5-2. お婆に相談
お父さんに連れられて、私はお婆の家に向かった。
「お婆、こんにちは。」
家に着けば、椅子に座るお婆がいた。お婆は私たちを見るやいなや、目元のシワを深くして笑って言った。
「まぁまぁ、ルシアちゃん、見ない間に大きくなって。どれ、今お茶を入れるからそこに掛けなさい。ラズベリーは食べるかい?皆いろいろ持ってきてくれるんだが私じゃ食べきれなくてねぇ。」
お婆は村民全員のおばあちゃんのような存在で、遊びに行けばいつもルシアたちにお菓子や果物を出してくれる。
「お婆、ありがとう。実は今日は相談があって…。」
私は電柱や電線について話した。子供の言うことだからと聞き流すことはなく、おばあちゃんは真剣に耳を傾けてくれていた。
「ほぉ。それがあれば、遠くにいても属性の力が使えるのか。」
「そうだよ!」
私がニコニコと肯定すると、お婆は驚きながら目を伏せた。そして少し黙ってからお父さんに問いかける。
「完成してしまっていいのかい?」
なんだろう。お婆の雰囲気が少し怖い。
「ええ。のびのび生きてほしいとのこと。そのための守りは付けると。」
お父さんはお婆から目をそらすこと無く、真剣な顔で答えている。
ええ?いったい何の話してるの?
「そうかい。」
お婆はなにか言いたそうにしていたけど、ふぅとひとつため息を付くと、くるりと私を振り返った。
「ごめんね、ルシアちゃん。このお婆にもう一度はじめから説明してくれるかい?」
お婆は目元にシワを寄せて、優しく笑ってくれていた。よかった、いつものお婆だ。
「電線が枝に触れると危ないから、木の無い所に立てたいんだけど、皆の邪魔になっちゃうみたいで。」
一応、絶縁としてゴムを銅線につけるけれど、漏電を考えるとやっぱり危険は避けておきたい。
「ああ、枝に触れなければいいのかい?それなら、地面に埋めるのはどうかの。」
確かに!架空がダメなら地中にすれば良いじゃない。この辺りは雨量も無いし、腐食もあまり気にしなくていいはず。
「たしかに!すごいよ、お婆。ありがとう!」
「力になれたなら、良かったよ。」
お婆はふふふと笑うと、ちょいちょうと私を手招きした。
ぎゅっ。
え?
お婆は私を抱き締めた。
「属性の光よ、どうかルシアちゃんをお守りください。」
お婆は、だれかが村を離れる際の祈りの言葉を呟いた。
私は村を離れるわけじゃないけど、まぁいっか。
お婆の細い腕のなかは暖かくて、私はその温もりに身を委ねた。
「またね、お婆!」
私はウキウキとはやる気持ちを抑えながらお父さんと歩いていた。
「お父さん、帰ったら銅線の表面にゴムをつけて、絶縁被膜を作ってね!」
私がぐるぐる巻きにされた長い銅線を見せてお願いした。するとお父さんはぎょっとした顔で私を見た。
「おいおい。もしかして、これ全部にゴムをつけるのか?」
え?だって絶縁しないと危ないでしょ?やらない理由がないのに、お父さんは何を言っているんだろう。首を傾げる私を視界に入れても、お父さんは難色を示している。
「これがあれば、みんなの水汲みがもっと楽になるんだよ。」
お父さんの表情は変わらない。
「きっとお母さんも、お水がたくさん使えて、朝に洗顔ができたりしたら、すごく喜ぶと思うんだけどなぁ。」
「母さんが?」
あ、お父さんの琴線に触れたみたい。
「ううむ。やってもいいが、銅線が互いにくっつかないよう乾燥させるなら、1度にすべては作れない。全部やるのに1週間はかかる。そこはきちんと理解するように。」
お父さんは渋々ながらも請け負ってくれた。こればかりは仕方ないか。自分では作れないし、残念だけど我慢するしかない。私は笑顔でお礼を言った。
家に帰ると、お母さんがサーヤの家にパンを届けるよう、私にお使いを頼んできた。
「サーヤのところ、まだ買いにきてないの?」
サーヤの家がパンを買いに来る日は決まっていて、今日はその日なのにまだ買いに来ていないらしい。
「いつもより遅いわよね。ルシア、パンを届けるついでに様子を見に行ってくれない?」
「うん、わかったよ。」
サーヤのお父さんに会った感じでは普段通りだった。なんでもないと良いけれど。
私は足早に向かった。




