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12回目の人生、与えられた選択肢を全て拒否して永遠の泥沼を楽しみます『三人の怪物を鎖で繋いだ至高のティータイム』  作者: あとりえむ


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第14話

建国記念祭の当日が訪れた。


王都は朝から狂乱じみた興奮に包まれ、広場を埋め尽くした民衆の声が王宮の最上階まで届いていた。


アルヴィンは演説の最終確認を行い、マリアは袖口に隠した小瓶の感触を確かめ、レオンハルトは配置を終えた兵たちへ無言の合図を送る。


三人はそれぞれ、今日という日が自分たちの勝利の日になると信じて疑っていない。


リゼットは侍女の手を借りて、汚れひとつない純白のドレスに身を包んだ。


鏡の中に映る自分は、誰の目にも悲劇に耐える清廉な令嬢に見えるだろう。


けれど、彼女の扇の下に隠された手元には、昨夜までに収集し終えた彼らの全犯罪記録と、それを各所に公表するための冷酷なスケジュール表が握られていた。


彼らが祝祭の舞台で踊れば踊るほど、リゼットの懐には国家予算規模の賠償金と、逃れようのない支配権が転がり込む。


「さあ、最高の収穫祭を始めましょうか」


リゼットは満足げに目を細め、バルコニーへと続く扉を開いた。


眩い陽光と民衆の歓声、そして爆発を待つ三つの陰謀が彼女を迎え入れる。


建国記念祭の幕は切って落とされた。


それは王国の栄光を祝うものではなく、リゼット一人がすべての欲望を食い尽くすための、贅を尽くした晩餐会の始まりだった。


◇ ◇ ◇


王宮の大広間は、数千のキャンドルが放つ光と、高価な香水の香りに満たされていた。


建国記念祭の夜を飾る舞踏会は今、まさに最高潮を迎えようとしている。


きらびやかな仮面を纏った貴族たちが、オーケストラの奏でる旋律に合わせて優雅に、あるいは熱狂的に踊り続けていた。


リゼットはその喧騒の中心で、誰よりも美しく、そして誰よりも冷ややかにステップを刻む。


彼女の指先を握るアルヴィンの手は、期待と焦燥で微かに震えていた。


彼はダンスの合間に、広間の四隅に配置した自身の近衛兵たちへ、何度も合図を送っている。


演説の鐘が鳴るのと同時に、強引にリゼットを連れ出し、逃げ場のない「愛の告白」を国民の前で押し付けるつもりなのだ。


リゼットは彼の必死な形相を仮面の裏側で見つめ、心の中でそっと嘲笑った。


視線の先、柱の影にはマリアが佇んでいる。


彼女が握る扇には、リゼットの肌をわずかにかすめるだけで意識を奪う猛毒が仕込まれていた。


アルヴィンの演説を不祥事の暴露で叩き潰し、混乱に乗じて姉を「保護」という名の檻に閉じ込める。


マリアの瞳に宿る暗い悦びは、もはやヒロインのそれではなく、獲物を追い詰める蜘蛛のようだった。


さらに、広間を見下ろすバルコニーの影。


そこにはレオンハルトが、冷徹な狩人のように佇んでいた。


彼の合図一つで、王宮を取り囲む私兵たちが突入し、この華やかな祝祭を血の滲むクーデターの舞台へと書き換えるだろう。


三者三様の殺意と独占欲が、目に見えない糸となってリゼットの身体に絡みついている。


誰もが、今夜の勝者は自分だと信じ、隣で笑う「愛しい女性」の真意など微塵も疑っていない。


リゼットは最後の一回戦となるワルツの旋律に身を任せ、扇を広げた。


「さあ、誰から自爆してくださるのかしら。楽しみで仕方がありませんわ」


仮面の下で、彼女は極上の悪意を込めて、美しく微笑んだ。

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