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御近所のドラゴン一家  作者: さゆき
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漁師と海竜王6 竜の街

『脳筋』『体育会系』『考え無し』前世でも、今生(こんじょう)でも首尾一貫してドレイクに下されるありがたくない評価だ。


 悔しいが自分でもそう思わなくもない、正体を隠すどころかクナカ砦のお仕着せの鎧一式の装備で兜は無し、その格好で上位竜(メイバー)の背に跨がって(しがみついて)魔軍のど真ん中に突撃したのは、返す返すもまずかった、砦からは丸見えでそれはもう目立ったとも。


 砦が陥落するどころか国ごとヤバかった、待ったなしの状況だった、誰に言い訳するつもりも無いが敵軍の黒竜は2体、挟み撃ちにメイバーの背中を狙う1体を竜槍を振り回して牽制した。


 後から悔やむから『後悔』と言うんだ、それ以外選択肢は無かった。

 そして予測は出来ていたが、スゲエ面倒臭い事になった。


 ☆ ☆ ☆ ☆


 竜の街(トノア)、神竜達が本来人間社会との外交の為に霊峰の(ふもと)に設けた『街』だが、実は世界一の医療都市としても有名だ。



 彼ら(ドラゴン)の基準で街作りをしたら、場所が辿り着くのも大変な、過酷な荒野の真ん中で、使節団の9割が到着後確実に倒れる結果になった。

 外交問題上、使節団をそのまま放置して衰弱死させる訳にもいかないので、神竜王后直々に治療を施したのがトノアの施療院の始まりだが、施術者が神竜だと魔力量は文字通り尽きることが無い、長い寿命で研鑽された治癒術の技量も人族とは比べものにならない、神竜王后も竜姫様も異世界の医学を学んでいる。


 竜達側から患者を呼び集めた事は一度も無いが、街が建設された当時から各国に評判が知れ渡り、難病や怪我の後遺症に苦しむ者達が、藁をも縋る思いで押し寄せる事になった。


「それでも昔はそんなに忙しくはなかったそうです、治癒術は怪我しか治せませんし、場所もかなり遠いですし。」

 遠いどころの話しじゃない、竜の街(トノア)は西大陸の中心にある、空を飛べる竜ならひとっとびだが人族には過酷な旅路だ、本来竜達は積極的に人族と関わるつもりが無かったので、ある程度距離を置くつもりだったのだ。


 その竜の街(トノア)で、周囲に『次代様』、『姫様』と呼ばれて(かしず)かれている神竜王の孫娘、治療の(かなめ)、患者にとっては生き神様に(ひと)しい竜姫に対して、問題の老人は(みずか)らの身分をひけらかしながら、好き勝手な要求を”申し付けた“そうだ。




「ひょっとしなくてもバカだろ、そいつ」

「太守、大丈夫ですか?」

「…………」

 アラマドのオッサンは呆れかえり、太守はダメージが大き過ぎて言葉も無い。


 新たな問題発覚に頭を抱えた太守を気遣って、言葉を濁して表現は控えめだが相当失礼だったらしい、『神竜』という勢力相手だけでなく、秘境(トノア)に辿り着ける患者の家族は各国の貴族富豪が多い、ドレイクは彼女(ディーナ)がそんなことはしないのは知っているが、各国の患者にとっては彼女が老人の無礼に臍を曲げて治療を中断したら文句なしに外交問題だ。




 さすがに4才そのままの姿で治療にあたると、患者とその付添人に不安を与えるので、ディーナちゃんは人化の術にアレンジを加えて15~16才位の少女の姿に、白銀の鱗、縦に裂けた瞳孔、竜の翼と、逆に問診に向いていないんじゃないか?というような格好で、三日に一日は祖母を手伝ってトノアで働いている、彼女は転移門を使えるのでトノア通いは気軽に出来る。




「こう言っては失礼ですけど、あの方認知症か何かかも知れません、私もトーノ医師(せんせい)からそうゆう症例を聞いた(うけうり)程度ですけど、周りの方々(かたがた)の様子も目に入っていないようでしたし。」

「ボッ……」

 アラマドのオッサンが何か言いかけて口をぱくぱくさせた、ディーナちゃんの前で余り汚い言葉使いをすると、出入り禁止になる。


 年をとると理性が効かなくなって、わがままになるとは聞くが、大広間で周囲の順番待ちしている(よめいせんこくされた)患者を押し退けて自己中発言をかましてくれたらしい、確かに判断力は無いな、ディーナちゃんのお付きの連中より睨んでいた他の患者の険悪な空気が読めないんだから。


「あの方健康管理には気をつけていらしたようで、怪我でも病気でもないので『(わたくし)に出来る事はございません』と周囲(おつき)の者にお帰りいただくように言ったんですけど、駄々をこねて居座って。」

「「「駄々」」」

 幼い声でしみじみと嘆かれた揚句に溜め息をつかれると、ドレイク達の方がいたたまれない。


「不老不死にしろ、というご要望でしたけど、そもそも私達(ドラゴン)だとて年老いるし、不死ではありませんのに。」

 ごもっとも。


 今回(メロウ)の事件だけで言えば有利な証言だ、国内最高位の貴族の加害者と、領主の伯爵も知っていたとは言え領内で働いていただけの国民ですらない他種族(メロウ)の被害者とヨルドのダイムズ、この二者を天秤にかけて国のお偉いさんがどう判断するかと心配だった。


 海の民(メロウ)の武力行使は現在(いま)は海竜王が抑えているが、国の上層部が貴族(バカ)の肩を持つような裁定を下したら、海竜王様本竜が戦争も辞さずという構えだ、ありがたいことに別件でもこれだけやらかしてくれていたらそっち(トノア)で罪に問えるだろう。


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