第297話 対リール決戦 1
ーーーカイト視点ーーー
時間を少しだけ遡る
朝起きて、いつでも出れるように装備を整えて、ナリスト達が集まる部屋に行き
おっ、俺は5番目か!
なんて部屋に居る将の人数で、早めに到着したなって思ってた時だ
「リール軍が現れました!!」
飛竜隊の1人が部屋に駆け込んできた
「何処にだ?」
既に部屋に居たロンドベルトが聞く
「ガンダーの近くに現れました! 森を通ったと思われます!」
「ほぉ、ゴウルンを避けてガンダーからベススを狙う気か……」
ロンドベルトがそう言いながら、机の上に置いてた地図に目印を置く
その瞬間
「リール軍が現れました!」
「リール軍が!」
「リール軍!」
「敵影発見!!」
次々と飛竜隊の兵士が駆け込んできた
·········
ナリストが来て、他の将も集まり、全員揃った頃には……
「どういうつもりだい?」
地図のアチコチにリール軍を表す目印がアチコチに置かれていた
「???」
俺もアルスも首を傾げる
「部隊を多く展開してるが……戦力の分散は愚策だろ?」
ゼルナが言う
そうだよな? 普通なら残ってる都の防衛を固めて、一部の兵力を奇襲用に利用するとか……
もしくは徹底的に防衛しながら、他の領と同盟して援軍を送ってもらうとか……
そんな風に考えていたら
「……やられた、これは面倒だぞ」
ユリウスが呟いた
「どういう事だい?」
ナリストがユリウスの呟きに反応する
ユリウスが全員を見渡す
「恐らくだけど、リールの狙いは戦力の分散だと思う、この大量にある部隊の数、全てに指揮をする将がいる筈はない、いくつかは囮の部隊だろう」
「それで、なんで戦力の分散が狙いになる?」
ナリストが続けて聞く
「例えば、この部隊を無視して、リールとフライトを攻めるとするだろ……そうしたら当然他の部隊はこっちの都を攻めたり、もしくは攻めてる部隊を包囲して多方向から同時に攻めてくる……それをさけるためにはこっちも部隊を分けて対処しなきゃいけない」
「……そういう事か」
ロンドベルトが呟く
「それじゃ、こっちも部隊を分けたとしよう……そうだな……仮にベススで5部隊、オーシャンで2部隊としようか……どう動く?」
ユリウスがそう言ってアルスを見る
「んっ? ベススから2部隊はリールとフライト攻めに動いて……残りの3部隊は2部隊の周りに居るリールの部隊を撃退……オーシャンの2部隊で…………足りない」
「そう、合計7部隊だと対処しきれない……じゃあもっと部隊を分けていこう、10か? 20か?」
そこまで言われて俺も漸く理解した……
「リールの部隊に対処するために、こっちも強制的に戦力を分散させられるって事か……」
「将が居ない部隊は大したことないだろうけど……どの部隊がそうなのかなんてわからないしねえ……」
「だが、放置してると……何処かで合流して、他の都や部隊が攻められる」
俺、ナリスト、ゼルナと続く
リール軍は都の数や戦力の不利を、大量の部隊に分ける事で対応してきたって事か……
「報告で聞いた部隊の人数は少なくて50、多くて200……普通なら200の部隊に将を編成してると思うけど……」
「雑兵200人って可能性も普通にありえる」
レムレが言い、ユリウスが答える
「つうか、どうやってベスス付近まで部隊を送ってんだ? こっちも見張りとか居ただろ? どっかで気付かなかったのか?」
ライアンがロンドベルトを見る
「ふむ……恐らく少人数で移動させて、合流地点で集まって部隊になったのではないか? 2人か3人で行動しておれば、見張りもリールの兵だとは思わぬのかも知れんな……」
「……これからは1人でも怪しむようにした方が良いんじゃないか?」
ロンドベルトにユリウスが言った
お国柄って言うか、ベススの特徴なのかも知れないけど……戦時中にそれは不用心だって事だ
「それじゃあ……結局どうしたら良いんですか?」
ファルンが不安そうに言う
「ん〜……やっぱりある程度の分散は覚悟するしかないんじゃないのかい?」
ナリストはそう言うと、地図の上に目印を置いていく
「最初の予定通り、ゼルナはリールに、ロンドベルトはフライトに向かってもらう」
そして、ブライアンを見て
「ブライアン、アンタは飛竜隊を飛ばして他の都に現状を伝えて籠城するように言いな、そしてコルールに居るチップスには、出てきてコルール付近のリール軍の部隊の迎撃を伝えな」
「はい!」
「俺達はどうする?」
俺が聞く
「カイト達は……どうするかね……」
「アルスとシャルスは、ゴウルンからフライト間のリール軍の対処、僕とレムレはカイト様とライアンを連れてゴウルンからリール間のリール軍の対処をしよう……ゼルナやロンドベルト殿が都の攻略に集中出来るようにするべきだ……ついでにゴウルン付近の安全も確保も出来る」
ユリウスが地図を指しながら言う
「他の都はどうする? 姉上……籠城でも限界はあるぞ?」
「流石に放置する訳にはいかないが……しかし出撃させて、都を空にする訳にもいかないからねぇ……」
「……こっちも同じ事をするか?」
ゼルナとナリストの話に俺が続く
「それだと指揮官になる将がね……」
「私、やろうか?」
ルートゥが口を開く
全員がルートゥを見る
「いいのかい? アンタも戦い得意じゃないだろ?」
ナリストが心配そうに言う
「指示を出すだけなら、出来る……敵将居たら撤退するから……」
「なら任せるよ……だがルートゥだけじゃまだ足りないねぇ」
ナリストはそう言うと
「ナリスト様! 僕も伝令の後に戦わせて下さい!」
ブライアンが言う
「んっ? 大丈夫なのかい? 飛竜隊は飛び回ることになるから、戦闘には多くは参加できないよ?」
50人の飛竜隊……いや、何人か減ったから、もう50人も居ないのか
その殆んどが伝令としてベスス中を飛び回る……つまりブライアンと一緒に戦える飛竜隊の人間は少ないって事だ
ゼルナ曰く、飛竜隊は連携しながら戦う事で真価を発揮するらしい
俺はブライアンの実力を知らないから、単独か数人程度の連携でどこまで戦えるのか……
「姉上、ブライアンなら大丈夫だ」
「ゼルナ?」
ゼルナが堂々と答える
「今のコイツは俺の背中を任せられる、単騎でも充分に戦える」
「へぇ、お前がそこまで言うのは珍しいねぇ……よし、ならブライアン! アンタは戦場を飛び回って、不利な部隊の援護をしな!」
「はい! お任せください!!」
こうして軍議は進み、作戦が決まり、行動を開始した
··············
「兄さん、絶対に無茶しないでよ!」
「わかってる、よっぽどの状況にならない限りは前に出ない」
「…………3人とも兄さんを任せたよ、絶対に無茶するから」
わぁ、もう完全に俺を信用してねえ
アルスとシャルスがフライトに向かって進軍する
「よし、俺達も行くか」
「レムレ、先頭任せる」
「わかった」
レムレを先頭に、俺とライアン、そしてユリウスが後方の兵の指揮をする
そして、俺達もリールに向かって進軍する
先行して進軍したゼルナ達を追う形だ
·············
「そうか、ベスス軍が動き出したか」
フランが伝令からの報告を聞く
「我々も動きますか?」
ガルダがフランに聞く
「いや、まだだ……」
フランは地図を見る
「ゼルナがリールに、ロンドベルトがフライトに向かってるらしいな……ゴルグッドとラスターには耐えてもらう……」
そう言うと、フランはガルダ……そしてデオを見る
「マードルードとヤンマに死地を任せたのだ、余は確実に勝たねばならぬ……」
「では、我々はどう動きます?」
「……オーシャン軍も後詰めでこっちに向かっておるそうだな……カイトを捕らえたら、オーシャン軍は止まると思うか?」
「わかりませんね……捕虜にしてる間も奴等は行動してましたから……ただ、戦場で捕らえて目の前で人質として脅せば……士気は下がるでしょう」
「よし、なら先にオーシャン軍を仕留めよう……その後、ロンドベルトの部隊を蹴散らし、ゼルナの部隊を蹴散らし……そしてゴウルンの奪還に行こう…………口で言うなら簡単だな」
「オーシャン軍さえ仕留められたら、勢いで行けるでしょう……敵の前線部隊さえ潰せれば、まだ勝ち目はあります」
フランとガルダは話し合う
デオはその間も武器の手入れをしていた
その時……
「報告します! リールに向かうオーシャン軍が確認できました!!」
「カイトは居るか?」
「わかりません!!」
「軍勢の規模は?」
「恐らく2000程かと……」
「領主がいる部隊にしては少ないな……」
ガルダは考える
別の兵士がやって来る
「フライトに向かうオーシャン軍を確認しました!」
「カイトは居たか?」
フランが聞く
「水色の髪の将を確認しました!!」
「部隊の規模は?」
「約2000かと……」
「同じくらいか……」
フランはそう言うと悩み始める
「リールに向かう方ですね」
デオが言う
「何故だ?」
フランが聞く
「カイト・オーシャンは髪剃ってるのでしょう? なら、フライトに向かう軍勢の将は弟のアルス·オーシャンで間違いない……確かそいつがオーシャン軍の総大将ですよね? なら総大将とは部隊を分けるでしょ」
「そうか! 共倒れは防ぎたい筈だからな」
ガルダはそう言うとフランを見る
「フラン様、仕掛けましょう! あそこなら丁度いい舞台があります!」
「舞台? …………あぁ! あそこか! 確かに追い込めたら地の利があるな!」
「それなら、自分が先に向かって、待ち伏せしておきましょう」
デオはそう言うと立ち上がる
「うむ、任せるぞ! ガルダ……余が姿を見せたら、釣れると思うか?」
「フラン様の身柄は確保したいでしょう、貴女が捕まれば、俺達の負けですからね」
「よし! なら余が餌としてカイト達を誘い出す! ガルダ、任せるぞ?」
「はい、役目を果たしましょう」
こうして、リール軍も動き出したのだった





