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壁の中の眼  作者: 無夜
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 子供の頃に住んでいたところは、丘陵地だった。とはいえ、開発されて、コンクリートとアスファルトでがちがちに固められていたから、緑などなく、味気ないほど灰色で、高いマンション群を見ることのできる土地だった。

 坂が多いため、そこに立つ家は基礎がまるで城壁のようにそそり立ち、子供どころか大人の背の一・五倍の高さの石壁が続くこともざらで、古い家にはそこにコケやシダが生えて、重厚さを増していた。

 あの時は夏だったから夕暮れになる前の、まだ空が青々している時刻。僕は塾に行くために革製のショルダーバックを下げて、友達三人と歩いていた。

 彼らは同級生と同級生だった子たちで、同じ塾に通っている。今日は英語の仲間だった。明後日は数学で、その仲間は少しメンツが入れ替わる。

 今学期に入って、なるたけみんな一緒に行動するのよと母さんから言われていた。学校の先生からも似たような注意事項が言い渡された。

 一つ下の学年の女の子が、下校中に顔に怪我をしたのだという。事故だったらしいというのが校長先生からの発表。見つかった時には酷いありさまで、顔からだらだらと血を流していたというのは、クラブ活動で一緒の先輩から怖い話風に聞かされたこと。これはほんとか嘘か、ちょっとわからない。

 影がずいぶん長く伸びて、生い茂った緑の葉がひどく黒く、根の部分が深く見えた。

 坂と坂を繋ぐ平らな道は妙に暗くなっていた。

 壁の中にきらきらしたものがあるのを見つけたのは僕だった。

 白い硝子玉のようだったけれど、よくよく見ると目玉だった。

 ネズミかな、と友達も気がついて覗き込む。

 これはコンクリートの壁で、なぜか大きな穴が開いていた。

 ネズミにしては、その目は大きいような気がした。それに動物と言うのはだいたい、黒目部分が大きく出来ている。

 この生き物は白目の部分が広くて、人間みたいだった。それとも真昼のネコ?

 こちらを見返しているそれは、人の目にしか見えない。

 僕はなんとなく悪寒を感じて、それ以上近付かなかった。

 穴は僕らがちょっと身をかがめれば、覗き込める丁度いい位置にあって、誘い込んでいるように思えた。



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