第295話 ベススに伝わるもの
ーーーゼルナ視点ーーー
「ゼルナ、来な」
軍議が終わった後、部屋を出る前に姉上に呼ばれた
「なんだ?」
「これから出掛けるよ」
「どこにだ?」
「ベススの領主にしか伝えられてない、秘密の場所さ」
……そんな場所があったのか?
部屋から出て、カイトに見送られながら外に出る
飛竜に姉上と乗り、姉上の指示する場所に向かう
「ここか?」
「ああ、ここだ」
高度を下げ、飛竜から降りる
周りには岩や崖しかない
姉上が1つの岩に近寄り、触れる
「ーーーーーーーー」
姉上が何かを呟くと
ゴゴゴゴ
「へぇ……」
岩に人が1人通れるくらいの穴が開いた
「ついて来な」
「良いのか? 領主にしか伝えてないんだろ?」
「必要だからね」
姉上に続いて、岩に入る
「……随分と広いな、岩の大きさと合わないだろ?」
「ここはそういう場所だからね……」
そう言って姉上は奥に向かう
俺もついて行く
···········
「よし、着いた」
「…………」
広間だろうか? 拓けた場所に辿り着いた
「ゼルナ、あれが見えるかい?」
「……戦斧か?」
「そう『砂漠の豹牙』……ベススの所持してる国宝さ」
「!? 国宝がベススにもあったのか!」
そんな話は今まで1度も聞いたことがない
「初代様以外は誰も使えなくてね……ここに封印してたのさ」
「……父上や祖父もか?」
「ああ、もちろん私もね」
「それを何故俺に?」
「アンタなら使えると思っただけさ……それに、私に何かあったら、次の領主はアンタだから、伝えておく必要があると思った」
「……縁起の悪いことを言わないでくれ」
俺はレーギスターンの置かれてる台座に向かう
んっ? 台座の側に墓?
「掴めば良いのか?」
「ああ、掴んだら試練が始まるから、頑張りな」
「試練?」
…………レーギスターンを掴む
············
突然の浮遊感
いつの間にか砂漠に立っていた
「これは?」
『本当にここに?』
「!?」
後ろから声がした、振り返ると1人の男性と……豹が居た
『ああ、この砂漠を開拓して、自由にしていいそうだ! 俺はここを楽園にしてみせる!!』
男は楽しそうに話す
『物好きな男だ……まあ暇だから我も協力してやるよ』
豹が喋る……喋っている
場面が変わる
大勢の人が都を作ってる所だ
「これは……昔の記憶か?」
レーギスターンが俺に見せてるのか?
『もうすぐ都も完成だ!』
『そうすれば、正式にベスス領が完成か』
男と豹が楽しそうに話している
そこから何度も場面が変わる
男が仲間達と都を守るために戦ったり
ベススを豊かにする為に、色んな政策を試したり
男の側にはずっと豹が居た
しかし、別れがやってきた
『どうやら、我も寿命のようだ……』
『…………嫌だ、死なないでくれ』
横になり、やつれ果てた豹に男が抱き着く
『我も死には逆らえん……だが、我もベススから離れるのは嫌だな……』
豹はそう言うと男を見る、力強い目だ
『頼む、我の亡骸で武具を作ってくれ……武具となりて、お前を守ろう』
そう言うと、豹は男の頬を一舐めして力尽きた
『!!……わかった、共に戦おう』
男は豹の亡骸を武具にした
牙を溶かし、鉄と混ぜて刃とし
骨を斧頭や柄とし
毛皮を握りに巻き付け
結晶のような物を石突に加工した
そして、レーギスターンが創られた
男はレーギスターンを振るい、老人として動けなくなるまで戦い続けた
まともに身体が動かなくなってきた時に……息子を連れてここまで来た
『お前に使えないなら、いつか使いこなせる者が現れるまで……ここで眠らせよう』
『父上、申し訳ありません……』
『構わない、俺とお前は違う人間なんだ、向き不向きもあるしな……』
老人はそう言うと少しだけ考える素振りを見せた
『なあ、俺の亡骸はここに埋めてくれないか?』
『何故です?』
『友と共に眠りたい……』
『……わかりました』
そうして老人……初代ベススは寿命を迎えた
遺骨はレーギスターンの側に埋められた
あの墓は初代の墓だったのか
「んっ?」
また風景が変わった
真っ暗な空間だ
『我の記憶はどうだった?』
目の前に豹が現れた
「死んだ後も、ベススを守っていたんだな」
昔、祖父から豹がベススの守り神と聞かされてたが……
『友の残したものだからな』
豹はそう言うと、牙を剥き出しにして唸る
『ゼルナよ、力が欲しいのだろう?』
俺の名前を知ってるのか?
「ああ、欲しいな」
『ならば、我に打ち勝ってみせよ!』
豹はそう言うと、俺に向かって飛び掛ってきた
「んっ?」
いつの間にか右手はレーギスターンを握っていた
これで豹を倒せってことなのか?
「…………」
ドシンっと、豹が俺の身体にぶつかり、牙を俺の首に突き刺した
痛みは無いな……
『……何故斬らぬ? お前ならばそれで我を斬れただろう?』
豹が聞いてくる
「斬る必要は無いからな」
『力が欲しいのではないのか?』
「俺が欲しいのは守る為の力だ、ベススを、仲間を、友を守る為の力……初代の友であり、ベススを見守っていたお前を斬るのは違うだろう?」
俺がそう答えると、豹は俺の首から口を離した
『全く、アイツと同じ事を言う奴だ……』
そう言うと豹は俺から降りた
『気に入った!この力、お前に貸してやる!』
豹がそう言った瞬間、景色が元の場所に戻った
「…………姉上」
「おっ、終わったかい?」
「どれくらい時間が経った?」
「10秒くらいかね、私からしたらそんなに時間は経ってないよ」
「そうか……」
俺は右手に握っているレーギスターンを見る
とても軽い……まるで手の一部の様だ
「どうやら試練は乗り越えた様だね」
「ああ、認めてくれたようだ」
凄まじい力を感じる……試練は乗り越えたが、俺に使いこなせるのか?
強すぎる力は俺だけじゃない、周りも傷つける
守る為の力が、仲間を殺してしまう
それは絶対にさけなければならない
「姉上、ありがたく使わせてもらうが……頼り過ぎないようにするぞ?」
「だから任せられるのさ」
姉上はそう言うと外に向かう
俺も姉上についていこうとして、墓の前で立ち止まる
墓に向かい、礼をし……
「貴方の友をお借りします……」
そうして、外に出て、ゴウルンに戻った





