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巨大な扉は、まるでこの部屋の主のように静かに佇んでいた。
表面には深い傷が刻まれ、古い金属が黒ずんでいる。
それでも、扉の向こうからはかすかな風が流れ込み、外の気配を確かに感じさせた。
あなたは取っ手に手をかけ、ゆっくりと押し始める。
重たい扉はすぐには動かない。
しかし、力を込め続けると、やがて軋む音を立てながら少しずつ開いていった。
隙間から光が差し込む。
「……外だ。」
その言葉が自然と漏れた。
暗闇に閉じ込められていた時間が、光の中で溶けていくようだった。
冷たい風が頬を撫で、胸の奥に張り付いていた緊張がゆっくりとほどけていく。
一歩踏み出そうとしたその瞬間――
ふとポケットを探ると、指先が薄い紙に触れた。
取り出してみると、それは 診断書 だった。
端が折れ、ところどころ湿気で波打っている。
記載されている文字が目に入る。
「記憶喪失症の疑い」
「外傷性ショックによる長期的な記憶障害の可能性」
「……これは、俺のものなのか?」
胸の奥がざわつく。
診断書には名前が書かれているが、
その文字列を見ても、何ひとつ思い出せない。
あなたはその紙を見つめ、しばらく考え込んだ。
しかし、いくら考えても答えは出なかった。
自分は誰なのか。
なぜこの館にいたのか。
そして――この診断書が意味するものは何なのか。
冷たい風が紙片を揺らし、あなたはゆっくりと外へ踏み出した。
――脱出成功。
- END -




