16.収納魔法の活用法(1)
「そ、それは本当ですか!?」
「うん、本当。あの男爵、脱税で裁かれたみたい。爵位剥奪されて、鉱山奴隷になったみたいだよ」
「ようやく、あの男爵がっ……!」
「報いを……受けたのね……」
「裁かれて、良かった!」
男爵の動向を確認して村人に伝えると、みんなが抱き合いながら喜んでいた。その様子に、心がホッとした気持ちになる。
「脱税は重罪になっていますから、その結果は当然でしょう。きっと、死ぬまで鉱山で働かされることになると思います」
クラリスの言葉を聞いて安心した。あの男爵はしっかりと罪を背負って生きていくみたいだ。
「それにしても、本当に小麦や野菜を移動させても大丈夫だったのでしょうか? もし、それが見つかったら……」
「今までさんざん好き勝手にされてきたんだから、当然だよ。むしろ、これだけで済んだことに感謝して欲しいくらいだよ」
エリザの心配そうな言葉にはっきりとした気持ちを伝えた。泣き寝入りなんて、しないしさせない。その罪はちゃんと償ってもらわなくちゃ困る。
じゃないと、あの人たちが死ぬ思いをした気持ちが報われない。もし、今回のようにちゃんとした罪を背負っていなかったら、私が手を下していただろう。
「これで、安心してここでの生活が出来るようになるね」
「そうですね。でも、一度にたくさんの小麦や野菜が手に入ったのが気がかりです。このままだと腐ってしまいますから」
「あっ、そっか。そっちの処理もしておかないといけないね」
腐ってしまったら、食べるものがなくて困ってしまう。それはどうにかしないといけない。
元領地にあった倉庫をこちらに移し替えて、その中で作物を保存していた。だけど、それだけじゃ足りない。ここは収納魔法の本来の力を発揮する時だ。
倉庫に意識を集中させると、収納魔法の能力を付与した。その能力は――。
「はい。今、作物に時間停止の力を付与したよ」
「えっ……今、なんて言いましたか?」
「時間停止の力を付与したから、作物が腐らなくなったよ」
「そ、そんなことが可能なんですか!?」
私の話にクラリスとエリザは驚愕した。二人とも、収納魔法の特性を覚えていなかった?
「収納魔法に入れた物は時間停止になるでしょ? だから、それを使ったんだよ」
「……その特性は知ってしましたが、使えるとなると……これは凄い能力ですね。作物が腐らないだけで、どれだけの恩恵が……」
「やっぱり、ユマ様が素晴らしいです! これで、安心出来ますね!」
クラリスは難しい顔をして何かを考え、エリザが喜んで褒めてくれた。今まで収納範囲の内側でしか効果がなかったものが、こうして世界に適応されると本当に凄いことだ。
「食べ物はこれでいいね。あと、何か困っていることはないかな?」
「それでしたら、次は家をどうにかしたほうがいいでしょう。あれでは、満足な暮らしが出来ません。大工はいるみたいなので、資材が必要ですね」
「素材……か。それもどうにか出来るかも。ちょっと、待ってて」
「流石に資材をどこかからか奪うのは……」
「大丈夫、そんなことはしないよ。自然の物を移動するだけ」
「それでしたら、大丈夫そうですね」
クラリスの了解も得られた。私は意識を森に向けた。私たちのデルトール地方とアラカマン王国の間には深い森がある。そこから、資材を調達するに限る。
だけど、ただ木を移動するだけじゃない。収納魔法で加工して、資材の形にする。
やり方は簡単。ただ、移動をするだけ。資材の形にくりぬくように移動をすれば――私たちの前に一瞬で木から資材が移動してきた。
「こ、これは!? どうして、加工されているんですか!?」
「資材の形で移動したからだよ。だから、こんなことも出来るんだよ」
「なるほど、そういう使い方があるんですね! 収納魔法……なんて便利な魔法でしょうか!」
資材に加工した木材を見て、クラリスは歓喜した。どうやら、このやり方は予想していなかったみたいだ。
興奮した様子のクラリスを見ながら、私は次々に木を資材に変えていった。すると、数分で山のような資材が積み上がっていた。
「一瞬でこれだけの資材が出来るなんて……。ユマ様は本当に規格外ですね!」
「私のユマ様ですから!」
クラリスが褒めると、なぜかエリザが自慢げに胸を張った。なぜそこで、エリザが得意げになるの?
「とりあえず、これだけあれば家を建て直せると思うよ。まぁ、この能力を使えば家を作れそうではあるけれどね。物を移動させて、家を作るって感じで」
「……なるほど、そういう使い方ですか。ユマ様の収納魔法は無限の可能性がありますね。でも、木材だけでは家は建ちません。他の資材も手に入れなければ」
確かに、その通りだ。木材だけで家が建つなんて思っていない。
「だったら、男爵の家から返してもらった調度品を売って、そのお金で残りの資材を買おう」
「そういえば、王都から一部屋拝借して、その部屋に詰め込んでいましたね。あれは、過剰に搾取した税なので、領民のために使うのがいいでしょう。では、物の売り買いは私に任せてください」
「あっ、今回は私もついて行ってもいいですか? 皆さんの生活に必要なものを見繕いたいです。それにユマ様の生活も豊かにしなければいけません」
「じゃあ、三人で行こう」
こうして、私たちはクラリスおすすめの町に移動して、必要なものを買い漁り、領地に戻った。




