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こいつらも来るのかよ

 しかし、こいつらがここに居ると、レベル屋の仕事に差し支えが出るな。

 もっとも、”魔略”の指示で暫くは閉店だがね。


「おう、集まっておるのう」


「クヒヒ、これだけ集めても時間に正確よな。ヒッヒ、 ハインスの苦労が知れるわな」


 勢いよく扉が開き、3人の人間が入って来た。

 予想はしていたがね。ただ少し外れたな。


「無関係な者の前で名を呼ぶな。それに、そう思っているのなら、もう少しまとまりのあるメンバーを集めろ……と言いたいが、それぞれ動かせない理由があるのだろう」


「確認するまでもなかろう。ヒヒヒ」


「魔女である事はともかく、お前以上に上手く駒を動かせる人間はいないからな」


 やはり”神知”と”魔略”まで来たか。また女性率が上がったな。こいつらをその分類に含めて良いのかは分からんが。

 それと”無色無響”の名はハインスか。あまり意味のない情報だがね。

 というか……。


「なぜそこに俺がいる?」


 2人の後ろには、確かに俺がいた。

 ただ見た目だけだが、毛根の位置まで完璧だ。フェンケなら騙されそうだが……。


「言うまでもない。お前は軍の指揮など出来ないだろう。他の連中もそうだ。我らは表立って戦う事はしないからな。だから俺が飾りとして指揮してやるんだ。少しは感謝しろ」


 あ、しゃべって分かった。こいつ”不浄の繭”だ。

 何となくからくりも見えてきたが、他人も作れるのか。


 しかし豪華メンバーではあるが――、


「ここまで集まったって事は、もう始まるのか。ヘイベス王子の護衛は良いのか? 俺の目もそこまで届かんぞ」


「あちらには”俺”がいる。他に出番は無いからな」


 ”不浄の繭”が代わりに護衛しているのか。

 本人か、それとも複数使えるかは知らんが、まあこいつなら大丈夫だろう。

 本物なら、やられればこちらも消えるだろうし、逆に分身なら本人が気付くだろう。良い警報器だ。

 それに”神知”が王子の警護に不完全さを残すとは思わない。不測の事態があるとすれば”神知”を超えるユニークスキルの持ち主が暗躍した場合か。

 まあ、神知(あいつ)のユニークスキルのレベルはトップクラス。こいつに読めない行動をするなモノが、こんな田舎にいるとは思えんがね。


「それで、状況は?」


「主ならもう分かるじゃろう?」


 ちっ! そこまでやらせるのかよ。

 全神経を集中させる。

 確かに、東から殺気が来ているな。それに人は感じられないような微細な振動。

 音はまだ何もない。しかし――、


「もう20キロほど先か。城壁からは見えているはずだが、警戒の鐘が鳴らんな」


「周到な準備をしておるしな。ヒッヒッヒッヒ。まだ周辺の木は多い。音もまだ聞こえぬではな。土煙など、この辺境の荒野では日常茶飯事じゃて」


「そんなもんか」


 そんな事を言われないと気が付かないとはな。こいつらの雰囲気に当てられたか?

 どうも感情というものが良く分からん。

 そもそも、もう無いはずだったのにな。


「だがすぐに来るであろう。既にヘイベス王子の命で出撃部隊の準備は出来ておる。ほれ、 ウィッツベル。さっさと行け。お前が今はサージェス伯爵なのじゃからのう」


「さっき”無色無響”から本名を呼ぶなと言われたろうが。めんどくせえ」


 ぶつぶつ言いながらも、”歪みの繭”(ウィッツベル)は速攻で走って行った。

 しかしこいつら、確かに仲間内だと名前で呼び合うんだな。

 だがいきなり名前が出ても逆に分からねえ。面倒だから普段から符号で呼べよ。俺は部外者だぞ。


 ほぼ同時に、警戒の鐘が都市に響く。


「いよいよ来たか」


 気配からすると、前衛部隊は歩兵。およそ3千か。しかし森で見えない位置だ。騎馬隊が主力だな。

 およそ5千。見つかったのあっちか。

 正門――まあ北門に向かっているようだが、まさかあれを素直に入れるはずもあるまい。


 それに、あの数の騎馬でこの城塞を攻略できるわけもなし。

 こちらの攻撃が届かない位置から姿をアピールしつつ、歩兵を近づけるといった感じだな。

 さらに遠くに、より大きな気配がする。数はそうだな……2万。

 自領を守る最低限の兵を残しただけで、ほぼ全軍を投入してきたのか。

 勝てばいい――というより、勝つしか道は無いという捨て身の戦法か。


 ただ、相手も”魔略”が居る事を知っている。

 この状態を見越して、本来襲撃するはずだった王国軍と、次善の策であった伯爵領の軍が動いている可能性はある。

 どうやってここを攻めるしかないとさせたかの正確な手段は分からんが、あちらさんも勝算があっての行動だろう。


 だが俺に言わせれば詰んだ戦場だ。あんな程度の数でここが落ちるわけがない。

 やる以上、必ず用意している切り札――アレだろうが、その札をどう切る?

 人生どころか親族全ての命をかけた大博打。それをたった1枚の札に乗せるんだ。軽々には使うまい。

 しかし1枚じゃ無いとしたら? もしくは、あえて最初に――。






 そんなクラムの考えは、全てを知れる”神知”にとっては筒抜けである。

 それ故に、心の中では感心もあり驚きもある。

 通常の人間は、たとえ気配感知を極めても、この距離であそこまで強く感じる事はない。

 ましてや、正確な人数など分かりようが無い。

 これは明らかに、人の考えるスキルというというものから逸脱している。


 更に、相手の内情、軍容、周囲の情勢、地形、政治、経済……瞬く間にまとめ上げ、無数の可能性を構成しているのだ。

 ただ、そんな事だけなら驚きはしない。かつて同じ王室特務隊だった”千里眼”ビクターなら、容易く出来た。

 当然伏兵であれば魔法のカモフラージュはしているだろうが、それでもそれなりの魔法使いなら違和感に気付くし、上位の魔法使に生半可な隠蔽は通じない。

 知る方法は色々ある。だからクラムが別の手段で知ったとしても構わない。

 こういった能力があると知っておけばいい。


 だが、それが問題だ。




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過大戦力でわ?と思ってたらやはりそうだった(笑)
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