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捨てられた少女は銀の騎士と夜明けをさがす――黄昏の少女と薄明の騎士――  作者: 古東 白


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第一章 3部 【砦】


シアは、ケルヴィスにおぶられて、砦の入り口まで来た。横抱きは、シアが恥ずかしいから止めてくれと断っていた。


砦まで連れて来てもらったシアは、少し落ち着かない。

高い石の壁は圧迫感を感じる。

ケルヴィスの背中から辺りをぐるっと見回してみた。


「ここが砦なんですね、もっと何もないイメージでした」


 堅牢な石造りの砦で、小規模な作りになっているが、大人も子供も居て、どこか安心出来る雰囲気がある。

中には兵舎や食堂、憩いの場など、必要最小限の施設が整っていた。


「ここは国境の砦だし、戦いになれば最前線にもなるかもしれない。長期戦に備えて籠城も出来るんだ」

「……危険な場所なんですね」

シアは戦いという言葉に暗い気持ちになった。


「そんな顔をするなよ、国のお偉方がそうならないように頑張っているからさ」


 ケルヴィスが門番に、森から戻った事を伝えているようだ。


「ちっこいの、大変だったな」「ここまで来たらもう安心だぞ」


「はい……ありがとうございます……」

シアは少し戸惑いながら、小さく頭を下げ門を通り抜ける。


 門番達は粗野に見えたが、急に砦に来たシアにも優しく声をかけてきた。

想像と異なる対応にじんわり胸があたたかくなっていく。

少し大きめの靴しかなかったけど、それを履かせてもらい、やっと地面に足を下ろすことができた。


「さてシア、神殿で何があったのか詳しく話しを聞きたい。と、言いたいところだけど」


 ここでケルヴィスは、一度言葉を切った。


「……実は仕事のせいで昨日から何も食べてなくてさ。先に飯に付き合ってくれるとありがたいんだが、シアもお腹減ってないか?奢ってやるから一緒に食べよう」

苦笑しながらケルヴィスがお腹をおさえる。


「はい、……私もお腹、空いてるみたいです……あの、食べてもいいんですか?」

「ああ、もちろん。大人は子供に腹一杯ご飯を食べさせる義務があるんだ。って、俺の上司の受け売りだけどな」

ケルヴィスはシアの頭を撫でてから、「さあ、行こう」と手を引いた。


「大人の義務……そんなこと、今まで誰も言わなかったのに」

シアには信じられない言葉だった。


 髪の隙間からじっとケルヴィスを見上げた。

ケルヴィスを信用していい人なのか。

今日まで生きてきて、人は簡単に信用しちゃいけないとシアは学んでいる。

もう少し、ケルヴィスを観察する事にした。


(――ハーフエルフだって言ってた。銀の髪がきらきらと光ってるみたい)


 シアは孤児院で文字を習い、本を読むことができた。

世界の事や、亜人種族の事も、本から得た知識だ。

ただ、ある程度の年齢になると余計な知識をつけないように、難しい本を読ませてもらえなくなった。

本を読めなくなったシア。だから余計におとぎ話の絵本の事は、鮮烈に覚えていた。


(小さな頃読んだ大好きな絵本。

絵本に出てきた、お姫様を助けたのは、銀の髪の騎士さまだった)



「ん?どうかしたか?」

 見過ぎたのか、ケルヴィスが声をかけてきた。

シアは、絵本の『憧れの騎士さま』を思い出したなんて、子供っぽくて少し恥ずかしかった。


「……いえ、ケルヴィスさんて、半分ダークエルフなんですよね」


 シアは、ただ軽い確認のつもりだった。

けれども――


「……まあ、そうだな。……ほら、食堂についたぞ」


 ケルヴィスはダークエルフという言葉に、ほんの一瞬言葉を飲むように沈黙した。

目を伏せ、ふいっと顔をそらして、話題を変えるように目の前の食堂の扉を開けた。


「ケルヴィスさん?」


 ケルヴィスの態度を見て、シアは少し胸がざわつく。でもきっと気のせいだと、自分に言い聞かせた。

そんな波立つ気持ちとは裏腹に、食堂から漂ってきた良い匂いに、体は正直に反応したようだ。小さくお腹がきゅうっと鳴く。

気持ちを無理やり落ち着かせ、ケルヴィスの後について食堂に入っていった。


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