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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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『夜風とランタンと、ふたりの帰り道』

 レベリスの町に夜が降りた。

 昼の喧騒がようやく静まり、

 石畳を撫でる風の音だけが残っている。

 《前借亭》の営業を終え、

 カケルとルシアナは店の前でゆっくりと歩き出した。

「……なんか、久しぶりの“普通の夜”だな」

「そうね。今日だけは、誰も世界を壊しに来なかったわ」

「いや、その基準どうなんだよ」

 ふたりは笑い合った。

 店先のランタンは、

 いつもより少し強めに揺れていた。

 

 ◇


「ねぇ、カケル」

「ん?」

「あなたは……怖くなかったの?

 神界で、最後のあの戦い。

 全部を背負って、たったひとりで核の中まで行って……」

「怖かったに決まってんだろ」

 カケルは苦笑する。

「正直……途中で“これ無理だな”って思ったし」

「あなたでも、そう思うのね」

「そりゃあな。

 俺は最強でも何でもない。

 ただの、サラリーマン上がりだし」

「でも……あなたは、誰より強かったわ」

「強かったんじゃなくて……」

 カケルは夜空を見上げた。

「……みんなが、強さをくれたんだよ」

 ルシアナはその横顔を静かに見つめる。

 

 ◇


「ねぇ、カケル。ひとつ聞いてもいい?」

「お、なんだよ。珍しいな」

「あなたは……後悔してない?

 この世界に召喚されてからのこと」

「後悔?」

(……後悔なんて……

 昔なら山ほどあったけどよ)

 カケルはゆっくりと答えた。

「後悔、してないよ」

「……本当に?」

「ああ。本当にだ」

 ──ルシアナが小さく息をのむのが分かった。

「召喚されたおかげで、俺は“感情”を取り戻した。

 お前に出会って……

 仲間ができて……

 この町ができて……」

「……カケル」

「もし召喚前の俺に会えるなら……

 “お前はこれから最高の人生になるぞ”って言ってやるわ」

 ルシアナは立ち止まり、

 少しだけ俯いた。

「……そんなふうに言われたら……

 私、また泣いちゃいそう」

「泣くなよ。帰り道で泣くんじゃねぇ。

 俺の肩が濡れるだろ」

「濡れたら……拭けばいいじゃない」

「それもそっか」

 ふたりはまた歩き出した。

 

 ◇


 町外れの橋の上に来た頃──

 星がきれいに見える場所で、

 カケルは足を止めた。

「ルシアナ」

「なに?」

「俺……この先もずっと、お前と一緒にいたいと思ってる」

 ルシアナは驚いたようにカケルを見た。

「……それって……」

「恋とか愛とか……

 そういう大げさなやつじゃなくてもいい。

 一緒に笑って、一緒に怒って、

 一緒に飯食って、一緒に帰る……」

「……うん」

「そういう“人生”を、お前と歩きたい」

 ルシアナの瞳が揺れる。

 夜風がそっとふたりの間を通り抜けた。

「……カケル」

「なんだよ」

「私もよ。

 あなたと一緒にいたい。

 たぶん……ずっと前から」

 カケルが照れたように頭を掻く。

「……だったら、決まりだな」

「ええ。決まりね」

 ふたりの影が橋の上で重なり、

 ランタンの灯りが柔らかく揺れた。

 

 ◇


 遠くでミュコが「ピュイー!」と叫んだ。

 どうやら待ちきれず、店に戻る合図らしい。

「……あ、ミュコが催促してる」

「くそ、ロマンチック台無しだな」

「ふふ。ミュコらしいわね」

 ふたりは肩を並べて歩き出した。

 夜の風が、暖かく彼らを包む。

「さ、帰りましょう」

「そうだな。

 ──帰ろう。俺たちの場所へ」


読者の皆様、最後まで『異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?』をお読みいただき、本当にありがとうございました!


全100話の本編、エピローグ、そしてこのスピンオフをもって、カケルたちの物語はこれにて完結となります。


本作は、私にとって「小説家になろう」で一番最初に投稿を始めた、非常に思い入れの深い作品です。

最初は手探りで始まった物語でしたが、カケルが仲間と共に「感情」を取り戻していく姿を、100話という長い道のりに渡って見守り、最後までお付き合いいただいた読者の皆様には、感謝してもしきれません。

皆様の存在が、私にとっての「仲間」であり、完結まで走り抜ける最大の原動力でした。

本当にありがとうございます!


もしよろしければ、完結の記念にブックマークや、ページ下部からの評価(☆☆☆☆☆)、ご感想などをいただけますと、作者としてこれ以上ない喜びです。


カケルとカケルの母「ヨシコ」さんとの話が、実はまだ少しだけあります。

『異世界総務のヨシコさん(58)  ~エリート弟妹たちとスマホで繋がって「魔王軍ホワイト化」始めます。残業代はきっちり請求しまっせ!~』

の後日談にて、投稿中です。

https://ncode.syosetu.com/n3143lo/

よろしければ、こちらもお読みください。


カケルたちの旅はここで一区切りとなりますが、私自身の創作の旅はまだまだ続きます。

現在、次回作も鋭意準備中です!


今後も皆様に楽しんでいただける物語をお届けしていきますので、引き続き「早野茂」の応援をどうぞよろしくお願いいたします。


また次の物語で、皆様とお会いできる日を楽しみにしています!


早野茂

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― 新着の感想 ―
カケル、自分の居場所ができて、よかったね ルシアナちゃん、幸せになってね〜。 ミュコちゃん、美味しいパンの新作待ってま〜す。 その他の前借亭の皆さんも幸せにね〜。  お話、完結、おめでとうございます…
祝、完結! 毎日、楽しみに読んでました。 終わってしまうのは、寂しいですが…、でも、完結したのはめでたいことなので、…おめでとうございますと、言わせて下さい。(ヨシコオカンとの再開があるようなので、も…
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