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灰銀の戦乙女は、制服を知らない  作者: 最後に残った形


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第11章 第11話:冷える銀環


 冷えは、音もなく深くなった。


 北棟第二保管層の扉の奥で、銀色が震えている。


 さむい。


 でも。


 その二つの文字は、黒い膜に何度も覆われながら、完全には消えなかった。


 王都中央鐘は、まだ余韻を残している。


 十度目の鐘が鳴ってから、倉庫群全体の札は黒く光り続けていた。


 臨時保護令。


 関連対象の保護拘束。


 外部関係線の遮断許可。


 第二保管層、冷却強化。


 その最後の一文が出てから、扉の前の空気は明らかに変わった。


 冷たい。


 朝の外気ではない。


 石畳から這い上がるような、黒布に似た冷え。


 呼吸をすると、肺の中に薄い霜が入るようだった。


 リゼ・グレイスは扉の前に立ち、右手を開いて握った。


 握力、実用範囲。


 右腕冷却感、継続。


 身体異常、現時点では行動継続可能。


 感情、怒り、恐怖、焦燥。


 判断、維持。


 自分の状態を確認する。


 その後で、扉を見る。


 アルト・レインフォードは、もっと冷えている。


 黒布の中。


 第二保管層の中。


 声が出ない場所で。


 彼は「さむい」と返した。


 そして、「でも」と続けようとした。


 その先を、こちらが勝手に決めてはいけない。


 リゼはそう記録した。


 それでも、胸の奥が叫びたがっている。


 助けたい。


 今すぐ開けたい。


 扉を壊したい。


 だが、壊せばアルトの銀環が鳴るかもしれない。


 鐘を鳴らすな。


 白い警告は、まだ扉に浮かんでいる。


 黒い臨時保護令の文字に押し潰されかけながらも、残っている。


 カイ・ロックハートが、扉の前で震える息を吐いた。


「寒くなってる」


 クラウス・ヴァイゼルが測定具を見て頷く。


「冷却反応、上昇継続。ただし急激な暴走ではありません。黒蔦層が段階的に冷却を強めています」


「段階的って何ですか」


「外部の声に反応させないよう、内部をさらに沈めている」


 カイの顔が歪んだ。


「沈めるって、アルトを?」


 クラウスはすぐに訂正した。


「アルト君の反応を、です。いえ、正確には、アルト君自身の状態にも影響が出ています」


 カイは唇を噛みそうになり、やめた。


「寒いのを、反応って言うなって言いたいです」


 クラウスは目を伏せた。


「その通りです。言い方を訂正します」


 ミリア・ファルネーゼが記録板を抱えながら言った。


「今は、励ます言葉より状態確認の方が届くわ」


 カイが振り向く。


「頑張れ、じゃ駄目ですか」


「駄目ではない。でも、アルトさんは今、声が出ない。寒い。位置もわかりにくい。そんな時に“頑張れ”だけだと、何を頑張ればいいのかわからなくなるかもしれない」


 カイは扉を見た。


 さむい。


 でも。


 黒い膜の下に残る文字。


「じゃあ、何を言えばいいですか」


 ミリアは静かに答えた。


「ここにいる。聞いている。寒さを確認している。返事を急がない。それを伝える」


 カイは頷いた。


「わかった」


 エリアナ・ルクス・ヴェルグラントは香草袋を胸の前で握っていた。


 香草の匂いは、冷気に押されて薄くなっている。


 けれど、完全には消えていない。


 セリーネ草の乾いた甘さ。


 焼いた時の苦味。


 戻るための匂い。


 エリアナは扉を見つめる。


「香草の反応も弱くなっています」


 クラウスが頷く。


「冷却層が匂いの伝達も鈍らせています。ただ、完全に遮断はされていません」


 リゼが言う。


「香草を強めることは可能ですか」


 エリアナは一瞬考え、首を横に振った。


「袋を開けば香りは強くなります。でも、今それをすると、香草が道具として切り離されやすくなるかもしれません」


 ミリアが頷く。


「あなたのものとして持つ、という条件を崩さない方がいいわ」


「はい」


 エリアナは香草袋を胸に当てる。


「短く、近づけます。置きません」


 オルド・ハイマンは、臨時保護令の写しを見つめていた。


 その紙は黒く冷えている。


 王宮正式印と三点印。


 二つの印が、王都中央鐘に反応したまま鈍く光っていた。


 オルドは絞るように言った。


「冷却強化は、生命状態確認なしに行う処理ではありません」


 カイが鋭く見る。


「じゃあ、止めてください」


「止める権限は、現時点で私にはありません」


「じゃあ何ができますか」


 言い方はきつかった。


 だが、カイはもう、怒りだけでぶつけていない。


 必要なことを聞いている。


 オルドは警告文を折らずに保護板へ固定した。


「監察局の緊急封筒で、臨時保護令への異議を出しました。加えて、現場で冷却強化による生体影響の危険を記録します。王宮兵にも現認者として署名を求める」


 カイは一瞬黙った。


「紙ですか」


「紙です。ですが、今、紙を敵だけに使わせるわけにはいきません」


 ミリアが小さく頷いた。


「正しい記録を増やすのも必要よ」


 リゼは扉から目を離さずに言った。


「紙が本人の代わりになってはいけません。ですが、本人の声を消さないための記録は必要です」


 オルドは頷く。


「はい」


 扉の前に、王宮封印管理兵セイル・ハルトが立っていた。


 彼は先ほど、扉に浮かぶ「ここ」と「なまえ」を現認した。


 王宮命令を受けている兵でありながら、現場の事実を自分の名前で記録した。


 今も、顔色は悪い。


 だが逃げてはいない。


 オルドは彼へ向き直る。


「セイル・ハルトさん。第二保管層扉に表示された銀色文字、および冷却強化後の扉前冷気上昇を現認しましたか」


 セイルは扉を見た。


 黒膜の奥に残る銀色。


 臨時保護令。


 冷たい空気。


 彼は頷いた。


「現認しました」


「現認者として記録に署名できますか」


 セイルは一瞬ためらった。


 王宮兵としての命令。


 目の前で見た現実。


 その間で、彼の喉が動く。


 やがて、彼は言った。


「できます」


 ミリアが記録板を差し出す。


「名前は、セイル・ハルトさんでよろしいですね」


「はい」


 彼は自分の名を書いた。


 分類ではなく、名前。


 王宮封印管理兵という肩書きも添えた。


 だが、先に書かれたのは名前だった。


 その瞬間、北棟扉の黒膜が微かに揺れた。


 クラウスが測定具を見る。


「外部現認者追加に反応。黒蔦層、微弱剥離」


 カイが扉へ向かって言った。


「アルト。セイルさん、また見たって書いたぞ。寒いのも、ちゃんと見たって」


 銀色が、黒膜の奥でかすかに揺れる。


 しかし、すぐに沈む。


 冷却が強い。


 リゼが言った。


「状態確認呼びかけを行います。短く。返答を急がせない」


 ミリアが時計を見る。


「今なら大丈夫。黒蔦抑制、上がりきっていない」


 リゼは一歩前へ出た。


「アルトさん。リゼ・グレイスです。状態確認を行います。痛み、熱、冷え、声。あなたは“さむい”“でも”と伝えました。続きを無理に返さなくていいです。冷えを確認しています。あなたの寒さを安定とは呼びません」


 少し間。


 カイが続ける。


「アルト。カイだ。俺はここにいる。返事しなくていい。でも、名前は呼ぶ。アルト」


 ミリア。


「ミリアです。声が出ない状態を確認しています。怖いなら怖いままでいい。寒いなら寒いままでいい。返事をしようとして苦しくなるなら、返さなくていいわ」


 エリアナが香草袋を少しだけ近づける。


「エリアナです。香草を短く届けます。これは戻るための匂いです。あなたを動かす鍵ではありません」


 オルドが続ける。


「オルド・ハイマンです。臨時保護令による冷却強化に異議を申し立てています。あなたの状態を確認せずに保護と呼ぶことを認めません」


 クラウス。


「クラウス・ヴァイゼルです。外部から銀環を鳴らしません。冷却を記録しています。黒蔦層のみに対処します」


 最後に、リゼが短く言う。


「あなたは一人ではありません」


 沈黙。


 扉の奥で、銀色はすぐには返らない。


 カイの喉が動く。


 もう一度呼びたい。


 でも、待つ。


 ミリアが小さく手を上げ、全員が沈黙を保った。


 五秒。


 十秒。


 黒い膜が冷たく揺れる。


 臨時保護令の文字が、扉の表面を覆おうとする。


 冷却強化。


 外部関係線の遮断。


 保護拘束。


 その黒文字の下で、ほんの小さな銀色の点が浮かんだ。


 一つ。


 消えかける。


 次に、もう一つ。


 それは文字にならない。


 カイが息を止める。


 リゼは言った。


「反応確認。無理に文字化しなくていいです」


 銀色の点が震えた。


 そして、短い線になる。


 さ。


 その一文字だけが浮かんだ。


 ミリアが記録する。


「“さ”表示」


 カイが顔を歪める。


「寒いの“さ”かな」


 リゼはすぐに言う。


「断定しません。ただし、先行表示“さむい”との関連可能性。アルトさん、冷えを確認しています。続きを返さなくていいです」


 扉の奥で、銀色が少しだけ揺れる。


 それから、別の場所に短い線。


 こ。


 エリアナが息を呑む。


「こ……」


 ミリアがすぐに書く。


「“こ”表示」


 カイが言いかける。


「声の“こ”?」


 リゼは言った。


「断定しません。“こえ”または“ここ”との関連可能性。アルトさん、声がない状態、現在地表明、どちらも確認済みです。無理に続けなくていいです」


 銀色は弱く震えた。


 それ以上、文字は続かなかった。


 だが、「さ」と「こ」は消えない。


 黒蔦が覆おうとする。


 白い警告が、その上からかすかに光る。


 鐘を鳴らすな。


 まるで、アルトにこれ以上無理に反応するなと言っているようだった。


 クラウスが測定具を見る。


「冷却、わずかに低下。リゼさんが断定せず、返答停止を許可した後に、負荷が下がっています」


 ミリアが頷く。


「続きを求めないことが大事なのね」


 リゼは扉を見つめた。


「本人が返せない部分を、外部が勝手に完成させない」


 エリアナが静かに言う。


「名を呼ぶ声が名を奪うのは、そういう時かもしれません。こちらが欲しい答えを押しつけた時」


 カイは拳を緩めた。


「俺、今、寒いの“さ”って決めつけそうになった」


 ミリアが優しく言う。


「気づいたなら、もう違うわ」


 カイは頷いた。


「うん。次、気をつける」


 その時、扉の黒膜がまた厚くなった。


 臨時保護令の文言が更新される。


 対象反応低下確認。


 冷却強化継続。


 外部声刺激、抑制対象。


 カイが顔を上げる。


「声刺激って、俺たちの声か」


 クラウスが頷く。


「はい。臨時調整室枠が、外部の声を抑制対象として認識しています」


 ミリアが言う。


「声そのものを危険分類にしたのね」


 エリアナの声が冷える。


「静けさと声を奪うことは違う、と何度言っても、向こうは声を危険にする」


 リゼは扉へ向かって言った。


「アルトさん。外部の声が抑制対象と表示されています。しかし、私たちは声をあなたを動かす鍵として使いません。本人確認として使います。声を危険分類にすることを認めません」


 黒い膜が波打つ。


 その奥で「こ」が細く光った。


 リゼは続ける。


「声が出ないことを確認しています。聞こえる場合も、無理に返さなくていいです。聞こえない場合も、確認を継続します」


 カイが言う。


「アルト。声が危険とか言われても、俺はお前の名前を危険にしない。名前は、お前を戻すために呼ぶ」


 ミリアが続ける。


「声を切らさない。でも、押しつけない」


 エリアナが香草袋を握る。


「匂いも同じです。導くためであって、動かすためではありません」


 扉の奥で、銀色が微かに揺れた。


 その揺れは、小さい。


 弱い。


 けれど、まだある。


 ユリウスが新しい伝達文を受け取った。


 管理棟から来た連絡役は、走りながら顔を強張らせていた。


 彼は息を整え、文面を復唱する。


「学園長より返答。王宮臨時保護令を本校は受諾しない。アルト・レインフォード本人意思確認が未実施である限り、保護移送完了を認めない。リゼ・グレイス、ミリア・ファルネーゼ、カイ・ロックハート、エリアナ・ルクス・ヴェルグラントの不当な保護拘束要求を拒否。学園関係者の安全確保班を王都外縁へ派遣」


 カイの顔が少しだけ明るくなる。


「学園長……!」


 ミリアが目を伏せ、すぐに記録する。


「学園、臨時保護令受諾せず。不当拘束要求拒否」


 リゼは扉へ向けて言った。


「アルトさん。王立学園は、あなたの保護移送完了を認めていません。本人意思確認未実施を理由に拒否しています。私たちへの保護拘束要求も拒否されました」


 扉の銀色が、少し強く光った。


 カイが続ける。


「学園も、終わってないって言ってる!」


 ミリアが即座に補う。


「短く」


 カイは頷き、言い直した。


「学園も、確認を続ける」


 銀色は沈まなかった。


 クラウスが測定具を見る。


「冷却、さらにわずかに低下。外部承認ではなく、本人確認継続の保証に反応している可能性があります」


 オルドが低く言う。


「臨時保護令と逆の記録を、学園が公式に出した。これは大きい」


 ユリウスが頷く。


「王宮側は無視できません」


 その時、王都中央鐘の余韻が再び強くなった。


 実際に鐘が鳴ったわけではない。


 だが、命令網を通じて新しい同期が走るように、黒い振動が倉庫群の札を震わせた。


 扉の臨時調整室枠が光る。


 黒文字が浮かぶ。


 学園側異議、反逆的抵抗として記録。


 関係維持者、拘束優先度上昇。


 リゼの視線が冷たくなる。


「学園の異議を反逆的抵抗として処理しています」


 オルドが唇を引き結ぶ。


「中央記録局を押さえられている可能性が高い」


 ミリアが言う。


「私たちの言葉が届くほど、向こうも分類を強める」


 ロウ教師が短く言った。


「だからこそ、言葉を崩すな」


 リゼは頷く。


「はい」


 扉の奥で、銀色の「さ」と「こ」がまた揺れる。


 消えそうになっている。


 リゼは今すぐ呼びたい衝動を抑え、ミリアを見る。


 ミリアは時計を確認した。


「少し待って。黒蔦抑制が強い」


 待つ。


 冷える扉の前で、待つ。


 その待つ時間が、リゼには剣を振るうより難しかった。


 剣なら振れる。


 敵なら斬れる。


 しかし、ここでは斬ってはいけない。


 斬れば、アルトが鳴るかもしれない。


 リゼは自分の青いリボンに触れた。


 ミリアが結び直してくれた、戻るための目印。


 リゼ自身が、戦場へ戻らないための目印。


 彼女は息を吸う。


 吐く。


 待つ。


 やがて、ミリアが頷いた。


「今」


 リゼは扉へ向かう。


「アルトさん。状態確認を行います。先ほど“さ”“こ”を確認しました。続きを求めません。冷え、声、現在地のいずれに関する反応であっても、私たちは確認済み事項として扱います。あなたを外部確認不要とは扱いません」


 カイ。


「アルト。俺はここにいる。返事なくても名前を呼ぶ。アルト」


 ミリア。


「返事をしないことも、今は選んでいいわ。返せないことを同意にしない」


 エリアナ。


「香草を短く届けます。戻る匂いです」


 オルド。


「学園側異議を反逆として処理する記録に異議を申し立てます。本人確認は反逆ではありません」


 クラウス。


「冷却の変化を記録しています。銀環を鳴らしません」


 扉の黒膜が揺れた。


 銀色がゆっくり浮かぶ。


 今度は文字ではなく、線。


 それは「さ」と「こ」の間を繋ぐように伸びた。


 そして、震えながら形を作る。


 こえ。


 「こ」から始まり、最後に「え」が薄く残る。


 ミリアが息を呑む。


 カイが両手を握る。


 リゼはすぐに言った。


「“こえ”を確認しました。声が出ない、または声が届かない状態を継続確認します。アルトさん、無理に声を出さなくていいです」


 銀色が消えかける。


 その隣に、もう一つ。


 さむ。


 最後の「い」は出ない。


 リゼは続ける。


「“さむ”を確認しました。冷えを継続確認します。“い”を無理に返さなくていいです。あなたの寒さを安定とは呼びません」


 クラウスが測定具を見る。


「冷却、やや低下。黒蔦層、反発準備」


 ミリアが言う。


「止めましょう。今は届いた」


 リゼは頷いた。


「アルトさん。反応を確認しました。次の呼びかけまで休んでください。私たちはここにいます」


 カイが小さく言う。


「休めよ、アルト。俺、いなくならないから」


 エリアナが香草袋を胸に当てる。


「匂いを残します。置きません。持っています」


 銀色はゆっくり沈んだ。


 黒膜が再び覆う。


 だが、「こえ」と「さむ」の痕は、完全には消えない。


 その時、扉の白い警告の下に、別の白い線が浮かんだ。


 古い文字。


 エリアナが目を見開く。


「また白鐘文字です」


 クラウスが光を調整する。


「読めますか」


 エリアナは震える息で読み取る。


「……扉へ、走るな」


 北棟前に沈黙が落ちた。


 鐘を鳴らすな。


 扉へ走るな。


 白鐘の禁句が、二つ目まで現れた。


 カイは唇を引き結ぶ。


「走るなって……」


 ミリアが静かに言う。


「急いで開けるな、ということね」


 エリアナは頷いた。


「はい。扉そのものへ向かってはいけない。名を呼ぶ声が、名を奪うから」


 リゼは扉を見る。


 アルトは寒い。


 声がない。


 冷却強化されている。


 だが、白鐘はまた警告している。


 走るな。


 リゼは静かに言った。


「確認しました。扉へ走りません。アルトさんを鳴らしません」


 カイが自分の足を見る。


「俺も、走らない。必要な時だけ走る。扉には突っ込まない」


 ミリアが頷く。


「それでいいわ」


 扉の奥で、銀色がかすかに揺れた。


 その揺れは、弱いが穏やかだった。


 王都中央鐘の黒い余韻はまだ続いている。


 臨時保護令は王都へ広がっている。


 冷却強化は止まっていない。


 しかし、北棟第二保管層の扉の前で、彼らは走らなかった。


 鳴らさなかった。


 断定しなかった。


 声を切らさなかった。


 リゼは扉へ向けて、最後に短く言った。


「アルトさん。あなたの声と冷えを確認しました。続きを求めません。私たちは、ここにいます」


 黒い膜の奥で、銀色が一度だけ小さく光った。


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