第298話 対リール決戦 2
ーーーカイト視点ーーー
「……まだ痛え」
ライアンが首元を押さえる
「思いっきり噛まれてたもんな」
俺はそんなライアンに言う
「なんであんな機嫌悪いんだか……」
「ついてきたのに、全然乗ってないからじゃないのか?」
なんの話かって?
それは……
「ボブルスも活躍したかったんだろ」
「まだ、アイツ砂漠に慣れてないからなぁ……」
ライアンの愛馬、ボブルスの事だ
しっかりとオーシャンから連れてきてたのだが、戦いの場では乗ってない
理由は、さっきライアンが言った通り、ボブルスが砂漠に慣れてないからだ
南方の馬は砂漠に適応した馬だから、問題なく走れるが
東方の馬は砂漠に慣れてないから上手く走れないのだ
あれだな、芝適性は高いけどダート適性は低いみたいな
だから、ライアンは戦いの時以外はボブルスに乗って、砂漠を走って少しずつ慣れさせてる最中なのだった
そんなボブルスは今回もおいていかれるのを察して……ライアンに噛みついた
いやーマジでブチギレてたな……目が血走ってたし……
「戻ったら相手してやれよ」
「ああ、1日中乗り回してやる」
そんな風に話をしながら行軍を進める
2時間ほど経った頃かな?
前から伝令が駆けつけていた
「報告します! レムレ隊長が戦姫を発見しました!」
「フランが? ライアン、レムレの所行くぞ」
「おう!」
「君はここで待機、もしユリウスから伝令が来たら俺の所に連れてきて」
「はっ!!」
俺とライアンはレムレの所へ行く
··········
「レムレ」
「カイト様!」
レムレが俺を見てから視線を戻す
「そっちの方向か?」
「はい」
俺は望遠鏡を取り出して、レムレの視線の先を見る
居た
フランが兵士達に軍旗を掲げさせ、立っていた
こっちには気付いてないようだ
「ライアン」
「んっ……あの金髪が戦姫か?」
ライアンに望遠鏡を渡して、覗かせる
「ああ、間違いない……さて、どう見ても誘ってるよな?」
「間違いなく罠ですね、伏兵でも居るのでしょうか?」
「普通に考えたら居るだろうな……」
「だが、無視はできないんじゃねえのか?」
ライアンが俺に望遠鏡を返しながら言う
「そうなんだよなぁ……」
ここまま無視して進軍したら、フランは俺達の背後から仕掛けてくるかもしれない
もしくはゴウルンに向かうかもしれない
「かと言って見えてる罠に向かうのは……」
そう考えていたら
「はぁい! 報告報告!」
「ユリウス?」
ユリウスが待機させていた伝令の兵士と一緒にやって来た
「んっ? そっちの方向に戦姫が居るのか?」
ユリウスが、俺達の見てた方向を見て聞いてくる
「ああ、明らかな罠だな、そっちの報告は?」
俺が答えるとユリウスはフランとは反対方向を指差す
「アッチ側から複数のリールの部隊がこっちに向かってきてる……そっちに戦姫が居るなら、戦姫の方に向かう様に攻めてきてるな」
「選択肢無くなりましたね」
ユリウスの報告を聞いて、レムレが言う
「くっ……一応聞くが、どうする? フランに突撃するか、反対側のリール軍に突撃するか」
「戦うなら戦姫だろ!」
「わかってる罠ですが……このままだと挟撃されますし……戦姫に向かいましょう」
「僕も戦姫だな、この3人で仕掛けたら戦姫だろうが勝てるだろ?」
俺は数に入ってないな!!
「よし、なら直ぐに行動しよう」
俺が言う
すると、ユリウスが手を挙げる
「リール軍に追いつかれたら、僕は足止めに切り替えるよ」
「やれんのか?」
ライアンが聞く
「やれるやれる、ちゃんと追いつくさ」
そう言うとユリウスは自分の部隊の元に戻って行った
「よし、俺達も動くか! レムレも直ぐに動くだろうしな」
「了解! 大将!俺から離れるなよ!」
そして俺達はフランに向かって突撃を始めた
···········
ーーーレムレ視点ーーー
ボクは戦姫の姿を確認する
「ここから撃ち抜けるかな……」
戦姫はこっちに気付いていない……
竜の弓なら届く距離
「狙ってみるか?」
ボクはそう呟いて、矢筒に手を伸ばす
この矢筒には3種類の矢が入っている
1つは普通の矢、これは普通の弓で使う
2つ目は鉄製の矢……矢というか、釘を少し太くしたような物……普通の弓では全く使えないけど……竜の弓ならこれで馬の脚を抉る威力を出せる
3つ目は破裂矢……鏃に特殊な加工をして、火薬を詰めた矢……竜の弓で放った時に起きる発火現象
それを利用して、目標に当てた時に爆発する
「鉄製でいくか……」
鉄製の矢に触れる
その瞬間……
「!?」
戦姫がこっちを見た
「……気付かれた?」
いや、向こうからこっちの姿はまだ見えない筈……望遠鏡でも使わないと……
「でも、ずっとこっちを見てるな…………殺気に気付かれた?」
…………
僕は弓を構えて……鉄製の矢を放った
そして……
「全軍突撃! 狙うは戦姫!!」
『うおおおおおお!!』
ボク達は突撃を開始した
··········
ーーーフラン視点ーーー
一瞬
ホントに一瞬だけ殺気を感じた
「あっちの方向か?」
視線を向ける……何も居らぬよな?
気の所為か? そう思った時
「っ!?」
「ぐあっ!?」
目の前に高速で矢が迫ってきた
咄嗟に避けたら、余の後ろに立っていた兵士を貫いた
「例の弓兵か」
ガルダが言っていたな、オーシャン軍に凄腕の弓使いが居るようだと
姿が見えぬ距離から、正確に余の眉間を狙ってきおった
「成る程、ガルダに怪我をさせるわけだ……こんな矢をどうやって放ったんだ?」
絶命した余の兵に突き刺さった矢を見る
全てが鉄で出来ていた、こんなものが飛ばせるものなのか?
「むっ、見えてきたな……」
まだ豆粒の様に小さいが、こっちに迫ってくる軍勢
報告の事を考えたら、オーシャン軍で間違いない
「来たぞ! 皆逃げるぞ〜!!」
余は兵達に指示を出して、移動を始める
·············
ーーーレムレ視点ーーー
「避けられた!?」
戦姫の目の前まで迫った矢
彼女は矢を認識すると素早く避けた……
死角からじゃないと当てられないか!
「戦姫が動いた!」
ボク達の姿を確認したのか、戦姫は走り出した
リール軍の兵士も走っていく
やっぱり、誘き出そうとしてる感じだ
「さて、何が出てくる……」
暫く追い続ける
走りにくい砂漠の砂が、体力を奪っていく
「…………」
まだ向こうは逃げていく……伏兵は出て来ない
……こっちの体力切れを狙ってる?
「んっ? なんだあれ?」
戦姫の先の方向に、建物が見えてきた……
「全軍停止! 止まって!」
ボクは突撃を止める
そして、カイト様の元へ向かう
···········
ーーーカイト視点ーーー
レムレの部隊の動きが止まった
俺達も止まる
後方ではユリウスが迫るリール軍に向かって足止めを始めた所だった
「カイト様!」
「どうしたレムレ!」
レムレが走って来た
「戦姫は建物の中にボク達を誘ってるみたいです?」
「建物? どんな建物」
「えっと、こう……丸い……」
レムレが手を動かして建物の形を表す
ドーム状の建物……確かここらへんは……ああ!
「コロシアムか……」
「コロシアム?」
「闘技場だ、なんか昔は闘技大会とかで使ってたらしい」
「今は使ってないのか?」
ライアンが聞いてくる
「みたいだぞ? 結構デカい建物だが……砦代わりに使ってるのか?」
「どうしますか?」
「リール軍には追いつかれてるし……ユリウスもいつまで相手してられるかわからない、元々罠にかかるつもりだったんだ、いくぞ!!」
「わかりました!」
俺の指示で突撃を再開する
俺の目にもコロシアムが見えてきた
外にリール軍の姿は見えないな……
全員中に入ったのか?
レムレは部隊を出入口で止めていた、俺とライアンがレムレの側に行く
「どうだ? 中に兵士を伏せてる様子があるか?」
「いえ、ボクの見た限りだと中に人はそんなに居ません……」
「そんなに? ……何人くらい?」
「2人です」
「……2人?」
えっ? 2人? どういう事?
『うおおおおおお!!』
「うおっ!?」
大人数の咆哮が響いた、そして左右からリール軍の部隊が現れて迫ってきた
コロシアムの他の出入口から出てきた様だ
「挟み撃ちか!」
「対応します!」
「よっしゃ! 暴れてやるか!!」
レムレとライアンが迎撃に動こうとすると……
「追いついた!」
ユリウスが追いついた
「ユリウス! 追っ手は?」
「敵兵は結構倒せた、1人厄介な奴が居たがな! ほら来た!!」
ユリウスが指差す方向から、誰かが走ってくる
「ガルダ!!」
レムレがそう言うと矢を放つ
ガルダは矢を避けて駆け続ける
そして、俺の目の前に迫ってきた
こいつ、一瞬で兵士とユリウスをすり抜けやがった!!
「させるかよ!!」
ギィン!!
ガルダが俺に向けて放った拳を、ライアンが鎧の腕部分で受け止めた
そして、素早く剣を振ると、ガルダは俺達の頭上を跳び越えて剣を避け、コロシアムに入っていった
「ちっ、避けられた!」
「…………奥で待ってるみたいですね」
「完全に誘ってるのか……中に入るべきか?」
俺が3人を見る
「どうします? カイト様はここに残ってボク達で仕留めてきますか?」
「大将から離れるのは駄目だろ?」
「誰かはここに残って、左右のリール軍の迎撃をするべきだろ?」
3人がお互いに見合って、そして俺を見て……
「カイト様、僕がここで迎撃してるから、レムレとライアンと一緒に中に向かって下さい」
ユリウスが言う……普段砕けた口調の奴が敬語で話す
それだけ真剣だって事だ
「俺もか? ここでユリウスと残らなくていいのか?」
「僕は迎撃で手一杯なので、カイト様の事まで手が回らないので、2人に任せます」
「わかった……レムレ、ライアン、頼むぞ」
「はい!」
「おう!」
俺達はコロシアムに3人で突入する
兵士達は迎撃の為にここに残す
場合によっては、ここまで逃げて合流して戦えばいい
しかし3人かぁ
戦姫とガルダと誰か……
いざという時は……





