1-1. 高地に住む私たち
ここは高地。太陽が近くて、木々はどこまでも生い茂っている。
村と呼べるほど大きくはないけれど、少し拓けた土地に私たちの家々が集まっている。
朝早くから、外から薪割りの音が聞こえてきた。
んん、うるさい…。
あともうちょっと。私は布団を頭から被って2度寝を試みる。でも鳴り響く薪割りの音に負けてしまい、まだ眠い目をこすりながらベッドから身体を起こした。
「おはよう、お母さん…。」
私は眠い目を擦りながら、ダイニングの椅子に座る。 我が家のごはんは火属性を持つお母さんの担当だ。
「おはよう、ルシア。遅かったわね。さあ、朝ご飯を食べるわよ。お父さんは庭で薪割りをしているから呼んできて。」
お母さんに追いたてられるように庭に出ると、お父さんは薪に適した木を探しているところだった。お父さんは木属性を持っていて、木材の山に手にかざしている。
ポワッ
薪に適しているらしい木材が淡い緑色の光を帯びている。属性の光だ。
「朝御飯たべよー。」
「おお、わかった!」
お父さんはニカッと笑って、私と一緒に家へ入った。
朝ごはんは作り置きの野菜のスープと昨日売れ残ったパンだ。我が家はお母さんの火属性を生かしてパン屋を営んでいるので、毎朝このメニューだ。
「いいなぁ、お父さんは木属性持ちで。薪割りがすごく楽そうだよね。」
「まぁ、割りやすい乾いた木が分かるからな。だがルシア、属性よりも、やっぱりお父さんの筋肉が素晴らしいからだと思わないか?」
お父さんはムキッと腕を曲げて力こぶを作る。私は白けた顔をしてスルーした。
「ルシア。自分の属性で何もかもをすることはできないでしょう?他の生き物に手伝ってもらわなくては、私たちだって出来ることはほとんど無いのよ。」
キュッキュッ。
お母さんの膝に乗っている火リスが『そうだそうだ』とばかりに鳴いて、姿勢を正して主張している。お父さんの肩にいる木カマキリも、腕のカマを振ってアピールしている。
属性持ちといっても人間は属性物の状態を確認するぐらいしかできない。だから同属性の生き物を相棒にして手伝ってもらうのが常識だ。
「お母さん、お水のお代わりもらうね。」
私は水溜めからコップに水をいれ、椅子に戻ろうとした。
ガチャンッ!
「きゃああっ。」
椅子に座るはずが足が引っ掛かって転んでしまった。倒れた拍子に椅子の足が折れてしまっている。
「ルシア!だいじょうぶか?」
「怪我はない?風邪をひいてはいけないから、早く乾かしましょう。」
両親は私に怪我がないことが分かると、お母さんは慌てて火リスの火で濡れた床を乾かし、お父さんは木カマキリと一緒に椅子の補修をしている。
「私も床を乾かすよ。これぐらいなら属性なしでもできるからね!」
私は、水で湿った床に木の板でパタパタと扇ぐ。けれどなかなか乾かない。他の部分を乾かし終わったお母さんが、優しく私の手を止める。
「ルシア。もういいから、貴方はゆっくりしていなさい。」
「…はあい。」
私がした失敗を、両親がせっせとフォローしてくれている。私は属性が無いばかりに、役立たずだ。私は何もできないまま、ぼうっと両親を見る。
「属性があるって、やっぱり良いじゃん。」
どんな生き物でも属性をもち、その属性は見た目に出るものだ。だから、木属性のお父さんは緑色の髪で、火属性のお母さんは赤色の髪をしている。
そんななかで、麦色の髪は誰も見たことがないから、属性無しではないかと言われている。
「こんな髪色、いやだなぁ。」
…どうして私だけ属性がないんだろう。麦色の髪に当てはまる属性って本当に無いのかな?
私が椅子に座って足をブラブラとさせて拗ねていたら、それに気づいた両親が心配そうに見ていた。
わわ!そんな顔しないで!
「私、昨日の宿題残ってるんだった。やってくるね。」
私は両親に向かって、にぱっと笑って自室に戻った。
はじめての投稿作です。よろしくお願いします。




