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第292話 脱出 4

 

 ーーーカイト視点ーーー


 あれから数時間経った


「おっ、日の出か」


 荷台から顔を出し、外を見ると、東の空から太陽が顔を出そうとしていた

 もうすぐ、朝が来る



「何とかゴウルンには間に合いそうですね」


 カイナンがそう言って水を飲む

 本格的に暑くなる前に、ゴウルンに辿り着ける、太陽が出てからの砂漠はとても暑いからな、準備をしないと命に関わる



「んっ?」


 大きな建物が目に入る


「カイナン、あの建物は何かわかるか?」

「はい?」


 カイナンが外を見る


「ああ、あれはコロシアムですね、昔は南方ではあそこで闘技大会を開催していたそうです。 今は全く使われてないですから……所々崩れてきてるそうですよ」


「コロシアムか……」


 南方が荒れる前の建物って事か


「カイナンさん、後方から何か来てます」


 従業員の1人が言う


「……あれって」


 カイナンが望遠鏡を取り出して、確認する


「!! 速度上げて!! ガルダだ!」

「速度上げるのか?」

「また追ってきた事、それにあの雰囲気、カイト様を乗せてる事がバレてます! 少なくとも彼は確信してます!」


 馬車の速度が上がる


 それでも徐々にガルダが近付いてくる


「あの人なんだよ!? 何で追いついてくるんだ!?」


 従業員の1人が叫ぶ


「くっ! どっかで樽の仕掛けに気づかれたか? 取り敢えずカイト様は念の為隠れてください!」

「わ、わかった!」


 俺は樽の中に隠れる


「皆さん! 正念場ですよ! 何が起きても耐えてください!」

『はい!!』


 樽の外からそんな声を聞いた瞬間


 ドゴン!!


 大きな衝撃

 浮遊感に襲われ


 ドスン!!


「っ!?」


 身体中に衝撃が走った

 飛ばされて打ち付けられたような感触だった



 ·············


 ーーーカイナン視点ーーー


 天地がひっくり返る

 いや、これは、馬車がひっくり返された?


 ドスン!


「がはっ!?」


 荷台から落ちて、砂地に叩きつけられた

 周りを見渡すと、ひっくり返った荷台、砂漠に散り散りに倒れてる従業員達

 そして……


「さっきはよくも謀ってくれたな」


 殺気を飛ばしながら、私の前に立つガルダ


「謀った? どういう事ですか?」

「貴様達がカイト·オーシャンを匿った事だ……樽のどれかに隠したんだろ?」

「カイト·オーシャン? 罪人を追っていたのでは? それに樽も全て調べたはずでしょ? ぐっ!?」


 痛む身体を起こした瞬間に首を掴まれて、持ち上げられた


「樽の蓋を利用したんだろ? 偽の底をワインで隠した、ワインの匂いで気付かなかったよ」


 やはり、バレている


「全部……貴方の推測でしょ? ごほ! こんな事して良いんですか? 商会を敵に回しますよ?」

「全員殺せば商会にはバレないだろ……この砂漠なら死体もすぐに埋まる……」


 この人、全員を殺す気か!


「おい! カイト!! 聞こえてるだろ!! 出て来い!! 出て来ないなら、1人ずつ殺していくぞ!!」


 ガルダが叫ぶ


 この男はカイト様の性格を理解している!

 ダメですカイト様! 出て来てはいけない!


 ギギギ!


「ぐっがぁ!?」


 首が絞まる、息が……


「カイト! コイツの首をへし折るぞ!!」


 意識が……とおの……


「やめろ!!」


 ·············


 ーーーガルダ視点ーーー


「やめろ!!」


 そう叫んで、樽の1つが動いた

 少し力を緩める


「かぁ! かっ……」


 カイナンが苦しそうにもがく


 樽の蓋が開き、カイトが出てきた…………何で髪が無くなってるんだ?


「手を離せガルダ! 目的は俺だろ?」


「ふん」

「げほっ! ごほっ!」

 手を離す、カイトが出てきた以上、カイナン達を殺す必要は無い

 商会から批判されても、敵対行動をしたと言えばどうとでもなるからな


「それにしても、よく逃げ出せたな……正直驚いたぞ」


 カイトに近付く


「運は良くてね」

「運だけじゃないだろ、どうやらお前には人を引き寄せる才がある様だ」


 カイトとカイナンにどんな繋がりがあるかは知らないが、カイナンが命懸けで助けようとした……それが事実だ

 それは最も厄介な才能だ


「もう逃げられないように、両腕と両足の骨を折ってやるよ……」

「このまま無抵抗で捕まるとでも?」

「抵抗したら、こいつらを殺す……そう言えばお前は抵抗しないだろ?」

「……………」


 少しコイツの事がわかってきた

 コイツは非情になりきれない

 ……それが命取りになるんだがな


 カイトの目の前に立つ


「さて、先ずは右腕だな」


 カイトの右腕に手を伸ばす

 触れるか触れないか、そんな瞬間だった


 バン!


 何かが、私の右手を弾いた


「!?」


 なんだ? 右手を見ると、親指の爪が無くなって、血が噴き出した


「ぐっ!?」


 なんだ!? カイトが何か仕掛けたのか!?


「えっ?」


 違う! コイツじゃない! 


 周りを見渡す

 カイナン達は倒れている、何人かこっちを見ているが、誰も動いてはいない!!


 ヒュ!


「!?」


 聞こえた! 風を切る音

 後ろに身体を反らす

 目の前を矢が通り過ぎた


「矢!?」


 飛んできた方向を見る

 誰もいない、何もない!

 だが! 何かがある!! 矢が飛んできたのは事実だ!


「うおおおおおお!!」


 カイトを捕まえて走る、それが今やるべき事だ!

 そう思い、カイトに向かって走り出した時


 ドス!


「ぐっ!?」


 矢が左脚の太腿を貫いた


 足が止まる、その瞬間に


 ドスン!ドスン!


 私とカイトの間に砂煙が舞い上がった

 そして2つの落下音

 ……っ!!


 目の前に迫る拳

 咄嗟に受け止める


 砂煙が晴れる


「よお、あんたリールの将であってる?」


 目の前の猫の獣人が言ってきた

 その後ろには赤い鎧を着た男が立っていた


「何者だ!」

「オイラはシャルス、後ろの奴はライアン、オーシャンの将だ!」


 オーシャンの!!

 何処から現れた!!


 拳を離して距離を取る、跳んでる間に矢を引き抜く


「そいつはガルダ! リールの将だ!」


 カイトが叫ぶ

 その瞬間にシャルスが目の前に迫る

 速い!


 バシッ!


「おっ! オイラの動きについてくるか!」


 バシッ! ガッ!


「ちっ! 獣人が!」


 この速さ、力強さ、やりにくい

 それに、あの赤い鎧、アイツも只者じゃない……

 厄介な相手が2人、そして……


 ヒュン!


「くっ!」


 矢が頬をかすった!

 この矢!

 くそ! 一気に不利な状況になった!

 何故オーシャンの奴等がここにいる!

 ゴウルンはどうなった!!


「ガルダァァァァァ!!」


 聞き覚えのある声


「翔べ!!」


 声を頼りに見ずに跳ぶ


 ガシッ!


 空中で掴まれ、抱きかかえるように持たれる


「ゴルグッド将軍!」


 私を救出したのは、ゴウルンを守っていたゴルグッド将軍だった

 将軍はそのまま馬を走らせる

 オーシャンの連中は追ってこない


「将軍! ゴウルンは!」

「すまない! 守りきれなかった! ナリストが本隊を連れて襲撃してきた! 連日の襲撃で弱っていた所を攻められて壊滅だ!」

「私を救出したのは?」

「たまたま見かけたからだ!! お前は何故あそこにいた!」

「カイト·オーシャンに逃げられました、追い詰めましたがオーシャンの連中が現れて追い詰められました」

「そうか……急いでリールに戻るぞ! 状況は最悪だが、まだ戦える!!」


 私は体勢を整えて、馬に跨がる


「そうですね、フラン様に報告し、挑みましょう……リールは追い詰められてからが厄介だと、奴等に思い知らせてやりましょう」


 出し惜しみなし、総力戦で挑む…………

 全員潰してやる……

 私は握っていた矢を砕いた


 ·········


 ーーーカイト視点ーーー


 ガルダが馬に乗ったゴルグッドに連れて行かれた

 一瞬の出来事に全員止まっていた



「流石に今のはしょうがないよね?」


 シャルスがこっちを見て言ってくる


「まあ、しょうがないな」


 ライアンが答える


「俺はさっきから驚きすぎて何も言えない」


 俺はそう言って空を見上げる

 2匹の飛竜が飛んでいるのが辛うじて見えた

 シャルスもライアンも、あの高さから飛び降りてきたのか!?


「取り敢えず、お互いに状況を確認し合った方が良いよな?」

「そうだな、ゴウルンに行こうぜ、さっき占領したから、今はベススの都だ」


 ゴウルンを攻略したのか!!



 ·········


 ーーーレムレ視点ーーー



「よし、カイト様は無事……無事?」


 何故坊主に?

 ま、まあ一応怪我はしてないみたいだし、ライアン達が傍にいるから、もう大丈夫だよね?


「レムレさん、合流しなくて良いんですか?」


 ボクが乗ってる飛竜を操っているブライアンが言う


「合流したいけど、先にゴウルンに戻って報告した方が良いよ、それにカイト様を助けてくれた人達も保護しないといけないから、人手を集めないと」

「わかりました、じゃあ急いでゴウルンに戻りましょう!」


 ブライアンは飛竜を動かす


「それにしても、無茶しますね、まだ怪我が治ってないのに」

「矢を射つくらいなら問題ないよ……」


 ボク達は逃げたリール軍を追っていた、そうしたらカイト様がガルダに襲われてるのをボクは見付けた

 ボクの矢でガルダを足止め、その間にシャルスとライアンがカイト様を保護する

 そう決めて行動したけど……まさか飛び降りるとは……

 ボクよりもあの2人の方が無茶してるよね?


















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