漁師と海竜王8 貴族法
やりました、3300字入力に成功。
入力限界と戦っているのは私だけ?本気で他の方のお話が聞きたいです。
泣きます(・_・、)
口さがない連中には、キヌア砦は別名左遷砦と呼ばれている。
北のカンガルに国境を接する“遥か手前”の位置に建っているが、隣国に通じる街道はなく旅人も交易商人も通らない、高い山脈が壁としてそびえ立つが鉱物資源の類いは見つかっていない、この山脈も王国の領土内なので、隣国を警戒しているのならば山脈を越えた向こうに砦を築くべきだ、何を護る為に在るのかサッパリわからない。
きっと、王都で何かやらかした連中を、押し込めて置くためだけに税金を使って、この砦が在るのだろうと。
実際、そう笑う兵士達の予測に違わず中間管理職の層だけやたらに厚く、意味不明な役職が多かった、そしてソイツらは役に立たなかった。
何が凄いと言って、問題児共の着服防止の為に砦に届く物資は現物支給、食糧は近隣の村から物納の税金、兵士の給与は王都に帰還してからの後払い、売却出来る町すら無いが勿論武器防具も原材料の金属や革で届く徹底ぶり、交易路も無いので商人から通行税(と賄賂)も徴収出来ない。
性犯罪防止の為、砦に居る女性は他種族か、人族でもシグラス神学校出身の治癒術士、挑む奴は勇者だ、敢えて止めない死にに行け。
そのキヌア砦でドレイクは、副騎士団長と言う肩書きの雑用係として働いていた、会計その他、名ばかりの部下には絶対預けられない書類を一手に管理する、ドレイク自身は左遷ではなかった筈だがこの酷務では自信が無くなる。
王国で騎士は貴族位ではなく職業だ、ドレイクは平民で騎士団長は退役目前、貴族の身分だけを傘に来て徒党を組んで実権を握りたがる輩を、訓練所で剣や体術で叩きのめす“平和”な毎日、今思えば我ながら腕っ節で頭を決めようなんて山賊かよ、あの頃は若かった。
ああ、平和だったともさ、個人的にはエルフ美人(と、その当時は思っていた)の魔導兵に一目惚れして動揺したり、前世がえりしたり、イロイロ有ったが”平和“だった。
200年~300年という大変に大雑把な予測周期で、『開く』と団長に俺だけが聞かされていた天然の大規模転移門、『魔穴』が魔軍を吐き出すまでは。
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話し自体はまあ、あっさり解決した、ヨルド市を含めた一帯を治めているコーラデス伯爵が、問題の老貴族ことグラヌール公爵の罪を問うと明言したからだ、勿論自分の領地内の犯罪とは言え伯爵が格上の公爵を裁く事は出来ないというか許されないので、高等司法官が同行した上で身柄を拘束し、公開か非公開かは未定だが裁判は王都で行われる事になった。
屋内には早朝にも関わらずかなりの人数が待ち構えていた。
昨日の今日なんだが、どこから情報が流れたかね?
法務大臣と高等司法院総長(最高裁判所の裁判長)、元老院議長(国会議長)と外務官達と言った官僚の面々、その他話しを聞き付けて駆け付けて来た海岸線沿いに領地を持つ貴族達が、さすがに海竜王様には詰め寄れないので、遠巻きにこちらを見ている。
我が国の国境の、五分の三は陸地で他国に接している、残り五分の二は海岸線だ、海の民は国家を形成してはいないが、蔑ろに出来ない勢力だ、その海の民と国内の貴族が“加害者として”揉め事を起こして敵に回し、海竜王様がわざわざその加害者貴族に立ち向かった平民の弁護にお出ましになるとか、領主達には悪夢以外の何物でもないだろう。
その中から、真っ青な顔をしたコーラデス伯爵が、進み出て来て海竜王様に謝罪する。
「この度は、領内の事に目が行き届かずこのような騒ぎとなり申し訳ありません。義父に成り代わりまして幾重にもお詫び申し上げます。」
それに対する海竜王様と来たら、周囲を威圧する気満々で、伯爵の事は一瞥したきり答えようともしない、馬車に乗り込む前は普通にこちらの紳士服だった筈なのに、被っていた布の下から現れたのは人型だが紺碧の鱗と翼、竜の瞳孔に雄の成竜の証である立派な3本の角、そして神話の時代から抜け出た様な戦装束、そろそろ老人や若くても虚弱そうな若様がふらふらし始めた、うん、いろんな意味で全開だ。
この竜は女将さんが居るところでは割とへっぽこなんだが、それ以外では威厳がある。
伯爵が義父と呼ぶのがグラヌール公爵、つまり妻の父親と言うことだ、留守中に自領内で義父に好き勝手された挙げ句、被保護者でもない他家の当主でもある舅の管理不行き届きを詫びるのは違うだろうと、俺でも思う、気の毒に。
最初コーラデス伯爵は高速馬車を既に用意していて、自身が現地へ駆け戻る予定だったそうだが、宰相がそれをやめさせて、領内に留守居している伯爵の嫡男と、一番近くにいる王国軍という事で海軍が公爵の身柄を抑えに向かった。
さて、王都まで来ておきながら国王を素通り、報告もしないという訳には行かない、特にトラブィス太守やドレイクのような宮仕えは。
「元老院での正式な聴聞会は日を改めて設けるが、遠路遥々王都まで来たのだ、詳しい話しを聞かせて貰おうか。」
だ、そうだ、まあ報告するのはトラブィス太守で、さんざん威していた海竜王様は国王陛下と陛下個人の私的な応接室で御面会を致しましょうと外務大臣が奥へ案内しようとしている、ドレイクは護衛の振りで別室に控えたいところだが、宰相に同行するよう明言されてしまった。
俺は隊長とは言え一介の騎士なんですがねえ、事情を知らない官僚達に不審の目で見られている、メイバーとの『契約』直後の呼び出しに全力で惚けたのに水の泡になるじゃないか。
「ここでの用は済んだ、後日改めて礼に参る故、私は我が友ダイムズの無事を確かめにヨルドへ赴く」
口調は(竜王基準では)一応丁寧だが、海竜王様はあからさまに、国王なんぞに用は無いという態度、まあ半分は態となんだが……
それに対して誠実な笑顔で礼儀正しく引き止めようとする外務官僚、国王に対して無礼だと怒っている法務官僚、『友』という海竜王様の言葉に青ざめた顔でオロオロしている沿岸部諸侯、様々な反応をドレイクは太守の後ろから黙って見ていた。
けんもほろろな海竜王様は、トラブィス太守の懇願に”だけ“耳を傾けたという素振りで、渋々奥へと向かう。
報告と言われても、自分達も今回の事件は伝聞でしか知らない事を前置きして、ひと通りの説明をする、太守が。
「正式な裁きは、グラヌール公爵とダイムズと申す商人の身柄を王都へ護送してからだが、王国を騒がせたのだ双方処罰は免れ得ぬ、公爵は隠居の上幽閉、貴族を襲撃したダイムズは死罪のところを罪一等を減じて終身刑……」
「お待ち下さい!誘拐され危うく殺されるところだった娘を救出した者が何故処罰されねばならんのですか?」
ほら、変な事を言い出すバカがいる、ダイムズが終身刑で公爵がソレかい、隠居と身分剥奪はイコールじゃないぞ、自宅軟禁じゃ快適な余生が遅れそうだし。
高等司法官のナントカの、発言を途中で遮って太守が抗議する、でも貴族ならコレが普通、ココロの底から本気で言ってるんだよなコイツ、さっきダイムズを『友』と呼んだ海竜王様がまだ王宮内に居るのが分かってるのかね?今国王陛下と面談中なんだぜ?
「貴族、それも公爵を平民の自警団如きが逮捕するなど不遜な事は許されません。彼らは武器を持って公爵を襲撃するのではなく、然るべき法的機関に訴えるべきでした。」
然るべき相手ってのはアンタらだろうが、南の端っこの港町に出先機関は在ったのかい?王都まで来いって?その間に被害者は調理されて公爵の食卓に乗ってたぞ、通信具なんかで通報しても平民如きが我々を呼び付けるとは何事かトカ言うんだぜ。
ドレイクが内心で罵っているのと同じ様な事を、もう少し上品に太守や沿岸部諸侯が抗議していると別の人物が割り込んだ。
「我が国の貴族に、食人鬼はいません。」
うおぅ、ざっくり切り捨てたねえ、端的な表現がナイスだ、海軍卿。




