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御近所のドラゴン一家  作者: さゆき
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19/19

漁師と海竜王9 嘲笑われてるぞ

完結させてから順次投稿して行こうかと思っていたんですが。


仕事の忙しさにかまけている間に、更新していない期間がエライ事に・・・申し訳ありません。

<(_ _)>

 『アレス、アレス!目を開けて!アレス!』

 メイバーの涙声が念話で直接頭にゴワンゴワンと響く・・・マジで死にかけてたから気持ちは分かるが、種族的に出力が桁違いなんだから勘弁してくれ。

 脳が沸騰する、頭ワレル、マジで。


『落ち着けって、メイバー、心配かけたのは悪かったけど』

『アレス!ああ良かった・・・死んじゃうかと思った・・・』

 かなりヤバかったのは分かった、分かったけどっ、ボリューム落とせって~

 念話だから耳を塞いでも意味ねえし、その腕が片方かたっぽ取れちまったし・・・って、ヲイ?


 気がついたらなんとビックリ、腕が有った、見える限り新しく生えた方も無事だった方も、なんか青黒い鱗が覆っていて、同色の爪がエライ刺々しい事になっているんだが、世紀末ヒャッハーかよ?。

 いやいやいやいや、今はそんなことは後回しだ。


 俺がどんだけ気絶していたのか分からないが、その間メイバーは俺を抱えて二頭の黒竜から逃げ回っていたらしい、更に真下には見渡す限り、相も変わらず砦の周囲一面の真っ黒な魔物の群れ。


 小柄な雌竜である(それでも頭の角から尻尾の先まで30メル(メートル)弱はある)メイバーと比べて、二回りはドでかい雄の黒竜が火を吹き、爪と尾を振り回し、攻撃魔法を大盤振る舞いしながら挟み撃ちにしようと迫って来る、体当たり(ぶちかまし)でも掛けられたらひとたまりもない。


 背中側に回ってせっかくメイバーに魔法で引き寄せてもらってみたが、騎竜用(ワイバーン)の竜槍なんてはっきり言って振り回しても爪楊枝だね、背中を守ろうにも細いわ短いわ届くもんじゃねえ。


 眼下の砦も将官達(ぼっちゃんズ)の姿は全く見られず。

 右往左往する兵士達を司令官どのと、なぜか王都から来た監査官殿が指揮をとって、投石機や弩弓隊に号令をとっていた。



 ☆  ☆  ☆ 




「こ、公爵様に対して、グ、食人鬼(グール)呼ばわりとは、な、何たる無礼を・・・」

 口角泡を飛ばす勢いで、わなわなしているのは派閥の下っ端のやつだな・・・


食人鬼グールでなければ乱心者だ、美食の果てに悪食に手を出す輩を我が国の公爵のままにしておけるか、貴族としても、国に取ってもさっさと切り捨てるがよろしかろう。」 

「さよう、食人行為などいう禁忌に手を染める等、母神の怒りも畏れぬ仕業であり国の恥、公爵を監禁したのち国家の総力を挙げて隠蔽するか、厳罰に処するかの二つに一つだが、既に海竜王様のお耳にまで届いてしまっている以上取れる手段など決まっておりましょう。」

 海軍卿の言葉に、太守も阿吽の呼吸で同意を述べる。


 食材にしようとしたと言うより、不老不死の霊薬にしようとした訳だが、どちらにしても被害者メロウの『人』としての尊厳を認めていないのは変わりがない。




 我が国では海の民(メロウ)や獣人への差別は禁じられている、一応。

 そこで頭に血が上って『普人族以外は人じゃない』とか口を滑らせなかったのは上出来かね。

 むしろ被害者(食われたの)が普人族の平民の娘であったとしても外国人でない限り、公爵の権力と賠償金にものを言わせて表向き不問にする(黙らせる)だろう、悪い意味で平等だ。


 そもそも『人』のくくりてぇのはどこまでだろうか? 二足歩行の(食材にされる)魔物で有名なのは緑色の豚人間であるオークだけれど、上位種になるとメイジオークなんていう魔法使いがいたり。

 逆に魔族なんてのは普人やエルフよりも知性は有りそうだが、人権無用の抹殺対象だ、超有害だから。




 そこから先は、責任の追求合戦だった。

 太守と海軍卿並びに沿岸部領主達の攻撃材料は、1に今回の件、2に馬鹿公爵が竜の街(トノア)で、竜姫と諸外国要人相手にやらかしてくれた不祥事、しかも後者の方は貴族院も外務省も何故か把握していないオマケ付き。

 おおかた外務系にいた老害公爵派閥の下っ端連中のもみ消しのせいだろう。


 対する法務系の閣僚達は、平民が最高位の貴族である公爵に武器を向けたこと、今回の事件()発端(出所)が転生者、(すなわ)互助会(ダイムズ)に責任があると、反論した。

 まあ、お互いの落ち度をすり合わせながら、妥協点を決めようという駆け引きだ、最初にいきなり『ダイムズを死刑』とかぶち上げたのも、減刑するのを前提に、自分らの取り引き材料を嵩増(かさまし)ししたかっただけなんだが。


 更に、海竜王様という外圧に負けて、平民の減刑に応じたら我が国の王侯貴族の権威が損なわれるとか、寝ぼけた事を言い出す奴まで出る始末、もっぱら内陸部に領地が有る奴らだ。

 それに対して海軍卿は、口調こそ丁寧だが、バックに暗雲を背負っている。


 太守以外は、被害者に対する誠意ある謝罪とか考えてなさそうだ。


 海軍卿セドウイーグ子爵の怒りは、責務としては(もっと)もだ、陸に引っ張り出せるならいざ知らず、海で人族が海の民(メロウ)に勝てる訳が無い。

 総人口すら把握出来ていない相手(メロウ)に、根拠もなく『亜人など何ほどの事もありません』とか海軍卿が大言壮語を吐けるなら、そっちの方がビックリだ。


 海の民(メロウ)単独を敵に回しても厄介だが、海岸線沿いに両隣の国メルダとサヌワーク、少し遠いが対岸のメレウイ群島等の、諸外国へと彼らを追いやって、手を組まれたなら利敵行為も同然だ。

 仮にどこの国と手を組む事になっても海軍卿にして見れば、取らぬタヌキの何とかだが『貴重な戦力をどうしてくれるんだ!』という糾弾である。


 実の所今回の事件が起こるまでは、海の民(メロウ)にツテがある事では、我が国が諸外国に一歩先んじていたのを、迷信(ガセネタ)に踊らされた馬鹿公爵が、全部台なしにしてくれた訳だから当然だ。

 更に一番太い人脈(パイプ)であるダイムズを処刑しようとか、悪手を重ねようと言うんだから、こいつらも大馬鹿だ。




 竜の街(トノア)へ外からの揉め事は持ち込ませず、街で起きた揉め事は持ち出させない。

 何人(なんびと)たりとも掟を破れば、診療所が問答無用無用で閉鎖になる、他国の人間がやった事だと言っても神竜達は聞かない、神竜達から見れば国の境など関係無く(すべ)一括(ひとくく)りに人族だ。


 例えば、仲の悪い国同士の王族や、将軍辺りが診療所で鉢合わせする。

 当然、双方相手にこの世から居なくなって欲しい訳だから、それぞれ自国で御典医に申し付けるのと同じつもりで『向こうの国の誰其(だれそれ)の治療をするな』と言い出す。


 更には故意に医療事故(一服盛れ)を引き起こせと命令(脅迫)したり、”神竜の外交の街“の真っ只中で随行員の武官(即席の暗殺者)を差し向けあったりするが、暗殺(正確には殺人未遂という犯罪)を実行に移そうとした途端に、竜族の有り余る魔力で以って転移魔法で追い出される、自国ではなく相手側の国へだ、『映像』と『音声』付きで。


 何で俺がそんな事まで知っているかと言うと、仕掛けを造った本人(竜)がすっげえ悪い笑顔で教えてくれたからだ。

 (ちな)みに『映像』と『音声』を付けろと、アドバイスしたのは俺だが。

 治安が悪いという不名誉な評価を人族(ごと)きに言われるのは許せないから犯罪には対処するが、逮捕から取り調べ裁判刑の執行までの一連の流れは()()()()()()とさ。

 まあ俺も司法に(たず)わる者の端くれとして、どんだけ面倒(めんどい)かは知っている。


 神竜達のアウトとセーフの線引きが分からねえとか、文句垂れてる貴族がいるが、

 俺だって100%分かるとか、おこがましいことは言わねえが、お前ら何しにトノアくんだりまで来てんだよ!自国の医療じゃあ助からねえから押しかけて来てんだろうに、と言いたい。

 難病の子供を抱えて財産一切合切処分して、海と荒野を越えて来る親達に謝れ!




 神竜達の他種族への基本方針は、

『自分達に関係の無い、どこか遠く(とーく)で幸せになってくれ』なんだ。


 それでも荒野を越えて(押しかけて)来たなら(来るから)治療する、積極的に不幸は望まないが、幸せにもしてくれない(おせっかいも焼かない)

 ナニカやらかしても咎める事すらしないのは、別に広い心で笑って許してくれている訳じゃないんだぜ。


 既に周囲にいる各国要人の面前で恥を(さら)して嘲笑されているから、追及する(余分な)手間を惜しんでいるだけだ、それを自分が特権階級だから許されていると思っている、勘違いだ、笑われている事に気付け、アホウ。




 今回の老害公爵のように、命が掛かっている順番待ちで割り込まれて、恨みを買わない訳が無い。

 トノアから戻って、即座に(宣戦布告の)行動(ネタ)を起こす(にする)と、『掟を破った』と神竜達に咎められる。

 最悪、開戦直前に上空から乱入して来る巨大な戦竜達に、両軍蹂躙だ。



 だが貴族ってのは執念深い、忘れた頃(どころ)か何十年も経ってやらかした本人が死んだ頃に、蒔いた火種が燻って外交面で交渉が上手く行かなくなったり、最悪大火事(戦争)になる。


 聞かされた時太守も頭を抱えたが、老害公爵の行動(メーワク行為)を把握出来ていなかったのは、貴族院や外務官僚達には衝撃的かつ、痛恨の一大事だろう。


 神竜達は人族同士の事に関心が無い、だから笑われていても親切に教えてくれたりしない。

 ヨルドのダイムズ絡み(海竜王様のトラブル)とは言え、今回ディーナちゃんが教えてくれたのは、実は破格の扱いなのだ。





(踊ってるなぁ……)

 時間の無駄以外のなにものでもない、白熱する議論(笑)をシラーっと眺めていると、侍従が入室してきた。


 襟の徽章は・・・徽章がっ・・・


 大半の居並ぶお歴々や下級官吏達は、白熱(笑)した議論の方に気を取られているが、警備の連中とかは当然のことだが他にも気を配っている(その注目を浴びながら)、侍従が真っ直ぐに俺に歩み寄って来る。


(おいおいやめてくれよ、陛下付きの奴が・・・目立つのはマジで勘弁してくれよ)

 俺の心の声が当然届く筈も無く。


「騎士アレッサンドロス・ドレイク、陛下がお呼びである、御前に罷り出るように。」

 おーい!頼むよ!人目を憚ってくれよ~

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