サフラン&クローバーグループ
美緒:みんな……ちょっと聞いて。翔が私のLINEを丸2日未読放置なんだけど。
香織:あはは、実習お疲れ様です先輩。未読は翔先輩の通常運転じゃないですか?
遥:翔にとって“スマホ=時計”だからね。それ以外の機能は存在すら忘れてるよ。多分!
美緒:いやいやいや、そんな原始的な生き物いる!?
私が実習でメンタルすり減らして心細いのに、なんで未読なのよ!
香織:あ、そういえば今クローバーで一緒にバイト中ですけど……
翔先輩、綺麗なお客さんにカクテル作ってますよ。めっちゃ優しい笑顔で。
美緒:はああああ!?
なんでその女には笑うのよ!?私のLINEは未読のくせに!!意味わかんないんだけど!!
俊:いや、あれ営業スマイルだから。あいつ眠いときもあの顔になるし。
遥:美緒さん、落ち着いて。
翔に“デレる”という概念は存在しません。物理的に。
美緒:存在しないって何よ!?
私には……多少は……1ミリくらいはあるでしょ……?
香織:[スタンプ:既読スルーの女の顔]
美緒:そのスタンプやめて!!
香織:あ、追撃。
翔先輩がスマホ見ました。スマホ見て、さっきのお客さんと笑ってます!!
美緒:何笑ってんのよ!!今すぐ私のLINE見なさいよ!!
その女のグラス叩き割ってでも携帯見せなさいよ!!
俊:いや割るなよ。器物破損だろ。
遥:翔に「今すぐ返信しろ」と言っても、「後で返すー」で終わりだよ。
彼の言う“後で”は地球時間では測れないから。
美緒:私の存在って何!?サフランのただのウエートレス!?
教育実習中だからって忘れていい存在なの!?
私いま、母校の廊下で生徒に「先生、顔色死んでますよ」って心配されたんだけど!?
香織:それは完全に嫉妬のしすぎです。
美緒:うるさい!!
香織:あ、今翔先輩に「美緒さんがLINE激おこだよ」って伝えてみました。
そしたら「へー」って言ってカクテル振り始めました。
美緒:へー!?!?
私の2日間の不安が「へー」の一言!?
私の心の乱れ狂いっぷりが「へー」!?
遥:美緒さん、深呼吸を。
翔は悪気ゼロです。脳の構造がそういうバグを抱えています。
香織:あ、翔先輩、またその綺麗な人に「これ、今日のおすすめです」って微笑みかけてます。
美緒:やめろおおおオオオオオオ!!
私のライフはもうゼロよ!!
なんで私が実習室で黒板消し叩いてチョークの粉まみれになってる間に、そんな色気振りまいてんのよ!!
俊:だから色気じゃなくてただの睡眠不足だって。
美緒:じゃあ私にも眠そうな顔で微笑みなさいよ!!
遥:美緒さん。翔はあなたのことを忘れているわけではありません。
ただ単に、“思い出す回路”の回線がADSLより遅いだけです。
俊:そうそう。あいつ、俺と遥との約束も普通に忘れてたし。
香織:それは普通にクズでは。
美緒:……もう知らない。
帰ったら絶対、翔に店で一番高いカクテル奢らせる。
そんで説教する。最低でも1時間。
遥:翔はその説教を「心地よいBGM(雑音)」として処理する可能性があります。
美緒:人間の心を取り戻してよおおおおおお!!




