網を使えば、問題なくすぐ判明する。ちょっと待っていろ」

 剣持は職員室から、どこかに内線電話を掛けてから、椅子に座り直した。
「なぜ、お前が蒼井の姉をターゲット指定したかについては、聞かない。おそらく、一般人だから問題もないだろう。だが、殺せるのかお前に?」

「わかりません。でも、蒼井さんは生前、姉に復讐したいとい言っていました。蒼井さんは、もういません。だったら、俺が会って決着を付けなきゃいけない気がしたんです」

 剣持は良い顔をしなかった。
「人は死ぬし。俺たちは様々な理屈を付けて人を殺す。だが、死んでいった人間に勝手に思い入れを一々抱くのは、感心しないな」

 神宮寺は剣持の説教を聞きたくなかったので話を逸らした。
「剣持先生の話はわかりました。あと、俺は特別演習に参加します。ところで、特別演習の件ですが、魔法先生を殺しても、協力者や関係者には危害が及ばないのは間違いないですよね」

 剣持が苦い顔で言葉を発した。
「魔法先生に確認したら。魔法先生を殺しても誰にも危害を加えないと、笑って認めたよ。ところで、お前、赤虎図書館長と組んで何かやらかそうとしているんじゃないだろうな」

 神宮寺は本音を隠して、半分は嘘の言葉を告げた。
「嫌ですよ、剣持先生。赤虎図書館長には、早く立派なウトナピシュテヌになれるようにと助言を頂いているだけですよ。剣持先生が心配するような行為は、何もしていません」

 次いで、半分は本音のお願いをした。
「魔法先生がまだお帰りになっていないので、直接お願いできないのですが、剣持先生から頼んでいただきたい件があります。もし魔法先生相手に充分な実力を示せたら、小清水さんと蒼井さんを帰してもらい、二人をきちんと葬ってあげたいんですが、頼めますか」

 神宮寺は小清水さんと蒼井さんを取り戻したかったので、あえて「勝てたら」ではなく「充分な実力を示せたら」と言い換えておいた。

 剣持の顔が一瞬、むっと険しくなった。だが、どこか諦めたように先生の顔に戻った。
「いいだろう。魔法先生に話を付けてみよう」

 魔法先生を怒らせてしまえば、十人目が誕生した今となっては、ウトナピシュテヌといえども、消されるかもしれない。だが、剣持を証人としておけば、怒らせるほどの実力を発揮させたのだからと、剣持が最後の願いを聞いてくれるかもしれない。

 死ねば神宮寺は無価値なので、剣持は何もしてくれないかもしれない。けれども、神宮寺は剣持の甘さに期待した。

 神宮寺自身でも思う。こういう人の善意に漬け込むのは卑怯であり、神宮寺は卑怯なことができる人間へと、辺境魔法学校で成長した。
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