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御近所のドラゴン一家  作者: さゆき
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漁師と海竜王7 王宮

まだ王宮前です。進行が遅くてすみません。

 蓄えを(はた)いて買った短剣は粗悪品だった。


 魔法付与の品だからと言ってボッタクリやがって。

 毎日注ぎ込んでも組み込まれた魔石は魔力を蓄えない、注ぐそばから漏れていく、組み込まれた魔法は魔法破壊(マジックブレイク)一種類のみ、俺の魔力量ではおいそれと練習も出来ないので購入を決めたが、一回で壊れるたぁどーいう事だ?金返せ。



 魔力視の才能の無い俺にすら“見える”ほど、その魔法は強大な気配を振り撒いていた。


 (あみ)の形をしたメイバーに絡み付く『それ』はひたすら気色悪かった(後で聞いたら毒、呪い、麻痺その他諸々嫌なモノがレベルMAXでてんこ盛りだったそうだ)、幸いメイバーは砦の防壁の真下、あれだけドでかい網ならどうやったって外さない、問題は『網』に切り込みを入れた後に空を飛べない俺はどうしようと思ったが、墜落死するのが先か砦ごと丸焼きになるかの違いだ。


 飛び降りて切り付けて、ありったけの魔力を上乗せして、ホンの小さな切り目を入れた、途端に短剣は砕けた、安物め!


 直後メイバーが自力で網を引き裂いたのが見えた。

 落下しながら妙に冷静に、振り返って俺を受け止めて貰うのは無理だろうなぁと思っていたら、そこに衝撃が来た。


 右腕が無い!肩ごとごっそりえぐり取られた、呼吸も出来ない!痛みのせいか?肺に大穴が開いたからか?

 うん、死んだな、外傷性ショックで即死しなかったのが不思議な位だ、と言うかそこの黒竜!

 毒だの呪いだの以前に、お前の爪、絶対汚いだろう!




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 早朝にも関わらず、魔道具を介した事前の報告(の深刻な内容)が功を奏したか、謁見の申し込みは速やかに受理された。


 コーラデス伯爵領軍と睨み合ってるヨルド市の自警団と互助会は、アラマド(オッサン)が抑えに向かった。

 朝一番の連絡によれば、領軍の兵士達も自分達の領主でもない、よその貴族にあれこれ命令されて戸惑っているらしい、市の兵士として働いているのは当然ヨルド市民だから、ダイムズとだって面識が当然ある。


『竜王』に対して『謁見を許可』と言うのは実はイロイロとマズイんだが、海竜王様は兄夫婦に何十本か釘を刺されて、一応『お忍び』で太守の同行者、ドレイクも海竜王様のお()りで同行。


 お守りと言っても、何かあったとして竜王を止められる自信は無い、断言できる。

「せいぜい女将さんに、後から報告する(いいつける)位しか出来ませんが、その頃には王宮が倒壊してますよ」

 俺が倒壊した建物の下敷きにならないよう祈って下さい。


「ディーナちゃんもお友達が増えたから、引っ越しはなるべくしたくないわねえ。」

 女将さん的にはそーゆう問題なのか?冗談だよな?


「そこまで分別の無い真似はしませんよ、王宮で暴れても時間の無駄ですから、決裂したならヨルド市に向かいますよ。」

 そんなピンポイントな攻撃が、はたしてこの(ひと)に出来るのだろうか、ナイフを持った自転車相手(チャリンコライダー)に核ミサイル持ち出すようなものだぞ、ヨルド市の互助会や一般市民まで巻き込みそうだ、同じ事を考えているらしく女将さんもうろんな目つきだ。


「ですから、何故私が暴れるのが前提なんですか?私の希望(のぞみ)は公正な裁きが行われる事だけなんですよ。」

 信用出来るか、竜の常識は人の非常識、貴族の常識も平民の非常識。

 ホントに七面倒くさいよな、殺人未遂の犯人を検挙して欲しいだけなのに、回り道が長いこと長いこと、この国は法治国家の筈だが。





 本来外宮(げぐう)の馬車停まりで、伯爵以下の身分の者は馬車から降りなければいけない決まりだが、トラブィス“子爵家”の馬車は、そのまま素通りし更に奥まった内宮(ないぐう)の目立たない入り口前に、直接横付けされた。

 かなり異例の優遇措置だが、『時間の無駄ですから謁見の間(国王のまん前)に直接転移門を開きましょう』とか実行されたら、警備の責任者が確実に責任とって自死しそうだ、会った事も無い近衛隊の責任者に恨みがある訳じゃ無いんだ、海竜王様が人目につくのもマズイが乱暴な訪問手段は全力却下だ。




 入り口前にはお出迎えが三人、まさかの宰相、軍務大臣、外務大臣揃い踏み、敵意が無いと言う意思表示か周囲に近衛の姿も無い。


 頭から布を被った海竜王様は、馬車を降りた瞬間から怒気と人外の気配全開で、気のせいでも何でもなく周囲の気温が一気に下がる。近衛がいたら剣の(つか)に思わず手が伸びるか、三人の閣僚との間に立ち塞がろうとする事だろう。


 ダイムズの為に穏便に納めたいとか言わなかったか?ついさっき。


 これでも本竜(ほんにん)は、別に閣僚らに精神的な先制攻撃をしている訳じゃ無いんだ、ただ単に周囲に対する配慮を()めただけ、上位竜が『普通』に竜気の抑制を止めたら、気力で対抗出来ないと年寄りはあたって倒れる、大丈夫だろうか?閣僚方(おとしより)


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