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助ける巫女と拒む巫女(11)

 凜々果《りりか》は剣の切っ先を陽向に受けたまま、不敵に笑っている。


「手も足も出ないって感じじゃないっしょ。同じ攻撃はもう通じないって顔してるんですけど。でもさー、あなたの刀はこの剣には勝てないよん」


 凜々果は、再び剣を斜めに振り下ろす構えを取った。


(この巫女、私を試そうとしている……? まるで何かの試験でもしているかのような余裕)


 陽向《ひなた》が紅雷《こうらい》の柄を肩に担ぐように深く構え直した。


(なーんのつもり? 今までと構え違うんですけど。……へぇ、目つきマジになっちゃって、ウケる。最高じゃん)


 凜々果が剣を振り下ろすと、再び強烈な風の刃が巻き起こった。先ほどは烈風に包まれ、花弁と共に切り裂かれた陽向であった。だが今の陽向の目は、刃の軌道と空気の流れをすべて見切っていた。身を切り裂く暴風を、自らの神気で真っ向から迎え撃つ。


「華炎陣《かえんじん》!」


 紅雷を地面に突き刺すと、烈火の火柱が真っすぐ天へと突き抜けた。


 陽向の身体ごと巻き上げようとした風の刃は、一瞬にして打ち消され、無風の状態へと帰した。周囲を覆っていた桃の花弁も、業火に包まれて灰へと変わる。


(えっ、なに、ヤバ……! 業火の熱量で周りの空気を一気に吸い込んで……この剣の暴風を相殺したの⁉ プラマイゼロってわけ? マジ面白いんだけど!)


 凜々果が白い歯を見せて八重歯を覗かせたその瞬間、炎の壁を割って紅の閃光が襲い掛かってきた。


「また来たぁ! 何とかの一つ覚えでしょー」


 大剣で紅の光の刃を薙ぎ払おうと振り下ろしたのと同時に、爆炎の中から陽向の姿が踊り出ていた。


(っ、うそ……光はブラフ⁉)


 陽向の『紅雷』と凜々果の『草薙剣』がガキィッ! と激しい火花を散らし、つばぜり合いの体勢で向かい合う。


「あたしに近づけさせないはずの攻撃だったんだけど? 間合いに入るなんて、お前も人じゃないっしょ!」


 瞳を白銀に光らせた凜々果が、邪気と神気を混ざり合わせた凄まじい威圧感で陽向と顔を突き合わせる。陽向もまた、眼光を鋭く燃やして紅雷で凜々果を押し返していく。


「こんな刀じゃ、あたしは押さえきれないよ!」


 草薙剣が眩しい白銀の光を放つと、その衝撃波で陽向の身体は弾き飛ばされ、後方へと大きく放り投げられた。


「紅一閃《くれないいっせん》!」


 弾き飛ばされるその刹那、陽向は限界を超えた最速の一閃を解き放っていた。


 着地し、膝をついて顔を上げた陽向の視線の先には、右頬から微かに血を滲ませ、目を丸くしている凜々果が立っていた。


「ほう……。あなたも、人だったのね。安心しました」


 陽向がニヤリと不敵に笑ってみせた。



 一方、少し離れた場所では、霞が聖良という少女と向かい合い、肩を激しく上下させて息を切らしていた。

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