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第12話 俺は、うつけのまま変わる

 平手政秀が死んで、城の音が一つ減った。


 人が死ぬと、そこにあった声が消える。


 それだけのことだ。


 理屈ではそうだ。


 だが、その声が消えた後に残る静けさは、思ったより重かった。


 廊下を歩いても、後ろから小言が飛んでこない。


 衣の合わせが少し乱れていても、咳払いが聞こえない。


 飯を抜こうとしても、誰かが「若」と低い声で呼び止めない。


 町へ出ようとした時、足が一度止まった。


 止める者がいないからではない。


 止める声が、頭の中にだけ聞こえたからだ。


 若。


 今日は、何を見に行かれるのです。


 その見方で、本当に人が見えておりますか。


 そう言われた気がした。


「うるさい爺だ」


 俺は誰もいない廊下で呟いた。


 返事はない。


 返事がないことに、また腹が立った。


 死んだ者に腹を立てても仕方がない。


 仕方がないのに腹が立つ。


 父上の時もそうだった。


 政秀の時もそうだ。


 俺は、置いていかれることに慣れていないらしい。


 それが分かっただけでも、政秀の死は無駄ではなかったのだろうか。


 そう思った瞬間、また腹が立った。


 死んでまで役に立つな。


 生きて役に立て。


 そう言いたかった。


 言う相手はもういない。


 政秀の屋敷から戻った後、俺はしばらく誰にも会わなかった。


 正確には、誰かに会えば何かを言われるのが分かっていたから、会いたくなかった。


 慰め。


 忠義。


 お悔やみ。


 政秀様は最後まで若君を思っておられた。


 そういう言葉を聞けば、俺はたぶん怒鳴った。


 政秀が俺を思って死んだことなど、俺が一番分かっている。


 分かっているから許せない。


 人のために死ぬな。


 人のために死んだと言って、残された者に意味を背負わせるな。


 そんなことを思う俺は、やはり幼いのだろう。


 幼い、と政秀は言った。


 あの言葉まで残っている。


 始末が悪い。


 数日後、政秀のための寺を建てる話を進めた。


 弔いのためだ。


 表向きはそうなる。


 家中も、町も、そう受け取るだろう。


 織田信長は傅役の死を悼み、寺を建立した。


 聞こえはよい。


 だが本当は、それだけではない。


 俺が忘れないためだった。


 政秀の死を、きれいな美談にしてしまわないためだった。


 死んで諫めた忠臣。


 その言葉だけで片づければ、人は安心する。


 よい話にできる。


 だが、俺にとってはよい話ではない。


 政秀は死んだ。


 俺の前から、叱る声が一つ消えた。


 それは美談ではない。


 傷だ。


 だから形に残す。


 傷がふさがっても、痕が見えるように。


「寺の名は、政秀寺でよろしいのでは」


 佐久間信盛がそう言った時、俺は少し黙った。


 分かりやすい名だ。


 誰のための寺か、誰にでも分かる。


 政秀なら、照れた顔をしたかもしれない。


 いや、あの爺なら怒るか。


 若、私ごときの名を寺に残すなど、と。


 その後で、たぶん少しだけ嬉しそうにする。


「それでよい」


 俺は言った。


 佐久間は深く頭を下げた。


「承知いたしました」


 勘十郎もその場にいた。


 政秀の死以来、弟は俺に対して言葉を選ぶようになった。


 以前から選んでいたが、さらに慎重になった。


 俺を腫れ物のように扱っているわけではない。


 むしろ逆だ。


 俺がどこで怒り、どこで黙り、どこで傷つくのかを、見ようとしている。


 この弟もまた、変わり始めている。


 俺だけではない。


 父上が死に、政秀が死に、守山の火種がくすぶる中で、皆が少しずつ変わっていく。


「兄上」


 評定が終わった後、勘十郎が声をかけてきた。


「何だ」


「政秀寺のこと、母上にもお伝えしておきます」


「頼む」


「兄上からお話しにならなくてよいのですか」


「俺が行くと、母上が泣く」


「母上は、兄上が来なくても泣かれます」


「なら、行っても同じか」


「同じではありません」


 勘十郎は静かに言った。


「来ない悲しみと、来てくれた悲しみは違います」


 俺は弟を見た。


 そういうところだ。


 こいつは、人の心の微妙なところを拾う。


 俺なら見落とす。


 いや、見ないようにしてしまう。


「分かった」


 俺が答えると、勘十郎は少し驚いたようだった。


「兄上が素直に」


「お前も言うのか」


「皆が言うなら、たぶん本当です」


「最近、皆が俺に遠慮しなくなった」


「政秀殿のおかげかもしれません」


 その名が出た瞬間、胸の奥が鈍く痛んだ。


 勘十郎も気づいたのだろう。


 少しだけ目を伏せる。


「すみません」


「謝るな」


「ですが」


「政秀の名を、腫れ物にするな」


 俺は言った。


 少し声が強くなった。


 勘十郎は黙る。


「言え。あの爺の名は言え。言わなくなる方が腹が立つ」


「……はい」


「俺も、言う」


「はい」


 そうだ。


 政秀の名を避ければ、死がきれいに遠ざかる。


 それは駄目だ。


 あの男は、俺の足を止めるために死んだ。


 ならば俺の歩く道に、いつも転がっていなければならない。


 石のように。


 つまずくたびに思い出すように。


 その後、俺は母のところへ行った。


 土田御前は、静かに座っていた。


 父上が死んでから、母の顔にはずっと疲れがある。


 だが、それだけではない。


 俺を見る目に、以前よりも少し深いものがあった。


 心配か。


 恐れか。


 それとも、ようやく俺を一人の男として見始めたのか。


 分からぬ。


 母の目は苦手だ。


 町人や家臣の目は読める。


 母の目は読みにくい。


 読もうとすると、幼い頃の自分が邪魔をする。


「信長」


「はい」


「政秀殿のこと、聞きました」


「寺を建てます」


「そうですか」


 母は目を伏せた。


「あの方は、あなたをよく叱ってくださいました」


「叱りすぎです」


「それだけ、あなたを見ていたのでしょう」


「見すぎです」


「あなたも、人を見すぎます」


 母の言葉に、俺は少し詰まった。


 親子とは嫌なものだ。


 短い言葉で、こちらが避けているところへ来る。


「政秀の死を、俺はまだ許していません」


 俺が言うと、母は静かに頷いた。


「許さなくてよいのではありませんか」


「母上」


「死者をすぐ許す必要はありません。悲しみも怒りも、時間がかかります」


「俺には、その時間がない」


「ないと思っているだけです」


 母の声はやわらかい。


 だが、逃がさない。


「国を見るのでしょう」


「はい」


「家を見るのでしょう」


「はい」


「なら、自分の悲しみも見なさい」


 俺は黙った。


 まったく、どいつもこいつも。


 人の中に踏み込んでくる。


 政秀が死んでから、皆が少しずつ俺に物を言うようになった。


 政秀が命で開けた穴から、いろいろな声が入ってくる。


 それが狙いだったのか。


 あの爺め。


 やはり腹が立つ。


「兄上は」


 母が静かに言った。


 兄上?


 俺は一瞬、誰のことか分からなかった。


 母は父上のことを言っているのだと気づいた。


「あなたの父上は、悲しみを表に出すのが下手な方でした」


「父上が?」


「ええ」


「想像できません」


「あなたによく似ています」


「俺が父上に?」


「嫌そうな顔をしましたね」


「していません」


「しました」


 母は少しだけ笑った。


 父上が死んでから初めて見る笑みだったかもしれない。


「信秀様も、若い頃はよく怒りました。悲しい時ほど怒る方でした。だから、あなたを見ていると時々思います」


「何を」


「親子だと」


 俺は何も言えなかった。


 父上にはなれぬと思っている。


 だが、父上に似ていると言われると、胸の奥が妙に騒ぐ。


 嬉しいのか。


 嫌なのか。


 分からぬ。


「俺は、父上とは違うやり方をします」


「ええ」


「それで、母上を困らせるかもしれません」


「もう困っています」


「早いですね」


「昔からです」


 返す言葉がない。


 母は続けた。


「けれど、困ることと見捨てることは違います」


 政秀の言葉を思い出した。


 責めるのは見捨てる者のすること。


 叱るのは、まだ届くと信じる者のすること。


 俺は、小さく息を吐いた。


 どうやら俺は、思っていたより多くの者に見捨てられていないらしい。


 それはありがたい。


 そして、重い。


 ありがたいものは、たいてい重い。


 政秀寺の支度が進む間、家中では微妙な変化が起きていた。


 まず、俺を見る目が変わった。


 よくなった、とは言わない。


 むしろ、以前より怖がる者も増えた。


 父の葬儀で抹香を投げる男。


 守山の小競り合いを帳面で裁く男。


 傅役を死なせた男。


 そういう目だ。


 だが、同時に別の目も生まれた。


 平手政秀の死を受け、何かが変わったのではないか。


 寺を建てると言ったらしい。


 林美作守を斬らず、銭で責を負わせたらしい。


 勘十郎様と並べて触れを出したらしい。


 そういう噂だ。


 人は俺を理解していない。


 それでいい。


 だが、以前より簡単に「うつけ」と笑えなくなった。


 そのことは、廊下を歩くだけで分かった。


 頭の下がる角度が、少しだけ変わった。


 深くなったのではない。


 迷いが混じった。


 迷いは悪くない。


 決めつけよりはましだ。


 だが、迷いを放っておけば不安になる。


 不安は誰かに使われる。


 だから俺は、触れを出した。


 織田の名、信長の名、信勝の名を騙って荷を止めることを禁ずる。


 真の御用には、印と名を示す。


 名を示さぬ者に従うな。


 被害があれば帳面につけ、丹羽長秀へ届けよ。


 長秀は触れを見て、深くため息をついた。


「私の名が出ております」


「出した」


「存じております」


「不満か」


「不満というより、覚悟を決めるしかない顔をしております」


「よい顔だ」


「若様に言われると、不安になります」


「皆そう言う」


 長秀は本当に忙しくなった。


 米屋、馬借、鍛冶、湊の者たちが、少しずつ帳面を持ってくるようになったからだ。


 最初は遠慮がちだった。


 やがて、あれもこれもと持ち込まれるようになった。


 長秀は悲鳴を上げかけた。


 だが、整理した。


 この男は偉い。


 派手さはない。


 だが、国はこういう男で回る。


 刀を抜く者より、帳面を閉じずに夜を越す者が国を支える時もある。


「長秀」


「はい」


「人を増やせ」


「ようやくそのお言葉を聞けました」


「なぜもっと早く言わぬ」


「若様が帳面を増やすのに夢中でしたので」


「俺のせいか」


「はい」


 即答された。


 最近、家臣が俺に遠慮しない。


 いいことなのか、悪いことなのか。


 たぶん半分ずつだ。


 守山の件では、勘十郎も動いた。


 怪我をした馬借へ見舞いを出した。


 名を騙られた詫びとして。


 これは町で効いた。


 勘十郎様は、名を使われたことを怒っただけでなく、怪我人に詫びた。


 そう広がった。


 俺一人の触れより、弟の詫びの方が人の心に届いた部分もある。


 悔しいか。


 少しは。


 だが、それでよい。


 俺が届かぬところに、勘十郎の言葉が届く。


 勘十郎が見落とすところを、俺が見る。


 そうできれば、織田家は割れずに済む。


 そうできれば、だ。


 できるかどうかは、まだ分からない。


 なにしろ、人はそんなに都合よく動かない。


 ある夕方、俺は帰蝶と庭を歩いた。


 庭を歩くなど、俺らしくない。


 だが、ずっと帳面と書付ばかり見ていると、目が濁る。


 帰蝶に「庭の風くらい見た方がよろしいのでは」と言われ、なぜか従った。


 従った後で、少し腹が立った。


 だが、庭の風は悪くなかった。


「変わられましたね」


 帰蝶が言った。


「誰が」


「信長様が」


「そう見えるか」


「はい」


「どこが」


「以前なら、今の問いに『俺は変わらぬ』と返されたと思います」


「そうか」


「そして、私が理由を言う前に、別の話へ逃げたでしょう」


「よく見ているな」


「見ていますので」


 帰蝶は庭の木を見た。


 葉が揺れている。


 あの時と同じだ。


 風の通り道。


「急に品行方正になったわけではありません」


「なる気もない」


「でしょうね」


「そこで安心するな」


「少し安心しました」


 帰蝶は平然と言った。


「急に別人のようになられたら、それこそ危ういです」


「では、どう変わった」


「止まるようになりました」


 俺は足を止めた。


 帰蝶がこちらを見る。


「今のように」


「試したのか」


「少し」


「蝮の娘め」


「あなたの妻です」


「その返しも慣れてきたな」


「お互いに」


 帰蝶は薄く目元を緩めた。


 笑った、とまでは言えない。


 だが、最近はこの程度の変化が分かるようになった。


「政秀の死で、俺が変わったように見えるなら、それは腹立たしい」


「なぜです」


「爺の思惑通りだからだ」


「では、平手様は最後の奉公を果たされたのですね」


「だから腹が立つ」


「怒っていてよろしいのでは」


 帰蝶は静かに言った。


「怒りながら、受け取ればよいのです」


「そんな器用なことができるか」


「今、しておられます」


 俺は黙った。


 たしかに、そうかもしれない。


 俺は政秀に怒っている。


 今も。


 だが、その死で足を止めた。


 小言を思い出す。


 人の顔を見る時、以前より一拍置く。


 帳面の数字の向こうにいる者を、前より少し考える。


 それは、受け取っているということなのかもしれない。


 腹立たしい。


 実に腹立たしい。


「帰蝶」


「はい」


「俺は、うつけをやめた方がよいか」


 帰蝶はすぐには答えなかった。


 庭の奥から、鳥の声がした。


 夕方の光が、木の葉の隙間から落ちている。


「やめなくてよいと思います」


「意外だな」


「うつけと呼ばれることで、見えるものがあるのでしょう」


「ああ」


「なら、捨てる必要はありません。ただ」


「ただ?」


「仮面をかぶっているうちに、自分の顔を忘れないことです」


 俺は帰蝶を見た。


 この女は、政秀の書状を読んだわけではない。


 なのに似たことを言う。


 うつけの仮面は、若を守りましょう。


 しかし、いつか若自身を孤独にいたします。


 政秀の言葉。


 帰蝶の言葉。


 重なる。


「皆、俺を孤独にしたがらないな」


「それは、よいことでは」


「重い」


「人に支えられるとは、そういうことです」


「支える側は、軽い顔をしている」


「支える側も重いです」


 帰蝶は俺を見た。


「ですから、時々は気づいてください」


 その言葉は静かだった。


 責める声ではない。


 だが、深く残った。


 政秀は、自分の命で気づかせた。


 帰蝶は、生きたまま言葉で気づかせようとしている。


 どちらがいいかなど、比べるまでもない。


 生きて言え。


 皆、生きて俺を叱れ。


 そう思った。


 数日後、政秀寺の場所が決まった。


 まだ建物はない。


 ただ、ここに建てると定めただけだ。


 俺はその地に立った。


 勘十郎、帰蝶、政秀の子ら、佐久間、長秀、恒興、犬千代もいた。


 林秀貞も来た。


 柴田勝家も、無言で立っていた。


 風が吹いていた。


 政秀の死を悼むには、少し明るすぎる日だった。


 俺はそこで、短く言った。


「平手政秀は、俺を叱るために死んだ」


 場が静まる。


「それを美談にする気はない。俺は今も腹を立てている。生きて叱れと思っている」


 政秀の子が泣きそうな顔をした。


 俺は続けた。


「だが、あの死で俺は止まった。止まったから見えたものがある。ならば、この寺は、政秀を弔うためだけでなく、俺が止まる場所とする」


 言葉が自然に出ていた。


 飾った言葉ではない。


 うつけの言葉でもない。


 ただ、今の俺の言葉だった。


「俺は、うつけと呼ばれてきた」


 誰も動かない。


「これからも呼びたい者は呼べ。だが、俺はうつけのまま何も見ずに走る気はない」


 政秀の書状が、胸の内にある。


 父上の文箱が、城にある。


 勘十郎の視線が隣にある。


 帰蝶の沈黙が背後にある。


 長秀の帳面が国の小さな声を拾っている。


 犬千代の若い熱が、いずれ戦場で役に立つ。


 柴田の怒りも、佐久間の慎重さも、林の計算も、すべて使わねばならない。


 人は美しくまとまらない。


 尾張は、きれいな器ではない。


 ひびが入り、欠け、古い染みが残っている。


 それでも握る。


 血が出ても。


「俺は、うつけのまま変わる」


 そう言った瞬間、風が少し強く吹いた。


 誰かが息を呑んだ。


 馬鹿な言葉だと思った者もいるだろう。


 だが、俺にはそれが一番近かった。


 うつけを捨てて、急に立派な嫡男になる気はない。


 そんなものは嘘だ。


 父上の写しにもならない。


 勘十郎のように美しく座ることもできない。


 ならば、俺は俺のまま変わるしかない。


 政秀の子が深く頭を下げた。


 それにつられるように、周囲の者たちも頭を下げた。


 俺はその頭を見た。


 以前より深い者もいる。


 まだ浅い者もいる。


 迷っている者もいる。


 それでよい。


 迷いながら見ていればよい。


 俺もまだ迷っている。


 ただし、止まらずに迷うのではない。


 止まり、見て、迷い、それから決める。


 政秀。


 これでよいか。


 答えはない。


 だが、いつもの小言が耳の奥に聞こえた気がした。


 若、まだ足りませぬ。


 たぶん、そう言う。


 だから俺は小さく笑った。


 足りぬなら、続けるだけだ。


 城へ戻る道で、犬千代が妙に神妙な顔をしていた。


「どうした」


 俺が聞くと、犬千代は真面目に言った。


「若様。うつけのまま変わるとは、どういう意味でございますか」


「分からぬか」


「はい」


「俺も半分しか分からぬ」


 犬千代は目を丸くした。


「それで言われたのですか」


「全部分かってから言う言葉など、たいていつまらん」


「なるほど」


「今ので分かったのか」


「いえ、分かりませぬ」


 恒興が噴き出した。


 長秀も少し笑った。


 帰蝶は目を伏せている。


 勘十郎は、困ったように、けれど少しだけ安堵したように俺を見ていた。


 その顔を見て、俺は思った。


 変わるとは、たぶんこういうことだ。


 すぐに立派になることではない。


 誰かの言葉を、少しだけ胸に残すこと。


 今まで聞き流していた声に、足を止めること。


 それでも自分の足で歩くこと。


 俺は、うつけと呼ばれている。


 それはまだ変わらない。


 だが、うつけという名の中身は、少しずつ変えてやる。


 笑いたければ笑えばよい。


 その間に俺は見る。


 町を。


 城を。


 人を。


 そして、自分の傷を。


 政秀の死は、その最初の傷になった。


 深く、痛く、消えない傷に。


 だから俺は忘れない。


 忘れずに、次へ行く。

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