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『うつけと呼ばれた俺は、天下を壊したかったわけではない ――織田信長、乱世を組み直す』魔王ではない。 革命児でもない。 ただ、乱れた世を放っておけなかった。  作者: 御神常陸介寛浩(常陸之介寛浩)


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幕間 勘十郎

 兄が広間を去った後、勘十郎信勝はしばらく動けなかった。


 父が死んだ。


 その悲しみは本物だった。


 幼い頃、父に褒められた日のことを覚えている。


 馬に乗れた日。


 弓を正しく引けた日。


 兄のように奇矯ではなく、よい子だと言われた日。


 その言葉が嬉しかった。


 嬉しかったからこそ、いつからか重くなった。


 兄上は、いつも遠くを見ている。


 勘十郎はそう思っていた。


 人の顔を見ているようで、顔の奥を見ている。


 町を歩いているようで、道の先を見ている。


 家臣と話しているようで、家臣の背後にある損得を見ている。


 その目が怖かった。


 父に似ていない。


 だが、父よりも遠いものを見ている気がした。


 広間での兄の言葉が、耳に残っている。


 すべてを守ろうとする者は、たいてい何も守れぬ。


 違う。


 そう言いたかった。


 守らねばならない。


 家を。


 礼を。


 父の名を。


 家臣たちの心を。


 織田が織田であるための形を。


 兄上は、形を軽んじすぎる。


 形があるから、人は安心して従うのだ。


 形が崩れれば、人は不安になる。


 不安になった家中は、いずれ血を流す。


「勘十郎様」


 側に控えていた家臣が、低く声をかけた。


 勘十郎は顔を上げた。


 その家臣の目には、期待があった。


 悲しみだけではない。


 期待。


 恐れ。


 計算。


 兄が言った通りだ。


 家中はもう、割れている。


 勘十郎は静かに手を握った。


 兄を憎んでいるわけではない。


 けれど、このままでは織田家が壊れる。


 そう思ってしまった。


 その思いが、やがてどこへ行き着くのか。


 この時の勘十郎は、まだ知らなかった。

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