17.収納魔法の活用法(2)
「ふー、たくさん買ってきましたね。これだけあれば、家が建ちそうです」
「生活に必要な物も買ってきましたし、早速領民の皆さんに配りましょうか」
買い出しから帰ってきた私たち。目の前には買い漁った物が山積みとなって置いてあり、あとは必要な物を必要な人に渡すだけだ。
「私は領民に必要な物を配ってきますね。元村長さんと相談しながら、やってきます」
エリザがすぐにその場を離れ、動き始めた。それを見て、私も自分の事をやる気になる。
「次はどうするのですか?」
「次は家を作ってみるよ。必要な物が揃ったんだから、作れるはず」
「収納魔法で家を造る……。普通に考えれば、難しいと思います。ですが、ユマ様の収納魔法ならきっと出来るはずです」
物を移動する。それだけで、家が建つのかやってみないと分からない。でも、可能性は十分にある。
「さてと、どんな家を造ろうかな……」
「でしたら、設計図を見ながら造ってみてはいかがでしょうか? その方が、しっかりとした家が出来ると思うんです」
「そっか、設計図か!」
それがあれば、家の形が想像しやすい。私は王城に意識を飛ばすと、そこに保管されていた設計図を手元に移動させた。
「どんな家がいいかな……」
「あっ、この辺りが丁度いいじゃないでしょうか?」
「あー、いいね。流石クラリス、目の付け所が違う」
「少しでもお役に立てて良かったです」
クラリスが教えてくれた家が一番良かった。その設計図を頭に叩き込むと、資材をその通りに移動して配置した。
資材は一瞬で移動し――目の前に一軒の家が一瞬で建った。
「おぉ……本当に建った」
「こ、これは!」
この目で見るまで信じられなかったが、物を移動するだけで一瞬で一軒の家が建ってしまった。
二人で驚いていると、クラリスが家に駆け寄った。そして、家を触ってあちこち確認する。
「……ちゃんとした家です。まさか、物の移動で一瞬にして家が建つなんて……。ユマ様の収納魔法は可能性の塊ですね!」
「そうみたいだね。ここまで万能だとは思わなかったけれど、考え方次第で可能性が広がっていく感じだよ」
「設計図と材料があれば、どんなものでも作れそうですね。家だけでなく、もっと他の物まで……」
「それこそ、複雑な加工が必要な物も作れるかもしれないね」
家だけではなく、もっと他の物も作れたら、みんなの役に立つ。国も大きくなる。良いことづくめだ。
「それは後々考えていこう。今は、住みやすい家を造ろうと思う」
「私も一緒に考えます。家はユマ様にお願いしたいです」
そうして私は次々と家を造り、あっという間に百を超える家が建ち並んだ。その家をみんなの家と交換すると、泣いて喜んでくれた。
みんながひれ伏して感謝を言ってきたから、ちょっとそれはやりすぎなんじゃないかって引いちゃった。
でも、これだけ喜んでくれると、素直に嬉しくなる。ここは私の土地。好きなように発展させていくことが出来る。
どんどん大きくして、自分も他の人も住みやすい国になればいい。
◇
「さて、次はどんなものを移動させようかな?」
「食料問題は解決出来ますでしょうか? 小麦、野菜はあるのですが、肉がありません。このままでは、領民の体つきを普通にすることが出来ません」
「なるほど、肉……か」
この領地に移ってくれた領民の体は細い。このままだと農作業に問題が出てしまうため、早急に整えなくてはいけない事案だ。
「だったら、魔物肉を入手するのはどうだろう。食べられる魔物を捕捉して、ここに移動させて倒す」
「……ユマ様の能力があれば、狩りもしなくても済むんですね。ですが、どうやって倒しますか?」
「んー……あっ! それなら、いい案があるよ。見てて」
私はすぐに意識を外に向けた。食べられる魔物を探すと、巨大な猪の形をした魔物を見つけた。これなら、大丈夫そうだ。
その魔物を目の前に移動させると、山のように大きな巨体が現れた。
「ブモッ!?」
驚く魔物。体を固まらせて、こちらを見る。その隙に私は、猪の心臓を収納魔法の外――内側に移動させる。
「ブゥゥッ!」
その瞬間、魔物の体が痙攣し、力なく横たわった。ズシン、と振動が響くと、ピクピクと足を動かしたまま、動かなくなってしまった。
「こ、これは……一体何をなさったんですか?」
「魔物の心臓を収納魔法の外側に入れて、その小さい空間で圧迫して潰したんだよ」
「……そうですか! 元々、極小の収納魔法でした。内側が外側になり、外側が内側になった今。外側が極小の空間ということですね。その空間に物を出せば、空間に入りきらずに潰れると!」
そう。私の収納魔法は裏返している。今までは収納魔法の内側で処理していたが、心臓を外側で移動させれば潰れる。だって、外側は極小の空間しかないのだから。それで、一瞬で命を奪えるのだ。
「それだけじゃないよ」
「……と、いうと?」
私は死んだばかりの魔物に意識を向けた。そして、移動させる。革、内臓、血。すると、そこに残されたのはすぐに食べられる肉の塊だ。
「はい。処理が終わり」
「そ、そんな……! 手間のかかる処理を一瞬でっ!?」
「えへへ、凄いでしょ」
「す、素晴らしいです! これだと、食べれる部分を切り分けるだけで済みます!」
「後は防腐処理に時間停止をかければ……。これで腐らない肉の出来上がり」
「な、なんてことを……。ユマ様の収納魔法は本当に規格外です!」
クラリスが興奮した様子で褒めてくれる。それだけで、役に立ったのだと分かって、とても気分がいい。
そして、その肉を領民に配ると一斉にひれ伏して感謝を言われた。もう、神を崇めるように讃えられたから、やっぱり引いてしまった。
そ、そこまでしなくてもいいから! 普通にして!




