7 夢の奥底で②
ヒマリはお腹を抱えながら床へ倒れ込み、視界が歪んでいく中で背を向けて立ち去ろうとするホシドに声を掛ける。
「……って!待って、ホシド行かないで……」
掠れる声でホシドを呼び止めたが、声は届くことなく彼は姿を消し、虚しさと悲しさを抱えながら目の前の視界が真っ暗となった。
◆◇
「…………ッ」
体がふわりと宙に浮いている、気持ち悪い感覚で目が覚めたが
(何も見えない)
言葉通りに真っ暗でヒマリは何も見えないでいた。
ついでに刺されたはずの腹を見たが、傷1つ無く痛くない。
(気持ち悪い……)
どの方向が天井か床か分からなくて、体が浮いてて三半規管がやられて気分が悪くなる。
ヒマリは先ほど得た懐中時計がポケットから落ちてないか無意識にスカートへ手を伸ばして、懐中時計の確認をしたついでに取り出して開いてみると。
(ステージエラー?)
懐中時計の上段に書かれていたSTAGE:ENTRANCEの文字がSTAGE:ERRORに変わっていた。
(もう嫌。夢なら早く覚めないかな)
何も情報が得られないままと、諦めたヒマリはふとホシドの言葉を思い出す。
――ここは地上と違ってね。時間の流れが違うからさっさと夢から覚めて戻ったほうが良い
(時間の流れが違う……?もしかして、私がループしてることに関係があるとか……)
にしてもだ、情報が点と点で何も結びつかなくて疲れたヒマリは
「もう、いい加減にしてよッ」
誰もいなかったので思わずイラついて叫んだ。
『愉快だなぁ、その姿』
「……ッ!」
無の暗闇から聞こえてきた声に反応したヒマリは辺りを警戒するが、声の出どころは分からない。
が、ヒマリはこの声を知っていた。
「アンタでしょ……ホシドと夜中に喋ってたのは……誰なのッ?!」
ズズズッと暗闇より更に黒い煙のような何かが現れて、ヒマリの両足を抑え込みどこかへ引きずり込もうとしている。
体へ重量が戻ったように感じた。
「い、いや!やめてッ」
『1つ答えを教えてやるよ。この世界へ呼んだのはオレだ。お前に知られるのは都合が悪いんでね』
駄目だ。
体のあちこちに闇の煙が巻き付くたびに鉄のように重くなり、動きがとれなくなってくる。
「やめッ!」
自身の異能を使って、迫りくる闇から抜け出そうともがいたが、体力が底を尽きてそのまま仰向けに倒れ込んでしまった。
『オレはお前を知っている』
体中に鈍痛が襲ってくる。
痛みで薄れゆく意識の中、目を瞑っていると、人間かアヤカシかも分からない者に再び声を掛けられた。
『お前はオレの世界に近づきすぎた。終わりだヒマリ……お前には懐かしさを感じる記憶なんて残されていない』
聞こえてくる言葉の意味すらも、何もヒマリは分からないまま。
(私はこの声を知らない。ホシドはあの夜この声の男に「……あの女を夢へ堕とせ」と脅されていたように感じた……。ならするべきことは)
考えをめぐらす中、最後に目に入ったのは手の中で握られていた懐中時計であり、その下段に示されていた7/10.00:00の数字がどんどん加速しながら増えたり、減ったりと不規則な動きをしている様子だった。
(私は自分もホシドも助けたいッ!)
――プツン。
ヒマリは強く願う中、急に体へ麻酔を打たれたように、いきなり意識が遮断して目の前が真っ暗になった。
◆◇
注釈
¹人にすすめたいほど気に入っている、キャラクターや人物のこと
²手の届かない存在の相手へ本当に恋をしてしまっていること
³好きな人のこと
⁴5つのエレメント。五行属性である木/火/土/金/水のこと




