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第Ⅹ章「清水が初めて“負ける案件”」
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法廷。
清水が立っている。
証拠は揃っている。
論理も通っている。
構成も完璧。
それでも。
負けた。
理由は単純。
“届かなかった”。
証拠が足りない。
証言が崩れた。
相手が一枚上だった。
判決が下る。
静かに。
終わる。
事務所に戻る。
誰もいない。
椅子に座る。
動かない。
(……負けた)
事実を、受け入れる。
(守れなかった)
久しぶりの感覚。
あの夜に近い。
(……俺は、まだ……)
拳を握る。
(……足りない)
悔しさが、静かに広がる。
そのとき。
思い出す。
吊るされた夜。
何もできなかった自分。
そして。
来た男。
(……あいつなら)
どうする。
答えは、すぐ出る。
「……もう一回やる」
立ち上がる。
負けた理由を、全部洗い出す。
逃げない。
崩れない。
そのとき、スマホが鳴る。
世古。
「……どうだった?」
清水は、少しだけ間を置いて。
「……負けた」
隠さない。
世古は、すぐに言う。
「……そっか」
それだけ。
責めない。
慰めない。
ただ、受け止める。
清水が、小さく息を吐く。
「……でも」
「……次は取る」
世古が、少しだけ笑う。
「うん」
「……取れるよ」
その一言で。
清水は、完全に戻る。
(ああ)
(まだ終わってない)




